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19(ちょっとだけクジラside)

 最悪な寝目覚めだった。

 なんだかとても不快な夢を見た。

 僕の前世から変わらない一部の外見、黒髪黒目を馬鹿にされた思い出だ。

 この外見で悪魔とか言われたら、日本人全員だからね? 嘘でしょ?

 だいたい僕の両親は前世の彼らであり今世の奴らはせいぜい生物学的な関係しかない。

 馬鹿にされる筋合いなどないに等しいのだ。

 ポスポス布団を叩きながら、不満げに頬を膨らましていたら、急に声をかけられた。


「どうした? イルカ?」


 あ、クジラ。

 今日もいけめんふぇいすなクジラは寝間着姿だが眠そうではなかった。

 ちょっと待って、僕、昨日はクジラと添い寝した覚えがないぞ。

 え、何事?

 一人首を傾げていると、何を不思議に思っているのか、察したらしいクジラは軽く微笑んだ。

 やべー、カッケー。


「昨日はお疲れ様。間違えて俺の部屋で寝るくらい疲れてたんだなぁ。いきなり乗っかってくるから、なんの悪戯かとびっくりしたぜ」


 ふぇ?


 ここ、クジラの部屋?


 理解するのに丸々一分使い、理解したと同時に大声を上げてしまった。


「ごっごめん! わぁわわっ。間違えちゃったよ!」


 焦った僕が珍しいのか目を丸くしたクジラは、ぽんっと僕の頭に手を置く。


「別にぃ、気にしてねーし。で? どした? 夢見が悪かったんだろ?」


 ああそうか、僕の寝起きの行動もこの人は見てたのか。


 頭をガシガシ撫でられる、ちょっと痛いけど、愛があって悪い気はしない。


「いや、なんでも」

 テキトーにはぐらかして身体を起こす。

 コボルトの書類で寝不足だった僕はもう全快していた。

 さて、起き上がろうとしたところで、クジラが僕を引き止める。

 正確には、立ち上がろうとした僕の手を引きながら、布団に戻した。

 勢い余ってぽふんと布団に後ろからダイブした。

 なになに?二度寝していいの?


「嫌な夢だったか」


 真面目な顔していうものだから、思わず頷いてしまった。

 あ、しまったー。やってしまった。

 クジラはふにゃっと苦笑いしつつそうか、と言って深くは探ってこなかった。




 なんかよくわからないけど、寝目覚めは悪かったが、寝起きはいい気分になった。

 朝からクジラのほにゃっとした笑顔が見れたんだ、機嫌が良くて当たり前だ。

 たまたま廊下で会ったウニに自慢した。


「それ、ほにゃ、じゃないよ。にやりだよ」


 どうやら僕の養父の笑顔は他の人にはヤクザの企み顔に見えるらしい。


 言われてみればわかる気がした。




 クジラside

 布団で寝ていたら、何かが部屋に入ってきた。

 俺は常に気を張っているから、気配には気付きやすい、布団に一直線だから、奇襲かと身構えていたら、全力ダイブされた。

 (おめぇ)よ、誰だよ、と思って、抱き枕のごとくホールドしてくるやつの手から抜けると、そこにいたのはイルカだった。

 一瞬、こいつ何してんだ、と思ったが、すぐに何が起きたか理解した。

 こいつ、イルカは寝ぼけているのだ。

 多分、部屋を間違えたのだろう。

 二人で一人用ベッドはきついなと思わなくもないが、最近添い寝してやったらなんか知らないが喜んでいたので、今日もそうしておこうと思う。

 なんだかんだ言って、クジラはイルカが気に入っていた。

 人間の子供にしたら手がかからないし、有能だし、気は合う方だ。

 狭いのは諦めてイルカを横に押しやる。イルカは完全に眠り込んでいる様子で、起きもしなかった。

 空いたスペースに潜り込んで、眠っているイルカを見る。

 こうしてみると人間なのに魔族並みに美形だ。

 黙っていれば、モテるだろうに、いかんせん悪戯が過ぎる。

 まぁ、それくらいがちょうどいいのかもしれないと思い、その日はそのまま寝た。

 朝、目が覚めたのは、イルカの唸り声が聞こえたからだった。

 どうやら夢見が悪かったらしく、眉間にシワがある、しかし表情は笑顔だ。

 こいつは普段ニコニコしていることが多いが、心の中では悪態をつきまくっていることが多々ある。

 言いたいことがあれば口で言えばいいだろうと、昔、言った。

 イルカは、僕は人間の貴族だったから、綺麗事で塗り固める癖が抜けないんだ、といつも通りの表情で言った。

 可哀想だと、同情するのは良くないのだろうか。

 考え事をしていると突然イルカが喋った。


「僕は、悪魔じゃない」


 悪魔。

 魔族が悪魔と呼ばれることはよくあるが、イルカは自分が魔族ではないことを気にしているのだろうか。

 いや、それなら魔族と言うはずだ。悪魔なんて言葉、こいつは俺ら(魔族)に使わない。

 気にしていないわけではないだろうが、今回は違う意味な気がする。

 じゃあ、どういうことか。

 そういえば、気にしたこともなかったが、こいつは綺麗な黒髪黒目だ。茶髪っぽくもない純粋な黒。

 俺は正直羨ましい。

 でも、人間はこの外見を悪魔と称していた気がする。

 まぁ一部の奴らだけのようだが、きっとそれでとやかく言われたのだろう。

 予想だと、多分家族だ。

 出会った時、家族に対する例えがあまりにも酷かったからな。


 起きたら、なんかイラついていた。

 悔しそうな怒りのような感情を表情にしていた。

 笑顔じゃないイルカは随分と久々だ。

 やっぱり、イルカは俺の部屋に入り込んだと気がついていなかったらしく驚いて焦っていた。

 あわあわしているイルカも可愛い。

 これは親バカというやつだろうか。

 撫でてやったら、嬉しそうにしている。

 でも、仕事を思い出したのかすぐ起き上がろうとするので、止めてやる。

 あの表情について、俺はまだ何も聞けていない。

 夢見が悪かったんだろうと聞くと、肯定こそしたが詳細についてはテキトーにはぐらかされた。

 いう気は無いらしい。

 無理に聞く気もないので、離してやった。


 いつか、イルカ自身の口から教えてほしいと思う。


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