見えない車列
文官さんから話を聞いて、少し考える。
机に肘をつき、指で軽くリズムを刻む。
トントン。
「……」
戦争をしたい訳ではない。
それは間違いない。
でも――私は窓の外を見る。
人の流れに荷物や資材。
この街は確実に膨らんでいる。
「輸送力……ね」
鉄道はあるがまだ完全ではない。
敷設途中。接続も限定的。
「この世界はまだ荷馬車が主流」
これは変わらない。
ロイド型もあるけど
「運転出来る人もまだまだ限られる」
機械は強いが扱える人間がいなければ意味がない。
私は椅子にもたれかかった。
「普通に荷馬車を増やしたい所でもある」
単純で壊れにくくて誰でも扱える。
「量産も整備もロイド型よりは全然楽ちん」
これが現実だ。
私は目を細める。
「でも下手にうち所属で増やすと……」
軍事と兵站で疑われる。
「何か突っ込まれるわね」
私は机を指で叩く。
トントン。
「なら」
発想を変える。
私はペンを取った。
紙に線を引く。
「所属を変える」
書く。
「商人」
そして数字を書く。
「51%」
私は少し笑った。
「適当だけど」
意味はある。
私はそのまま文官に見せる。
「如何?」
文官は紙を見て、少し目を細めた。
「……成る程」
私は頷く。
「所属は商人。荷馬車の51%をうちが出資」
完全に所有しないが関与はする。
文官はゆっくりと口を開く。
「つまり平時は商人が使用」
私は続ける。
「そして緊急時は徴発」
必要な時だけ、使う。
文官は頷いた。
「……上手いですね」
私は肩をすくめる。
「でしょ?」
完全な軍事ではない。
あくまで――民間
「実質的には輸送力確保」
文官はさらに考える。
「商人側のメリットもありますな」
私は指を立てる。
「そこ」
重要な点だ。
「荷馬車代が浮く」
初期投資。それが一番重い。
そこをこちらが持つ。
「だから乗ってくる」
文官は小さく笑った。
「確かに」
私はペンを置いた。
「誰も損しない形」
いや。
「全員得する形」
私は立ち上がる。
「これで行くわ」
表向きは商業支援。
実際は。
「輸送網の強化」
私は窓の外を見る。
人と荷物の動き。
この街はまだまだ伸びる。
「その時に困らない様に」
準備する。それだけだ。
私は小さく呟いた。
「見えない車列、ね」
誰も気付かない。
確実に力は蓄えられていく。




