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魔王領内街中ファンシー化計画がスタートした。
毎日見ていて面白い。
可愛い犬耳の付いた帽子をふとっちょなオークが着こなしていたときには、笑い転げそうになった。
外だったから、全力で我慢したけど。
あれは正直言って腹筋の耐久勝負だ。
こちらの腹筋が崩壊するか、相手が魔王を諦めて魔王領から出るか、
僕としては今すぐにでも人間領に帰って欲しい。
そうすれば全部オールオーケーだ。
でも、僕は人間を襲うのはやめないよ。
だって、そうすると勇者が弱るから。弱らなくても気は滅入るだろうと思う。
勇者が鬼畜非道で外道なら、話は別だけど。
僕は僕の大切なものを守りたい。
これが僕の身勝手な行動理由だ。
そう、他のものには興味がないのだ。
前世はここまで淡白な人間じゃなかったはずなんだけどなぁ。
「どーした、イルカ。お前も着るか?」
クラゲがこれ以上ないくらい不機嫌そうな顔で僕にピンクのドレスを押し付けようとしてくる。
フワフワふりふりレースいっぱいの良い生地のドレスだ。
当然だけど僕は断る。
「いいよいいよ、みんなで楽しんで」
クラゲはさらに顔を歪めて叫ぶ。
「お前の発案だろーが!」
「うん、でも僕は着るなんて言ってない。似合ってるよ」
クラゲは可愛いミニスカゴスロリ風のドレスだった。赤と黒が似合う。魔族だからかな、自前のツノだろう黒羊のツノが見えた。これで尻尾あれば完璧だ。
男だった面影は見えない。完全に美女だ。
胸はないけど、いいや、別に。
骨格は隠すようにストールなりなんなり巻いているし、大丈夫だろう。
他の人もドレスだったり、貴婦人のワンピースのようなものだったり、色々着ている。
みんな美形だから眼福だよ。
一部の人は目の毒だけど。
ムキムキマチョメンは意外といた。なんていうか、幹部にはいなかったけど、部下の小隊いくつかに何十人か。
目の毒すぎて僕は見なかったことにした。
僕発案だけど、これはない。
幹部の細マッチョどもは似合っていた。
クラゲやアシカは童顔で女顔だったからもう性別なんてわからない。
クジラやタチウオはギリギリセーフだ。
でも、知り合いじゃなかったらお近づきになりたくない感じではある。
魔王は流石にやめた。
魔王にまでそんな格好させたら、テメェー締めてやる、とタツノオトシゴに脅された。彼は他の誰よりも似合っていた。
女性陣たちはみんなどこのご令嬢? レベルで美しかった。
すげぇー眼福。
「イルカも着ればよかったのに」
カルガモが僕にそういうけれど、ただのモブが派手に着飾るという謎の状況になるから却下だ。
個人的には着るより着せたい派だからという理由もある。
みんな楽しそうでなによりだ。
「とりあえず魔王軍の見た目と国境付近の大きな街々にはふぁんしー化計画をスタートさせているが、他の村や町に広めるのは時間がいるな」
アシカが意見を言った。
「じゃあその他のとこでは妖精族に君たちもドレス着よって誘わせるとか、美味しいものあるよって(薬入り)パフェ出してもてなすとかしようよ」
「鬼畜対応だな。よしやらせるか」
クジラは思いの外巻き添えにしたくなったらしい。
ちなみに入れる薬品は老け薬とか太りやすくなる薬でどうかな?
女性の敵だよね、とウニに言われた。
事実だからどうしようもないのだと思う。
そもそもここは勇者にとっての敵陣内部だから、気を抜いたほうが負けなんだよ。
「とりあえず僕は柵の飾り付け作業手伝ってくる」
柵は柵ですごいことになっていた。
電気トラップやら鉄格子をショッキングピンクに染めてある。
ただファンシーなだけなら意味がないと思ったのか、動くタコのような生物に出迎えさせている。
妙に気持ちが悪い。
ぐねぐねしている陸上のオクトパスに猫耳つけてデコっても可愛さのかけらすらない。
なぜこの役回りにしようと思ったのか。
僕が人間だからなのか、その感性までは理解できなかった。




