クラゲとイルカでサプライズ
クラゲはクジラの親友のような存在である。
なのでイルカとも関わり深い。
「さて、今年もこの時期がやってきたわけだが」
クラゲは向かい合って座っている僕に問いかける。
「今年は何をする?」
「プレゼントが妥当。サンタさんみたいに枕元に置くとかでどう?」
「サンタさんって誰だよ」
そうか、こっちの世界ではサンタいないんだっけ。
「子供に夢配る人」
クラゲにだから誰だよってって言われた。伝わらなかった。
僕たち二人は今、クジラへのプレゼントを考えているのだ。
もちろん、誕生日の。
魔族にも当然誕生日はある。
魔物からの進化で魔物時代に理性や知性が足りなかったものもいるから絶対とは言わないが絶対とは言わないが、大抵の者は覚えている。
明日はクジラの誕生日だった。
魔王の誕生日はとんでもなく華やかなパーティーが開かれるが、ただの幹部であるマモンや僕たちには個人的なパーティーしかしない。
「とりあえず、最初に顔面にケーキぶつけるイタズラをするのは決定事項として……」
わさび味にしとけば後で食べるケーキが美味しく感じると思うんだけど。
「その決定事項がもうすでにおかしい」
ケーキって食べ物だからな、遊ぶなよ、なんて注意を受ける。わかってはいるが、バラエティーに犠牲はつきものだしなぁ。
「本命のケーキは甘さ控えめで抹茶のやつコックさんに頼んでおいた」
僕の言葉にクラゲは相槌をうった。
「あとはもう飾り付けとプレゼントだけじゃないか」
「飾り付けはカルガモとウニに任せた」
クラゲは、そういえばあの二人センスいいよなぁなんて思い出していた。
「プレゼント、贈り物が決まらない」
「髪飾り、だめだ。あいつ使わねぇよ」
「女の子にあげるものじゃない? それ? だったら、うぅん。……トウガラシ」
「おまえ……確かに喜びはしそうだが、誕生日ってかんじしない」
そうだよねぇ、僕のおやつにトウガラシ渡してくるくらい好きみたいだけど。厨房行けばもらえるものねぇ。
「武器は?」
「イルカは剣とか使わないからわからないかもしれないが、そういうのは自分で武器屋行って調整しながら作ってもらったり、腕にしっくりくるやつを使うんだ。贈り物にはできないなぁ」
なんかクラゲが難しいこと言っているが、確かに僕にはその感性はわからない。ここはおとなしくクラゲのいうことを聞いておこう。
「……ストラップ!」
「……なんだそりゃ」
そういえばこの世界にはストラップの概念がないみたいだ。僕は簡単に説明しつつもじゃあ何を作ろうかなと考える。
時間はないが、それでもやはり手作りが良い。
「小さい人形に紐つけて持ち歩けるように……なぁ」
何か考え込んでいるクラゲを放置しつつやはりここはクジラがいいでも、イルカを渡してもいい。
「きーめた! これにしよう」
ウンウン悩んでからやっと決心した僕に、クラゲは笑って手をひらひらと舞わせた。
「お、やっと決まったか。いってらっしゃい。俺はおとなしく靴とかにしとく」
残り時間はもう少ない。
急げ。僕。
次の日。
その日の魔王城には、クジラのわさび入りケーキ顔面衝突事件で悲鳴が上がり、イルカが庭木に逆さに吊るされ、(物理的に)頭に血が上りそして死にかけるという被害が出た。自業自得である。
でも誕生日プレゼントは喜んでもらえた。
それから、クジラのズボンのベルトにはクジラとイルカのストラップが取り付けられていたという。
「結局、両方にしたのか」
「ずっと仲良しって感じで嬉しいじゃないか」
僕とクラゲのそんな会話は、クジラに伝わることはなかった。
でも雰囲気で伝わっていると、僕は思う。
ちなみにクラゲはお揃いの革靴だった。僕には全部同じにしか見えないが、どれにするかだいぶ考え込んだらしい。
マニアにしかわからないこともある。
そして優勝はカメとウニのタバスコソースだった。
クジラはとんでもなく喜んだ。それはもういい笑顔だった。
僕らの努力は辛味に負けたのである。




