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 最近、いつもクジラが添い寝してくれる。

 こんなの随分久々だ。

 この魔王城に来たばかりの頃は、四六時中クジラがそばにいた。

 ………僕がくっついていたわけではない。


 多分。


 その日は元気にコボルトを家畜扱いしていた人間を吊るしていた機嫌の悪い日だった。

「ありがと……」

 大人しめの子供コボルトがお礼を言ってくるので、気にしなくていいよ、仕事だから、と返す。

 ボロボロの服でやせ細った労働基準法も何もないブラックな職場の従業員たちを見て、さらに機嫌が悪くなる。

 あんなのと僕が同族なんて、吐き気がする。

 それをなんだか勘違いしたらしい、コボルトたちは、泣いて許しを乞うてきた。

 別に彼らに対しては何も思ってないので、慌てて取り繕いながら、笑顔を()()()


「これから貴方方は、ボス……魔王様の支配下に置かれます。給料はとても多いわけではありませんが、少なくともあの下等生ぶ………人間の置いていた職場よりはマシな職場です。安心してください」


 休暇もボーナスもありますよ、と笑いかければ彼らはまた大泣きし始めた。

 敬語の僕が不振だったのか?

 いや、それだけ嫌なのか。

 だよね、僕も畑耕すの嫌だし。

 頑張ってね、とサムズアップすれば、笑顔で、はいっ! と返ってきた。

 どうやら嫌だったわけではないらしい。

 よかった、よかった。


 それにしても、世の中の多くの人間は差別主義だ。

 そういう僕も、()()()()()差別意識があるので人のことは言えないのだけど。

そういえば、コボルトといえば獣人と間違えられがちだ。

コボルトは魔物の一種で獣人じゃない。

 彼らは獣人(亜人種ともいう)が大嫌いだ。

 獣人は魔族じゃないのに魔族扱いされている。

 魔族と獣人たちの決定的な差は魔素がみえるかみえないか、そして、魔力量の大いなる差だ。

 獣人程度では魔族の魔力量に勝てやしない。人間なんてなおさらそうだ。

 僕がみんなと戦えるのは、魔力量の少なさを空気中の魔素で補うことができるからであって、素のままじゃ片手で捻り潰されてしまうレベルで歯どころか爪もたたない。

 ちなみに魔素の量は獣人と人間だと獣人の方が多いらしい。

 獣人は身体能力も高い。

 だからこそ人間に嫌われている。

 人間は原来、自分より優れているものを妬む性質がある。そして、未知が怖くて仕方ないという怖がりなところがある。


 もう面倒くさくて、関わりたくないくらいだ。

 コボルトたちの件を魔王(ボス)に報告する頃にはとっくのとうに真夜中だった。


 余計な仕事増やしやがって……にんげんめ……。


 イライラしながら、自室に戻り、布団にダイブする。

 一瞬、走っている馬車から放り投げた時の人間の呻き声のようなものが聞こえたが、子供の体の僕は、眠気に耐えきれず、そのまま眠ってしまった。



 僕は夢を見た。

 前世の夢だった。

 ちょっとばかし人付き合いは苦手だったが、良い両親がいて、親友がいた。あいにく恋人はいなかったが、まぁ気にしなくていいだろう。

 みんなの顔が思い浮かんだあと、急に白かった背景が黒く染まった。

 次に顔が浮かんだのは、今世の家族だった。

 成金と豚とロクデナシ強がり野郎だ。

 顔を思い出すだけで、罵詈雑言を言いたくなるし、ホラゲVR廃ゲーマーの能力をフル稼働して攻撃したい。

 無性にイラついてきた。

 僕も人間だという事実を無いものにしたかった。


 夢から覚める寸前。


 僕はある声を聞いた。


 低くて喚くような声で、偉そうで、蔑んでくる


 とても不快な声だった。




「黒髪黒目の悪魔の子。俺の妹は悪魔なんだ」




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