21
静かな怒りを蔓延させた会議室。
みんなは僕の言葉に耳を傾けた。
「近づけさせない? どうする気だ?」
タツノオトシゴが僕に聞く。
その目は疑問でできていた。
「僕らは襲って欲しくない、近づいて欲しくない、なら彼らが襲いたくない場所にすればいい。近づきたくない場所にすればいい」
妙案だ。いいと思う。
「そりゃ無理だよ、私たち人間じゃないし、嫌われてるし、嬉々として襲われるよ?」
不思議そうにカルガモが聞いてくる。
「関わり合いになりたくない相手になればいいだけだよ。もちろん、相手からの主観で、ね」
魔王である我らがボスが、具体的に話せと目線で命令してきた。
「はーい、まずこういう場合は、魔王っぽく、敵に見えるような行動はダメなんだよ。相手を無駄に挑発しちゃう」
まぁ挑発は僕の十八番だけどさ。
「それで?」
アシカが僕に相槌を打った。
「具体的にはどうするんだ?」
タチウオが喋る。
「近づきたくないくらいすごい見た目にすればいい。具体的には、超ファンシーな柵でも立てて、まるで子供用テーマパークにすればいい」
「ふぁんしぃー? てーまぱーく?」
あ、通じてない。
どう説明したものか、会議用のコピー用紙の裏紙を使用して説明する。
「例えばさ、子供用の公園に、大人が一人で子連れでもないのに混ざっていたら恥ずかしいし目立つでしょ? 遊具で楽しく大人が一人、遊んでいるんだよ? できればそんなことしたくないよね?」
「そうだね」
ウニが真顔で頷いた。
「だから、街全体を超子供チックな遊び場にしてしまえばいいんだよ。魔族はともかく魔物はあんまり美的感覚とかそういうのないから、気にしないでしょ? 勇者が普通の感性を持つ人間なら、とても入りたくない街になると思う。テーマパークは遊具いっぱいの広い公園のことね」
まぁ、遊びたい盛りの子供だったら、嬉々として入ってくるかもしれないけど。
あ、ファンシーってこういうののことだよ、と、コピー用紙に絵を描く。
僕は前世でデザインの仕事に就きたかった。だから、可愛い絵もお手の物だ。
なかなか可愛いイラストが描けた。
テーマはユニコーンと王子様。
あ、可愛い、と女性陣から黄色い歓声が上がる。
少し殺気が薄まった気がする。
「こんな絵が街中至る所にあって、街の中の魔物や魔族がドレスで着飾っている中で、鎧や冒険服の勇者は入りたいと思うかな?」
思わないよね。
「まぁ……いい案じゃないか?」
柵用のコストや衣装以外そこまで金はかからないし、勇者に襲われないためとなれば魔族だって腹をくくって我慢するだろうと思う。
「あ、男性陣もドレスね」
この一言で男性陣は机に突っ伏した。
ムキムキマチョメンがドレス着てたら、恐怖感マシマシだよね。
いや、我らが魔王軍の幹部ともあろう男どもがムキムキマチョメンだと誰が言った?
中には細マッチョなのか見た目と腕力が反比例している人もいる。
まぁ、全員顔が良いという点は共通しているけど。
ずるいなぁ。美形だからって許されるセリフは意外と多いんだ。
僕も前世と比べて多少見目は良くなったと自負しているが、魔族のみんなと比べてしまうとただのそこらへんにいる街人Aだ。
「大丈夫だよ。みんな僕と違って美形だもの、性別なんて気にならないさ」
笑顔でサムズアップしておきつつ、僕は着ないよと心の中で呟く。
実際に言ったら、お前も着ろと言われるのは目に見えていた。
僕はキラキラした服や目立つ行為は苦手なんだ。
遠くからちょっと面白い光景を眺めていられれば満足である。




