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国境から始まる工業革命 ―転生エンジニア領地開発記―  作者:


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第一安全と最初の逮捕

最近は、建設現場での視察が日課になっている。


「進捗は?」


「問題ありません!」


木材が運ばれ、石が積まれ、建物がどんどん形になっていく。

私はそれを見ながら頷いた。


「いいペースね」


そんなある日。

鍛冶屋の棟梁に呼び止められた。


「お嬢様」


「何?」


棟梁は少し困った顔をしていた。


「現場、危なっかしいです」


私は首を傾げる。


「そう?」


「はい。上から物が落ちたり、足場が不安定だったり」


なるほど。

確かに人が増えて、作業も急いでいる。

事故の可能性は上がっている。

棟梁は手に持っていた物を差し出した。


「これ、作ってみました」


私はそれを受け取る。


「……何これ?」


丸い形。硬い素材。

頭に被る物。棟梁が言う。


「頭を守る道具です」


私はそれを被ってみる。


「おお」


軽い。そしてしっかりしている。


「中々良いじゃない」


棟梁は少し安心した顔をした。


「でしょ?」


私は少し考えてから言った。


「これ、全員に配りましょう。現場作業員、全員」


棟梁は目を丸くした。


「全員ですか!?」


「ええ」


安全は大事だ。


怪我をすれば人も減るし、作業も止まる。


「これからはこれを着用義務にする」


棟梁は深く頷いた。


「承知しました!」


私はヘルメットを外しながら言った。


「色は……そうね」


少し考えて。


「黄色にしましょう」


目立つ色。分かりやすい。

そして私は笑った。


「第一安全ってね」


棟梁は一瞬きょとんとしたが、すぐに笑った。


「いいですね、それ」


その後、私は文官に指示を出した。


「建築現場全部に旗を立てて“第一安全”って書いて」


文官は少し驚きつつも頷いた。


「承知しました」


数日後。

建設現場には黄色いヘルメット。


そして――


「第一安全」


と書かれた旗が風に揺れていた。

なかなかいい感じだ。

私は満足して頷いた。


その時だった。


「お嬢様!」


慌てた様子で警備担当の者が駆け込んできた。

私は振り返る。


「どうしたの?」


息を切らしながら報告する。


「盗難犯を捕らえました!」


私は目を細める。


「……捕まえたの?」


「はい!」


どうやら巡回中の冒険者が見つけたらしい。


現行犯。私は腕を組む。


「被害は?」


「資材の一部です」


鉄材。


私は小さく頷く。


「軽いわね。でも重要よ」


最初の一件。


ここでどう対応するかで、今後が決まる。

私は歩き出した。


「連れて来て」


少しして。

男が一人、連れて来られた。

年は若い。服は汚れている。

明らかに流入してきた人間だ。


私はその前に立った。


「名前は?」


男は少し震えながら答える。


「……ロイ」


私は静かに言う。


「何をしたか分かってる?」


男は下を向いたまま頷いた。


「……盗みました」


私は一度だけ頷く。


「理由は?」


少しの沈黙。そして。


「……仕事が、無くて」


私は目を細めた。


「はぁ〜。仕事は沢山有るのに…‥」


私ははっきりと言う。


「理由は関係ない」


男が顔を上げる。

私は続けた。


「ここではルールがある。盗みは罰する」


周囲が静まり返る。

私は文官を見る。


「処罰は?」


文官は即答する。


「労働による弁済が妥当かと」


私は頷く。


「いいわね」


そして男を見る。


「逃げずに働けば、帳消しにしてあげる」


男は驚いた顔をした。


「……いいんですか?」


私は肩をすくめる。


「働き手は足りてないの」


罰だけでは意味がない。

使えるなら使う。


「ただし」


私は少しだけ声を強くする。


「次は無いわよ」


男は強く頷いた。


「……はい!」


私は振り返る。


「現場に回して」


「はい!」


連れて行かれる男。

私はそれを見送りながら呟いた。


「……始まったわね」


小さな事件だが確実に変化だ。

私は頭のヘルメットを軽く叩いた。


「第一安全、ね」


安全も。秩序も。

どちらも必要だ。


この場所はもうただの村ではないのだから。

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