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この前のコボルト事件から早数日。
僕それ以来とても不機嫌だった。
クジラが慰めて? くれたので、誰かに八つ当たりはしていないけど、今聖女に会ったら、煽る暇もなく即処分しにかかりそうなくらい、不機嫌だった。
ここ数日ずっとそんな感じだったからか、クラゲが、ちょっと休憩しようと言い出した。
別に仕事で徹夜というわけでもないので、そこまで休む必要もなかったが、せっかく誘われたので休むことにした。
お昼休み休憩が少し早まったので、僕は魔王城の城の庭を見ながらお弁当をひろげる。
普段は外食や食堂で済ますのだけど、いまこの不機嫌そうな僕が他の人に近づけば困らせてしまうからだ。
もぐもぐと一心不乱に唐揚げを頬張っていると、庭池で金魚が跳ねた。
アレ? 金魚が……だよね?
とても太くてナマズくらいの赤い影だった。
鯉じゃないよね。
大きい金魚? への好奇心に僕が心奪われている時、急に後ろから声を掛けられた。
不機嫌さが少しずつ金魚へシフトされていたので、僕は特に八つ当たりもせずに受け答えができた。
「イルカサマ、イルカサマ」
声を掛けてきたのはいつぞやのコボルトの子供だった。
様付けなんて慣れてないのでちょっと恥ずかしい。
どうしたのかな?そんなに慌てることないと思うのだけど。
「なぁに?」
のんびりと返事すると子コボルトは大声で要件を言った。
「マオーサマガ、オヨビデス」
「魔王が?」
何事かと大急ぎで会議室に向かう。
前の世界なら王座の間とかに呼ばれるのだろうけど、そんなところに呼ばれるのは勇者御一行だけである。
会議室内にはいつものメンバーがいた、ボスからカルガモまで勢揃いである…あ、まだカメが揃っていない。
おちゃらけた雰囲気もなく、なんかこう、とても真面目な感じで、僕は驚いた。
しかも数人殺気だっている奴がいる。
何があった。
僕はいつもどうりクジラの隣の自席に着席しながら、ボスに質問する。
「急に何事ですかぁー? 今度はキャンプするの?」
ボスは反応を返してくれなかった。優しい彼が無視なんて、この世があの世に変化してしまったのではないか?
「ちょっと黙っていろ」
クジラが僕を嗜める。
珍しく、キツイ言い方だった。
ほんとに何事?
「遅くなりました」
カメが入室した。この場の雰囲気に私と同じで驚いている。
おそらく事実を知っているのは殺気だっている数人だけのようだ。僕やカメ、タチウオ達数人は戸惑っている。
「急に呼び出してすまない。早速だが本題に入るぞ。勇者が我が領域の街を襲った。」
勇者が、きた?
ゆうしゃ?
街を襲った?
僕は衝撃で打ち震えた。戦慄した。
え? ええ? この前ちょっと悪戯しつつも奇襲したばかりだったのに、もう来たの?
「どっどこに来たんですか?」
タチウオが挙手しつつ聞いた。
「国境付近の街だ」
国境付近の……陽気でやさしい魔物や魔族が多いあそこか。
僕の知り合いが数人いる。
無事だといいけど。
そんな願いは次のアシカのセリフで打ち砕かれた。
「全滅だそうだ」
救助隊も出したが、魔族や魔物に神聖術は毒どころじゃないからな、ちびっ子から年寄りまで、皆殺しさ。
人外だからって理由でな。
僕は続いた言葉が耳に入らなかった。
遠くの雑音に聞こえた。
人型の魔族や亜人の扱いから人間の自族尊重他族拒否はよくわかっていたつもりだった。
まさか全員殺すとは。
まぁ、僕も奇襲の時やったから、人のこと言えないけどね。
「それで、どうなさるのですか」
カルガモが口を開く。他のやつはこの場を見守りつつも怒りで顔が歪んでいる。
落ち着こうよ。なんて言い出せる雰囲気じゃあなかった。
みんな仲間が大切なんだ、傷つけられたらこうなるだろう。
「迎え撃つ、と言いたいところだが、いかんせん急すぎる」
どうしたものかな、とボスは言う。
兵を集めるにしたって、相手が勇者じゃ無駄死にに行けと言っているものだ。兵力なんて時間かけなきゃ集まらない。
その間に市民が攻撃されたらどうしよう。
僕らは領土内の民を守る義務がある。
「そうだ。近づけさせなきゃいいんだ」
僕は妙案を思いついた。




