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イルカは楽しげに笑っていた。
あの子供が『おつかい』をきちんとやったのか、それとも自分の身かわいさに逃亡したのか。考えるだけで楽しい。
僕は根っからの魔王の味方だ。たとえ人間に生まれていようと悪魔と呼ばれた過去は消えそうに無い。
僕はもともと、平和の国生まれの平和主義者で、絶望なんて今期のアニメ録画し忘れたとかテストの範囲間違えたとかそれくらいしか思いつかなかったただの平民だ。
それがこの世界に生まれてから一変した。
今世は頑張って勉強は真面目にやったし、魔法も使えるようになったし、猫被って気を使って、全力で良いことをしようとしたのに、見目だけで悪魔呼ばわりをされた。友人はできず、今世もぼっちでハードな人生だ。
黒髪黒目は前世でいっぱいみている、悪魔のような性格の人もいたのであろうが。天使のような性格の人だっていたはずだ。
僕は怒っている。
この世界の人間の価値観に。
だから抗ってみようと思うのさ。
というわけで、いっそのこと人間を一定数黒髪黒目にして仕舞えばいいと思った。
「で、なんですか、この人間の村の奴らの絶望じみた表情」
「魔法で髪染めを作って魔法『色素偽造』使って黒髪黒目にしてあげた」
この世界には髪染めがなかったから自作しなくてはいけなくて大変だった。でもおかげさまで落とせないくらい強力な髪染めが出来上がった。
カラコンは流石に作れる気がしなかったので魔法で応用した。
完璧だ。
僕はね相手の気持ちを知るには相手のようにになればいいと思うんだ。
町の人々は絶望しているけど、実際のところ髪と目の色が変わっただけである。
もしかしたら、他の町のやつに嫌われてしまうかもしれないが、町ぐるみで魔物を家畜にし亜人を奴隷にして利益をあげていた。
それで僕に目をつけられて、憐れだとは思うけど、自業自得だ、諦めてくれ。
「あなたは本当に、鬼畜ですね」
「今更じゃないかなぁ、カルガモちゃん」
「メランコリーです、イルカ」
「あっ、今日はタツノくんに実験してくる予定だったんだ、じゃあねぇ」
手を振って走り去る僕に、カルガモちゃんの独り言が届いた。
「タツノ……ああアスモデウスですか。実験、私の天敵ですが、同情しますね」
そういえば君は彼と仲が悪かったね。
さて、僕が彼に何をするかといえば、魔法の試し打ちだ。タツノくんは頑丈だ。僕が以前に制御に失敗して爆発に巻き込んだ時も無傷でいたし、多少の魔法ではやられないだろう。
さて、今回試し打ちするのはこちら!
『呪い』
え?呪いと頑丈さは関係ないって?
あるんだよ。
主に精神面で。
では、早速行ってみよう。
廊下でカメと談笑しているタツノオトシゴを発見。
目の前に美人がいるんだ、絶好のチャンスだと思う。
「くらえー、『呪い』」
僕の呪いは成功しただろうか。
タツノくんは呆然としている。
カメも呆然としている。
え?僕カメには何もしてないんだけどなぁ。
「何やってるの、イルカ」
あ、カメが反応した。
「新開発の呪いをタツノくんに試し打ち、で? どう?」
僕がタツノくんに話を振ると、彼は戸惑いながら発狂しかけた。
「ヤベェぇぇぇっ!!なんかマッチョがいる。怖えぇぇ」
カメが、は?と首を傾げている。
「あっ成功した」
「ちょっと待って、なんの呪いかけて……」
「美女がマッチョな男性に見える呪い」
「どこに需要があるのよ。その呪術!」
カメが叫び声をあげた。
「悪ふざけ以外の何物でもないだろ、これ」
タツノくんはげんなりしている。両目を手で覆って見ないようにしているらしい。
「これをーはぁれむ♡な勇者にかければ攻撃どころじゃなくて精神面も攻撃できる。襲わせる魔物や魔族も美女にすれば完璧」
「すげー、俺初めて勇者に同情しそう」
「まさかとは思うけど他にも呪い開発なんてしてないわよね?」
疲れた様子の二人に僕はにっこりと笑う。
「な・い・しょ」
絶対、何かやっている、という二人の抗議に僕は聞こえませーんと、耳をギョウザにした。




