便利も武力も
「……よし」
私は最後の一枚を書き終え、ペンを置いた。
机の上。いや――
「机の上だけじゃ足りないわね」
横にも。後ろにも。積み上がる書類の山。
「ふふふ……」
私は満足げに眺めた。
今回まとめたのは――
「思いつく限りの製品設計」
もちろん。
「この世界で再現可能な物限定」
そこ重要。前世知識があっても。
素材。加工精度。流通。
無理なら意味がない。
だから。
「現実的なやつ」
鍋。包丁。保存容器。棚。蝶番。小型工具。
生活用品諸々。
私はその山を見ながら、にやりと笑った。
「これが全部完成すれば……」
想像する。
売れる。広まる。金が入る。
そして――
「くくく」
思わず笑いが漏れる。
「贅沢三昧生活が!!」
その声に横にいた文官が、静かに固まっていた。
「……」
私は振り返る。
「何?」
文官は引きつった顔で、積み上がった書類を見る。
「お嬢様……」
その声が少し震えている。
「これを……全て?」
私は当然の様に頷く。
「ええ」
文官は絶句した。
「……」
そして。
「……承知しました」
諦めた顔で、書類の束を抱える。
その姿に私は満足げに頷いた。
「よろしく」
文官は何も言わず。
ただ。
「開発部へ回します……」
顔を引きつらせながら去っていった。
私はその背中を見送りながら呟く。
「これで飯のタネは当面大丈夫そうね」
一発屋じゃない。継続。それが大事。
私は大きく伸びをした。
「さて」
仕事は終わった。
いや。
「本業はこっちじゃない」
私は足取り軽く、地下都市の別棟へ向かう。
工房。そこに並ぶのは――
「L6武装型」
二両。
連装二十ミリ。
四十七ミリ。
両方。試験完了。
「うんうん」
私は満足げに車体を見上げる。
「いよいよ本格生産!」
ここから数を作る。
やっと。本番。
「楽しみだ!」
生活用品で稼せぎ、武装で守る。
完璧。私はさらに思い出す。
「そうだ」
武装部分。固定砲座用として。
「まきちゃんの所へ送るのよね」
車体が足りなくても。
砲だけでも意味がある。
防衛力は上がる。
「使ってもらいましょう」
私は笑った。
「ふふ」
贅沢三昧計画。その為の生活用品。
趣味全開の武装生産。両立。
「最高じゃない」
私は軽く車体を叩いた。
「便利も武力も」
どっちも必要。だから。
「どっちもやるわよ」
私は静かに笑った。
未来は――かなり明るい。




