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 おっひさー、イルカさんだよ。

 僕今、お城にいるの。

 魔王城じゃないよ、人間の国の城だよ。

 結局、目立たなそうな一兵卒を装いテクテク歩いて観光がてらキャンディー(のような危険物)を設置していく。

 途中でなんだか慌てる上級兵を見かけたのでもしかしたら忙しい時期だったみたい。

 仕事押し付けられたらどうしよう、と思った矢先に声をかけられた。

 振り向くとなんか高そうな防具をつけた青年。

 金髪銀目のアンバランスな見た目に驚く。

 くっ、イケメンだなおい。顔面偏差値高い。

 クジラには劣るけど。

 僕は目立つから幻術で髪をくるくるウェーブな茶髪で青い目のそこらへんにいるモブに扮しているから正体がバレたってことはないだろう。

 え、誰?


「あの、第一会議室にいるマグラット閣下に書類を渡してきてもらえませんか?」


 マグラット?待って、そっちも誰?

 僕、知らないんだけど。


「知らない人と喋らないようにって、クジラ(おとうさん)に言われているんで」


 お付きの兵士にでも頼んでください、と思わず口走った。いやしかしこの青年なんか地位がありそうだし、お付きの兵士(パシリ)くらいいると思ったんだ。

 あーあ、嘘でもいいからわかりましたって言っておけばよかった。

 今までの会話や行動から分かるであろうが僕はあまり頭が良くない。知識とかは詰め込んだけど、策士にはなれないタイプである。


「え゛、あ、シューデェルです。えっと勇者の」


 勇者? え゛?


 僕は呆然とした、彼も呆然としている。


「こっこれで知らない人じゃないですよね。お願いします、俺これから仲間と魔王討伐会議があって」


 名前聞いて知らない人じゃないってそれ不審者がよく使う手口だよ、そしてその会議ぶっ潰してやろうか、と思わず口にしそうになって片手で抑える。

 うん、勇者の顔知らないなんておかしな一兵卒だね、僕。

 まさか勇者がこんなへっぴりごしのもやしイケメンだとは思わなかった。


「わ、わかりました」


 退散じゃー。正体がばれたらもやし勇者に殺されるんだ、うわぁぁ。

 僕は残りの危険物ともらった書類をその場に放り投げて全速力で魔王領まで戻った。


 あ、お土産忘れた。


 僕は知らなかった、その置いてきた場所が王の部屋の前だったなんて。




「くじらぁぁ! 勇者って! もやしだった!」


「バカか周知の事実だろ」


 どうやらクジラはこのことを知っていたらしい。

「そもそも、見目と強さは比例しないだろ」

 いや、確かにそうなんだけどさ。

 一見もやしでも腕力ゴリラとかよくいるし。


 まぁ仲間にそんな見た目詐欺いっぱいいるんでいちいち騒ぐことでもないかもしれないが。

 勇者と言ったらこうカッコいいイメージがあるんだよ。

 二次元オタクにはそういう思い込みがあるんだ。


「で? 今度は何しに行ったんだ。勇者に会ってきたってことだろ」


 クジラはおもむろに僕の頭を鷲掴みして逃さないようにしてくる。

 あ、しまった。危ないことしたのがばれてる。

 怒られる。


「ちょっとお出かけ?」


 グググっとクジラの手に力が入る。


「どこにだ」


 ミシミシいってるよ、僕の頭。

 痛い痛い痛い!


「うぐぐ、にっ人間の国のお城でぇす。危険物設置(いたずらし)に行きましたぁ」


「お前、怖いもの知らずかよ」


 馬鹿かお前、とクジラに呆れられる。

 そんなこと言われても困る。

 だって、僕には神聖術で一発KOという事態はありえないから、あんまり彼らに対する恐怖心がないんだ。


「僕の怖いもの? 皆においていかれることだ。他のことなんか恐怖になり得ないね」




 だから、今から僕がサボりに行くのも怖いもの知らずだからなのである。


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