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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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水を廻す者

魔石。


使い方次第では、かなりの代物だ。

蓄積。再充填。安定出力。


ただの装飾石や魔力補助ではない。

このまま売り渡すのも正直、癪だ。


価格操作で利益は出せる。

それは“商売”。


もっと上がある。


これを利用して製品化した方が、さらに儲かるのでは?


私は机に肘をつき、考える。


何に使う?


光源は既にフジ印がやっている。

懐中電灯。しかも規格まで整っている。

類似品は作れる。


だが――それは負けを認める行為だ。


プライドが許さない。

私は真似をする側ではない。

作る側だ。


ならば、発想を一段上げる。


電池と同じなら何かしらの“発電”を行い、充電しているはず。


魔力を蓄えるには、供給源が必要。


充填機構。魔力生成。


では、魔力の元は何か?


人。魔法。自然現象。……自然。


水。風。落差。


私は椅子から立ち上がった。


発電所とまでは言わない発電施設は作れる。


そうだ。


水車発電。水の流れを動力に変え、それを魔石充填装置へと接続する。


電気を大量に作る。


いや――


魔力に変換出来る仕組みを作る。


そうすれば、夜でも明るいし、工場は夜間稼働可能。

それに石鹸の原料の油もこっちへ更に回せる。


作業効率は倍。生活環境は劇的に変わる。

灯り。動力。加工精度向上。医療器具。


可能性は無限だ。


私は拳を握った。


これだ!武器ではなく文明。

戦争ではなく、生活。

隣国が光を持ち歩くなら。

私は、街そのものを明るくする。


私は護衛を呼んだ。


「外出の準備を」


「どちらへ?」


「川」


文官が目を瞬かせる。


「川、ですか?」


「水車を設置出来る場所を探すの」


出来れば領主館から近い所。


管理がしやすく警備も整えられる。

水量が安定している場所。

落差があり氾濫リスクが低い。


私は馬車に乗り込む。

街を抜け、郊外へ。


やがて川が見えてくる。


穏やかな流れだが所々、流速が速い地点がある。


解析。水量。流速。年間変動予測。

……使える。


この地点なら、水車は設置可能。

私は川岸に立ち、流れを見つめる。

水は止まらないし常に動き続ける。


それを利用する。


自然を敵にするのではなく、味方にする。


私はふと思う。


隣国の転生者は、どこまで進めているのだろうか?魔石充填。携帯灯。規格化。


ならば次は何だ?


軍事か。産業か。私は先に進む。

発電施設。規格化された魔石。

安定供給。


ここまで出来れば、この領地は一段上へ行く。


南の血。滅びた国。ならば私は文明で再興する。


武力ではなく生活で。


私は川の音を聞きながら、小さく笑った。

だらだら生活は、まだ遠い。


もし街が明るくなり。

夜が安全になり工場が安定し富が増えれば。

その先に、余裕はある。


この地を揺らがせない基盤を作る。

そのためにまずは、水を廻す。


私は振り返った。


「ここに水車を建てるわ」


護衛たちが頷く。


川は流れている。未来も、流れている。

それを掴めるかどうかは――私次第だ。

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