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てれてれしているコバくんを眺めたあの日から早数日。
僕はブカバクを抱きながら、人間の町にまた潜入していた。
ここで一つ、ブカバクは人間の目から見れば明らかに怪しいカエルだと思う。
契約主の僕が言うのだから間違いないんだけど、ここの町の人はそれすら気がつかない様子で忙しなく動いている。
老若男女問わずに走り回っている。
何をしているんだろうと呟く。
誰も彼もが忙しそうで、まるで前世の都会のサラリーマンたちを見ている気分だ。
「ちょっとお嬢ちゃん。聞いていい?」
あわあわしている人々の群れの中から薄汚れた貧民の子供に声をかける。
その子供は他の人々のように慌てて何かをやっていたが、僕の声でこちらに振り向いた。
表情からは焦りが見て取れる。
「あっ……あの?」
「ここの人たちってさぁー? なんでそんなに慌ててるのさ?」
不審者を見る目で見られて、思わず苦笑しつつ聞きたいことを聞く。
「何でって、これから魔王と全面戦争でっ……」
全面戦争?そんなこと、魔王言っていたかなぁ?
首を傾げつつも、へぇ、だから?と相槌を打つと、なんか変な奴を見る目で見られた。
不審者と変な奴、どっちがマシなんだろう。
いや、同義かもしれない。
「だからっ勇者さまたちの意向で、逃げるんだよ! あなたもさっさと逃げなよ!」
叫んでから、子供はしゅぱぁーっと走っていった。
僕は、おおっ速い、と感心しながらそれを見届ける。
それにしても、勇者か、ほんと、どんな奴なんだろう。
聖女は気の強いバーの店員さんみたいな感じだったなぁ。
というか、他にも勇者の仲間っているの?
想像としては、姫とか王子とか魔法使いとか武闘家あたりが無難だろうと思うけど。
「ねぇ、ブカバク。とりあえず偵察報告は『人間が全面戦争したいらしい』でいいかな?」
「ゲコっ(いいと思うゼェー)」
ブカバクとテキトーに会話しながら魔王城に戻る。
いつも通り身体強化を魔法でして走って帰る。
距離はだいぶあるけれど、実際僕がいるのは魔王領に近い人間領の中の町なので、なんら問題はない。
え? 不法侵入?
こっちの世界じゃ門番や見張りの人はいても、機械を全く使わないからすったかたーと密入国できてしまう。
そもそも彼らは魔王領に近づきたくないから、完全武装の兵士だけ置いて、一般人は近寄らないから昼間でも堂々と入れる。
兵士? 魔法で存在感消して避けて歩けば問題ないよ。
「あ、そうだ。ここも呪っとこう」
ブカバクが泉に寄り道がしたいと言い出したので、僕は森に寄り道した。
森の中はパラダイスのようだ。
友達と食料がいっぱいで人間もあんまりいない。いや、そもそも魔王領の森だから人間がいないのは当然か。
蜘蛛の魔物と罠の張り合いっこしたり、オークたちの大食い対決の観戦をしたり、野生バイコーンの群れの一匹に乗せてもらい一緒に風になったりする。
とっても楽しい。
コバくんも呼んで楽しく走る。
彼はとても脚が速くなっていた。
魔族すごぉい。
ブカバクはいつも通りげこげこ言っていた。
帰ってから、魔王に偵察報告をしにいくと、戦争何それ聞いてない、と驚いていた。
この魔王は、魔王呼ばわりされているくせに、大人しい。
争いが嫌いな優しい人だ。
魔族は人間を食べるし、魔法の威力は人間と比にならないし、人間から見たら異常値が平均どころか上限振り切っているのかというほどのクレイジーな性格をしている奴もいる。
そんな魔族に生まれたこの魔王は、そんじょそこらの人間よりも肝が座っていて、あったかい。
そばにいればすぐ虜になる。
そうなった僕がいうのだから間違いない。
まぁ、一番はクジラだけどね。
「そんなクレイジーな魔王だから、勇者に舐めた態度とられてるのかな?」
「何がそんななんだ? ぼす? ってかその顔やめてくれよ、怖い」
通りすがりのタチウオに注意された。
「怖い顔なんて、僕してないよ?」
僕は全力でとぼけておいた。




