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イルカは人間観察をする。
もともと僕は人間だから、同族観察と言ってもいいのかもしれない。
僕は今吸血鬼探しをしているのである。
人間に混じっている魔族の一種で人の血をすするらしい。別に普通の食べ物も食べられるけどなんか血が好きなんだそうだ。
僕も食べられてしまうんだろうか。
まぁ、人間なんだから仕方ないのかもしれないが僕を喰らっていいのはクジラもしくは魔王たちくらいだ。
簡単にやられるつもりもないが、警戒をして損はない。
そもそも何で吸血鬼を探しているかと言うと元人間だという噂を聞いたからだ。
どうやって吸血鬼になったのか、なんで魔族になったのか、聞いてみたいんだ。
あわよくば僕も人間じゃなくなりたい。
そしたらもっと役に立てるのに。
結局その日は吸血鬼が見つからなかったので、暇つぶしに人間の屑を集めてみた。
僕は前世よりマシな見た目になったから悪い感じのチンピラが釣れることがある。
魔族は美形だらけなので僕なんかじゃ全然ナンパなんかされないんだけど、人間相手だと釣れる。
裏路地の行き止まり。
とりあえずは、テキトーに怯えているふりをしているんだけど、無駄に震えているのは疲れてきたのでそろそろ仕留めにかかろうと思う。
僕は靴のつま先を触る。
金具が付いている。
実はこの靴底には短剣が装備されている。
まともに筋力がない僕には小細工は必須なんだ。
じゃあ、おやすみって言おうとして、一つしかない出入り口に人の気配を感じた。
このチンピラとは別の気配。
誰かと思って目をやれば、暗がりでもうよくわかる美形な少年。
見覚えがある。
あ、勇者きちゃった。
僕はついこの間あった勇者との早すぎる再会に驚き凍りついて思わず目の前の男の顔面を蹴り飛ばした。
そして、その後、流れるように全員蹴り倒してしまった。
ただの蹴りなら良かったんだけど、刃物付きの靴で横殴りに蹴ってしまったので男たちは血塗れだ。
うわぁ、痛そう。
謝らないけどね。
「あ、助け入らなかったかな?ってあれ、君……」
いつも同じ変装ばかりしていて損した。
僕に既視感を感じたのか、彼は目をドングリのごとく丸くした。
小動物感がすごい。
「あ、勇者さんどーも。じゃ、僕はこれで失礼」
軽く挨拶して、引き止められるのも気にせず町を出た。
全く、僕の勇者関係者(もしくは本人)遭遇率ハンパないんじゃなかろうか。
魔王領への帰り道、そこら辺にいた盗賊集団に喧嘩を売って一人勝ちしてウサ晴らしした。
随分と血濡れになったけど、戦利品いっぱいあったし、美人がいたので食料にしてお土産にすることにした。
今更だが、僕は前世より凶暴になったみたいだ。人殺しになってもなんとも思わないなんて末期じゃないか。
いや、でも多分。
僕にとっての同族は魔族や魔物になってしまっただけで、同族殺しになった気分はきっと僕の中にないんだろう。
拝啓、前世のマイペアレンツ
お元気ですか。
僕は今、どこだかよくわかんない異世界で魔王の配下やってます。勇者を倒すのがお仕事です。一応公務員に近くて給料多めのホワイトな職場だけど、業務内容が現代日本であり得ないくらいのブラックです。
慣れてきてしまった今日この頃、僕は実は悪魔なんじゃないかと思ってきました。
今世でも人間だったことに残念半分安堵半分です。
今の上司兼里親のクジラはいい人です。
人間じゃないからいい魔族、の方が正しいか。
僕は今世でも人生を満喫することを誓います。
敬具
なんかよくわからない手紙が頭をよぎった。
あ、この手紙の内容じゃ差出人が不明だ。
いや、ほんとに出すわけでも出せるわけでもないから気にしなくていいか。
お土産はとても喜んでもらえたけど、クジラがこれ自分で狩ってきたのかと聞くから、そうだよ、と言ったら頭抱えていた。
僕は別に人間殺しになっても気にしないのに。




