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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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縛られた力

流石、指揮官達は動きが早い。

私は訓練場の端に立ち、その様子を眺めていた。


「もう始めてるのね」


数名の男達が整列し、指揮官の号令で動いている。


どうやら、募集というより――


「引き抜き、かしら」


元冒険者。元商隊護衛。

それなりに腕の立つ者達が集められている。


無駄がない。

私は腕を組んだ。


「いい感じね」


これなら、しばらくすれば形になるだろう。

その時、ふと思った。


「……そう言えば」


私は首を傾げる。


「うちの領自体に軍ってあるのかしら」


今まで考えた事もなかった。


治安は警備隊。

戦争は……?


私はそのまま文官を呼んだ。


「ちょっといい?」


「はい」


「うちって軍ってあるの?」


文官は一瞬だけ言葉に詰まった。

そして、少し気まずそうに答える。


「……いえ」


私は眉を上げる。


「無いの?」


文官は静かに頷いた。


「旧南国が戦争に敗北した時」


私はその言葉に反応する。


「……ああ」


歴史の話だ。

文官は続ける。


「そこに所属して居た領地の軍は全て解体されました」


私は腕を組んだ。


「なるほどね」


敗戦国。

当然の処置だ。

文官はさらに言う。


「その代わりと言っては何ですが」


少し間を置いて。


「治安目的の為に警備隊が組織されました」


私は頷いた。


「今のこれね」


訓練場の方を見る。

整列する隊員達。


「元軍との違いは?」


私は問いかける。

文官は即答した。


「いくつかございます」


指を折りながら説明する。


「騎兵の廃止」


私は小さく笑った。


「機動力削ぎに来てるわね」


文官は続ける。


「槍の長さの制限。クロスボウや弓の大きさも規定。さらに警備隊保有の荷馬車の数量限定」


私は目を細めた。


「……徹底してるわね」


文官は静かに頷いた。

私は腕を組んだまま、少し考える。


「成る程ね」


これは――ただの治安維持ではない。

意図がある。

私は小さく呟いた。


「機動の高い騎兵の押さえ込み」


「射程を短くした武器」


「それと兵站の能力の低下」


遠くへ行けない。

強くなれない。

長く戦えない。


完全に――


「軍として機能させない構造ね」


文官は何も言わないがそれが答えだ。

私は苦笑した。


「ふっ〜」


大きく息を吐く。


「場所は違えど」


そして空を見上げる。


「何処かで聞いた様な話ね」


敗戦後の制限。

武装の制限。

機動力の制限。


私は静かに笑った。


「よく出来てるわ」


私は訓練場を見る。

走る隊員達。

指揮官の声。


「……でも」


私は小さく呟く。


「抜け道はある」


警備隊。その枠の中でどこまでやれるか。

私はゆっくりと踵を返した。


「さて」


やる事は決まっている。


「考える事が増えたわね」


この領地はただ守るだけでは済まない。

少しずつその先へ進もうとしていた。

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