番外:勇者目線
勇者はおかしな兵士と出会った。
この国ではだいぶ有名なはずの勇者の顔を知らなかったらしい。
別段、驕る気もないのでついつい気弱に対応してしまった。
書類を頼んだのだが、その書類は王の部屋の前に放置されていたという。
ついでに、不審な巨大キャンディと共に。
そのキャンディからは毒の霧が噴出した。
なかなかの威力で、王がたまたま部屋に戻ろうとして発見したので死にかけたのである。
勇者はあの兵士の身にも何か起きたのではないかと心配した。
しかし、他の兵に聞いたがそんな特徴の兵士は見たことがないらしい。
一体全体どういうことか。
次にあったのは、チンピラたちに絡まれているところだった。
あの兵士は美形なので、こういうことには慣れっこだったのだろう。
助けに入ろうとしたが、その前にチンピラたちは蹴りをお見舞いされた。
ただの打撃のはずが、顔面には刃物で攻撃されたような跡が残っていた。
他のチンピラも切り傷を負っていた。
勇者は首を傾げた。
話を聞こうと呼び止めたが、その兵士は振り返ることすらなく走り去っていった。
とてつもなく足が速かった。
どうやら魔法を使ったらしい。
勇者は、とうとう魔王討伐に出かけた。
結果は惨敗で、生きて逃がされ、屈辱的なことをされた。
魔王のお仕置きは怖かった。
仲間の男が、新しい世界に目覚めるくらいには威力があった。
それよりも気になるのは、あの神聖術の効かない魔族。
いや、魔王城から逃げてきた子供のいうとうりならアレは人間だ。
あの黒髪黒目で差別があったのであろうことは察したし、さぞひどい目にあったのだろうが、魔王の味方になるなんて言語道断である。
勇者はあの人間を更生させたい、助けたい。
魔族しか味方はいないのだと思い込んでいる人間を救いたい。
しかしながら、現実は非情で、その人間は人間を嫌っていて勇者も嫌いらしい。
にたりと笑いながらこちらを見ている様が、どこかあの兵士がチンピラに向けていた顔とそっくりに見えた。
「あの魔族、いや人間は、どうして魔王側につくのだろうか」
勇者の案内妖精、小人みたいな二人に勇者は聞いた。
「生まれや種族、見た目での差別は後をたたないからね、でも、最近『悪魔の子』が生まれたなんて噂、知らないなぁ」
「え? ……あっ! いたよー。いたいたぁー! バニティー家のニ児の子だよぉ! ………ん? でも確かあの一家って、ゾンビの群れに襲われて生き残りは確認できてないって」
どうやら二人は心当たりがあったようだ。でも、生き残りがいないって、なら別の人ではないか?勇者は首を傾げた。
「でもさぁ、死体の数が従者含めても数が合わないんだよ」
「え?」
「子供の死体が一人分足りなかったの」
つまりそれは行方不明ってことではないか?
急に信憑性が増してきた。もしかしたら、あの人間は。
その子供ではないか?
勇者は勘付いた。
それを本人に聞く日は近い、かもしれない。
でも、直接聞けば、多分スプラッタ一直線待った無しである。
今度こそ勇者たちは根絶やしにされる。
イルカに今世の家族の話はタブーなのだ。




