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今回、少しだけイルカさんが怖いです。
なんだかよくわからないけれど、聖なる力なのかなんなのか、魔族や魔物を退ける謎ぱわーで、聖女は人間を守っていく。
「さぁ、悪魔どもよ。この場から立ち去るのです」
僕が言った嫌味も軽く聞き流したのか、聞こえなかったのか、聖女はピカピカ光る杖持って僕らに近づいてくる。
心なしかタチウオは辛そうだ。
確かに魔族には効果バツグンだったらしい。
「タチウオ、アシカに伝えてきてよ。撤退して欲しいなぁーって」
「何考えてるっ! お前を置いて行けるわけあるか?!」
なんだか顔面偏差値が異常に高いからこそカッコよく言えるセリフを、堂々と言い放ててなおかつ様になっているタチウオ。
なんで魔族たちはみんなこうも美形ばっかりなのか。
これが種族差か。いや、でも人間でも見目のいい奴いるもんな。
「ダイジョーブ。大丈夫。ほら、僕なら平気さ」
なんでかなんて、言わなくてもわかるだろう?
言外にそういうと、タチウオはため息をひとつ吐いた。
「わかった。夕飯はきのこスープ、パセリ山盛りって伝えてくるぜ」
ひでぇ。僕の嫌いなもので埋め尽くすなんて。
きのことパセリは食べ物じゃない。菌類と草だ。
タチウオを逃すまいと、聖女さんは発光する杖を振るう。
魔法を使っているようなので、僕も魔法でそれを防ぐ。
威力は人外のようだけど、耐えきれないほどじゃぁなかった。
クジラ式スパルタ訓練の賜物である。
おっと、それについて思い出すのはやめよう。
寒気がする。
タチウオがしっかり逃亡できたことを確認しつつ、聖女と対峙してみる。
ちなみに、聖女の後ろには大量の民衆がいる。
薪割り斧とか、鍬とか、スコップとか構えてる。
顔はまさに鬼のよう。
あれ、悪魔ってどっちのこと?
こんな子供相手に武器まで持ち出すなんて。
きゃっ、と弱気で可愛こぶる自分を想像してみる。
……ただの子供じゃないじゃないか、という苦情は受け付けてないよ。
というか今の僕は仮装もしていないマジモンの人間の姿なのに魔族って決めつけているのがちょっと面白い。
「仲間を逃すとは、悪魔どもにも情はあったのですね。神はなんとお優しい」
神? なんで? どこで神が出てくるの?
後でよく考えたのだけれど、悪魔を神が創ってそれでその時情を与えたって考えたからだろうという推測になった。
すげー超理論。
あーそれはともかく神? 勇者じゃなくて?
「えー。おねーさんは勇者を崇め奉る会の重要メンバーじゃないの?」
「何を言っているのですか。私は神が直々に創造され、神の御導きの下、聖なる行いをしてきた勇者を尊敬はしていますが、崇めてなどいないですよ」
「ヘェ〜でも、実はその勇者が大好きなんでしょ?」
「まぁ、嫌いじゃありませんね」
この人、もしかして、勇者とリア充になるのか?
そんでもってどうせ勇者もいけめーんなんだろ?
「じゃ、勇者が嫌っているから魔族、嫌いなんだ?」
「いいえ、悪を行い、人々を悪戯に苦しめ、厄災をもたらすから嫌いなのであって、勇者が〜などという考えはありません」
なんか難しくて、イルカさん、わかんないなぁ。
「あー、君たちはすごいですね〜。そんなにいっぱい綺麗事並べられるなんて……それで?うん。僕を浄化したいって?なら、そんな光、無意味だよ」
だって、僕、人間だもの。
心の中で言ってから、充分時間稼ぎできたかな、と考える。
こんだけ長ったらしくゆっくり話しているんだ。
高速移動もどきが使える魔族にとって、逃亡時間には十分だろう。
さて、僕も逃げちゃおっかな。
「バイバイ、おねーさん。おしゃべり、とても無駄な時間だったよ。今度は有意義に話そうね」
言い逃げして、魔法でスピードを上げて走り去った。
聖女の張り直した結界も、僕に向けられた謎のぱわーが宿っている光も、意味はなかった。
僕に魔族相手の戦い方なんて通じないのだから。
そして僕にも効くであろう炎魔法は、跳ね返しておいた。
遅延の追加効果があるので、しばらく被害はない、明日くらいに自然発火現象が起こるだけのことだ。
魔王城に帰宅してから、魔王に、聞いて聞いて〜聖女と対峙してきて、お話ししたんだーと言ったら、お前、人間に戻れなくなるぞ的なことを言われた。
戻るも何も、僕、今現在も人間だよ?と言ったら、そういうことじゃないと否定された。
どうやら人間社会に戻れなくなるぞと言いたかったらしい。
僕はもう魔族社会に溶け込んでるから問題ないよ、と伝えると、少し戸惑った後、魔王は僕の頭をひとなでしてから仕事部屋に出かけていった。
僕、前世を含めるとそれなりの年齢だから、恥ずかしいんだけどなぁ。




