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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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魔物市場

冒険者ギルドを出た私は、その隣にある大きな市場へと足を向けた。

建物こそ違うが、空気は地続きだ。

鉄と血と革の匂いが混ざった、独特の空間。

どうやらここは、討伐された魔物を扱う専門市場らしい。


私は思わず立ち止まる。


見たこともない毛皮。

深い青色の光沢を持つ狼型の皮。

硬質で白く光る巨大な骨。


角。爪。そして――肉。


切り分けられ、塩漬けにされ、燻製にされて並んでいる。

……食べるの?


思わずそう呟きそうになったが、周囲の様子を見る限り珍しくもないらしい。


店主が声を張る。


「森狼の燻製だ!保存も利くぞ!」


なるほど。


魔物は“害”であると同時に、“資源”でもあるのか。


私は少し考える。


もし魔物を完全に殲滅したらどうなる?

冒険者の仕事は減るしこの市場も縮小する。

毛皮や骨を材料にしている職人も困る。


討伐は安全保障。


同時に経済活動でもあるか。中々、微妙なラインだ。


私は一つの毛皮に手を触れた。


解析。


――森狼(中型魔物)

主用途:防寒具素材

耐久性:高

魔力残滓:微量

推奨加工:鞣し工程の最適化で耐久性向上


なるほど。加工の余地がある。


次に骨。


解析。


――大型角兎の骨

主用途:装飾品・短槍素材

構造強度:中

加工適性:削り出し向き


さらに肉。


解析。


――森狼肉

栄養価:高

保存適性:塩漬け・燻製

推奨改善:乾燥工程の効率化


……非常に便利だ。


私は店主に話を聞く。


「討伐は、最近増えているの?」


「森沿いはな。小型が多い」


報酬が上がると、冒険者も集まる。

集まれば、討伐量が増える。

供給が増えれば、価格が下がる。

価格が下がれば、加工業者が動く。

完全に一つの経済圏だ。

市場を見渡す。


基本は“一次加工”まで。


毛皮は鞣されているが、衣服までは作られていない。


骨は削られているが、完成品ではない。

肉も燻製止まり。


出店の一角には、それらを使った製品が売られているが規模は小さい。


なるほどね。


ここはあくまで“素材市場”。

加工業者は別にいるのだろう。


私は思う。

魔物を完全に排除するのは、経済的に非効率だ。


放置すれば被害が出る。

理想は――制御。


発生を把握し、被害を最小限に抑えつつ、資源として活用する。


……養殖、は流石に無理か。


いや、可能性はゼロではない?

私は頭を振る。今はまだ早い。


魔物は単なる“敵”ではない。


資源。産業。情報源。ギルドと市場。


この二つは、領地の裏側を支える重要な場所だ。


私は店主や冒険者から断片的な話を聞き、

解析を掛け、メモを取らせる。


魔物の出現傾向。

価格変動。

討伐数。

それらは、単なる雑談ではない。

指標だ。


もし何処かで異変があれば、まずここに現れるだろう。


討伐数が増える。

報酬が跳ね上がる。

素材価格が乱れる。


市場は、異常の早期警報装置になる。

私は市場を後にしながら、静かに思った。

安定とは、単に守ることではない。

流れを理解し、利用することだ。

魔物もまた、この世界の流れの一部。


ならば、排除するか利用するか。


その選択も、いずれ私に委ねられるのだろう。


世界は静かに動いている。

その音を、私は聞き逃さない。

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