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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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引き金の手前

私は早速、加工機械の図面を引いた。

目的は単純。

精度を上げるため。


規格通りに削り、規格通りに穴を開け、規格通りに揃える。


鍛冶屋に発注する際、私は念を押した。


「寸法は必ずこの通りに」


「誤差は最小限に」


「再現性を重視して」


鍛冶屋は首を傾げつつも頷いた。


「お嬢様の図面は、細かいですな」


当たり前だ。図面とは、再現の言語だ。


数日後。


加工機械は完成し、私の研究室へと運び込まれた。

金属の匂い。重厚な存在感。

これまでの“職人の感覚”とは違う。

数値で作るための道具。

私はその側面に手を置いた。


これが、基礎。

これがあれば、精度は上がる。


規格は守られる。工業化の一歩。

……それだけのはずだった。


私はまず、美容液を完成させた。


名目は守る。


研究室を貰った理由は、それだ。

試作を重ね、配合を安定させ、香りを整える。

問題なく製品化出来る。


これで言い訳は立つ。


私はその後、静かに扉を閉めた。

外には護衛。中は私だけ。

机の上に、紙を広げる。


頭の中にある設計。


私はゆっくりと部品を削り始めた。

精度は十分。機械は応えてくれる。


寸分違わず。規格通り。

一つずつ、形になる。


そして――それは、完成した。


小さな金属の塊。手に収まる重さ。

私はしばらく、それを見つめた。

ここまで来てしまった。


解析。


視界に浮かぶ情報。構造は問題ない。

強度も許容範囲。理論上、作動する。


問題無さそうね。後は――試すだけ。


私は窓の外を見る。遠くに森。

あの森には魔物が出る。

討伐で怪我人も出た。


これがあれば、救える命もあるかもしれない。


同時にこれは、人にも向けられる。

戦争。暗殺。均衡崩壊。

私はまだ、誰にも言っていない。


お父様にも。

お母様にも。


これは完全に、私の選択だ。


試射してみるか。


その言葉が、喉まで出かかる。

私は、動かなかった。


完成はしている。まだ撃ってはいない。

引き金は、まだ引かれていない。

私はゆっくりとそれを布で包んだ。


今はまだ。


技術は、手の中にある。

使うかどうかは、別問題だ。

私は静かに呟く。


「……まだ早い」


だらだら生活のために始めた内政は、

いつの間にか、選択の物語になっている。


この一歩が、未来を変える。

私はまだ、その重さを測りきれていない。

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