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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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滅びた南

懐中電灯……いや、“光源器具”。


確かにこの世界に無い物だ。

夜を持ち歩く発想に魔石を電池として使う。

便利なのは間違いない。


売れる。間違いなく売れる。


私はその筒状の器具を手の中で転がした。


サイズを測ると直径。長さ。装填部。

……規格が揃っている。

手作り感はある。


だが寸法は統一されている。


量産を見据えていて、これは一発ネタではない。


次を見ている。


充電器。交換用魔石。大型化。

携帯灯。街灯。軍用照明。


展開は無限だ。


ここまで考えているという事は――

厄介な相手の可能性もある。

技術的な知識は確実にある。

しかも規格概念まで理解している。


私は近くにいた文官へ目を向けた。


「隣の国とは仲良いの?」


文官は一瞬、言葉を詰まらせた。


「あー。その……」


「ん? 仲悪いの?」


彼は少し迷い、そして言った。


「お嬢様に、昔の話をお教えします」


「昔話?」


文官は窓の外を見た。


夕暮れの光が、机を赤く染める。


「かつて、この大陸には三つの国がございました」


私は静かに聞く。


「東の国」

「西の国」

「そして、南の国」


東と西は、長年対立していた。


資源。交易路。覇権。


小競り合いは絶えなかった。

国境では衝突が繰り返され、商人は往来を止められ、兵は消耗し続けた。


南の国は、両国の間に位置していた。


「南は、中立を守ろうとしました」


両国の仲裁に入り、和平を提案し、均衡を保とうとした。


その姿勢が、両国には気に入らなかった。


「どちらにも付かぬ者は、敵と同じ」


そう判断されたらしい。

そして東と西は、一時的に結託した。


南の国へ攻め込むために。


両面からの挟撃。南は奮戦した。

最後まで勇敢に戦った。


だが――二つの大国を同時に相手にするのは、無理があった。


兵力。資源。補給。持久戦。


徐々に押し込まれついに王都は陥落した。

南の国は滅びた。

東と西は、南を半分ずつ分け合った。


その土地。その民。その貴族。


全て支配下に置かれた。

文官は静かに続ける。


「我が家は、旧南の有力家系の一つでございます」


私は息を呑んだ。


つまり――ここは元南領。

現在は東か西のどちらかの支配下。


「表向きは安定しております」


南の血は残っている。

貴族も。民も。誇りも。


私はゆっくりと懐中電灯を机に置いた。


隣国。フジ印。魔石大量購入。規格化。


もし。もしその転生者が、“南の再興”を目指しているなら?

あるいは東と西の均衡を崩すためなら?


私は考える。


この領地は、旧南の血を引く。

私はその家の後継。

もし再び大陸が揺れるなら私は無関係ではいられない。


隣国の戦争はその言葉が…‥現実味を帯びてきた。


私は静かに文官へ尋ねる。


「東と西は、今も仲が悪いの?」


彼は小さく頷いた。


「表面上は平穏ですが……根は深いかと」


なるほど。均衡は、まだ崩れていない。


魔石。フジ印。規格化された光。

それは、均衡を動かす火種になり得る。

私は椅子に深く座り直した。


面白くなってきた。

危うくなってきた、か。

私はまだ動かないが情報は集める。


流れは読み、基本大量を領地に貯め込む。


南の血が再び動くのか。

それとも私が動かされるのか。


物語は、静かに加速していた。

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