【2周目:夜風の告白】解き放たれた真実と、誓いの夜
いつもお読みいただきありがとうございます! 連載『死に戻った新米刑事は、生真面目先輩とやり直し(と恋)を始める』第9話をお届けいたします。
鳥居の衝撃的な自決と、警察内部組織『とぐろを巻いた蛇』による冷酷な隠蔽工作。 巨大な闇の前に打ちひしがれ、ひとり肩を震わせる新米刑事・いづみ。
倉敷川沿いの見晴らしの丘で、静かに寄り添う田中先輩。 ぽつぽつと降り始める夜雨の中、ついにいづみが隠し続けてきた「タイムループの全真実」を涙ながらに明かす、魂が震える第9話をどうぞお楽しみください!
7月23日、午後9時。
取調室での鳥居信一郎の惨絶な吐血自決から、わずか数時間。
倉敷警察署の三階一係執務室は、本庁から緊急介入してきた監察官たちによって物証や資料が押収され、重苦しく冷たい静寂に包まれていた。
『捜査疲労による突発性の心臓麻痺』――。
十年前の父の無念を晴らし、二周目の客観捜査で完璧に追い詰めたはずの真相は、組織の巨大な圧力によってあっさりと闇の奥へと葬り去られてしまったのだ。
(私……何をやっていたんだろう……っ)
一係の片隅、自分のデスクの前に佇む村瀬いづみは、消え残る鉄の匂いと冷気に身を竦め、小さく肩を震わせていた。
未来の記憶という『予言』に頼るのをやめ、地道な足と科学捜査で掴み取ったはずの三大客観物証。それなのに、黒幕の死とともにすべては途切れ、手の中に残ったのはあまりにも苦く冷酷な敗北感だけだった。
警察内部に巣食う暗黒組織『とぐろを巻いた蛇』の深淵。その恐ろしい影が、いづみの足元を底なしの沼のように蝕んでいく。
「……村瀬」
ふいに、静かな低音がいづみの耳元に届いた。
振り向くと、夏用スリーピースを着こなした巡査部長・田中健人が立ち尽くしていた。
大勢の同僚たちが行き交う執務室の中で、彼は凛とした捜査員の姿勢を崩さず、静かにいづみの傍らに立っている。余計な慰めの言葉は口にしない。だが、スリーピースの袖口から覗く彼の大きな手が、悔しさを押し殺すように力強く握り締められているのを、いづみは見逃さなかった。
「……今日のところは、引き揚げよう。……少し、外の風を吸うぞ」
「……田中先輩……」
「行くぞ」
短くそう告げると、田中は背筋を伸ばして歩き出した。いづみもまた、吸い寄せられるようにその背中を追った。
夜の倉敷美観地区。
白壁の蔵造りの街並みは静まり返り、柳並木の揺れる倉敷川の川面には、街灯の橙色の光がゆらゆらと細長く揺らめいていた。
二人が辿り着いたのは、美観地区を一望できる静かな見晴らしの丘――阿智神社へと続く石段の手前にある、小さな木製ベンチの脇だった。
ぬるい夜風が白壁の街並みを吹き抜けていく。
いづみは木の柵に両手を預け、街の灯りを見つめながら、いまだに震えの止まらない自分の指先を小さく噛み締めていた。
田中は少し離れた場所に佇み、黒縁メガネの奥の静かな瞳で、いづみの横顔を見つめていた。
職場での厳格な先輩と後輩。だが、一週間前に病院のベッドから復帰して以来、そして今日の鳥居の自決を目の当たりにして以来、いづみが背負っているものが単なる新人刑事の気負いではないことを、田中は感じ取っていたのだった。
「……村瀬」
ふいに、田中が静かに声をかけた。
叱咤も強要もない、ただ相棒の痛みを気遣うような、深く低い響き。
「……ずっと、気になっていた」
「え……?」
いづみが振り返る。田中はゆっくりと足を踏み出し、数歩の距離を保ったまま、いづみと視線を合わせ直した。
「雨の美観地区で刺客に襲われた時も、俺が病院のベッドにいた時も……お前はいつも、俺が今にもどこかへ消えてしまうかのような、痛々しい瞳で俺を見ていた。……そして今日もだ。鳥居の自決に誰よりもショックを受け、一人で世界の終わりを背負い込んでいるかのように肩を震わせている」
「そ……それは……っ」
「無理にすべてを話す必要はない。……だが、俺たちはバディだろう。一人で抱え込んで壊れそうな顔をされるのが、一番辛いんだ。……話せることだけでいい。お前が何をそんなに恐れているのか、俺に教えてくれないか」
田中の包み込むような眼差し。過剰に踏み込まず、だが絶対に自分を見放さないバディとしての温かい言葉。
その優しさに触れた瞬間、いづみの胸の奥でずっと張り詰めていた緊張の糸が、プツリと音を立てて切れた。
(田中先輩……。私……私、もう一人じゃ耐えられない……っ!)
未来の記憶を口にすれば、頭がおかしくなったと思われるかもしれない。
だが、この人にだけは……自分の命を懸けて自分を護ってくれたこの人にだけは、隠し続けることなんてできなかった。タイムループの真実を口にする――それは、いづみにとってあまりにも巨大で、命を削るような勇気だった。
「た……田中先輩……っ!」
ポロポロと、大粒の涙がいづみの瞳から溢れ出し、月光に濡れた頬を伝って零れ落ちた。
「私……私、見たんですッ! 一度……死んだんですッ! この街で……先輩の目の前で……っ!」
「……なに……?」
田中の息が止まる。だが、いづみは溢れる涙で視界を濡らしながら、胸の奥底に封印してきた一回目の世界の記憶を、泣きじゃくりながら吐き出していった。
「一回目のあの雨の夜……鳥居係長が裏切り者で……私達は廃倉庫で追い詰められたんです! その時……田中先輩は、私を庇って……っ! 複数の弾丸を浴びて……私の目の前で、血を流して死んじゃったんですッ!!」
「俺が……殺された……!?」
「『走れ、生きろ』って……私を庇って死んでいく先輩の胸の温もりも、溢れる血の匂いも……私、全部覚えてるんですッ! だから……目が覚めて7月15日の朝に戻っていた時、私、決めたんです……! 今度こそ、何があっても田中先輩を死なせないって……っ!」
溢れる涙が、ポロポロと足元の石畳を濡らしていく。
「予言者みたいに先走って、先輩に叱られて……一人で暴走して……それでも、先輩を失うのが怖くて堪らなかった……っ! もう二度と、あの冷たい雨の中で先輩を死なせたくなかったの……っ! 一人で生き直すのが……どうしようもなく、恐ろしかったんです……ッ!!」
激しい泣き声が、夜の丘の上に切なく響き渡った。
田中は雷に打たれたような衝撃を受け、言葉を失って固まっていた。
これまでのいづみの不自然な言動、病院での取り乱し方、自分に向けられていた必死な眼差し――そのすべてが、彼女の痛々しい告白によって完璧に噛み合わさったのだ。
(この幼い後輩は……一人でそんな凄惨な記憶を背負って……俺を守るために走ってきたというのか……!)
ぽつ、と冷たい雫がいづみの額に落ちた。
続いて、ぽつぽつと、夜空から黒い雨粒が落ち始め、白壁の街並みを濡らし始めた。真夏の夜の突然の夕立だった。
「あ……雨……?」
涙で濡れた顔を上げた直後――。
がしっ、と強い力が、いづみの身体を抱き寄せた。
「……んッ!?」
田中だった。
彼は溢れ出る感情を抑えきれず、一歩踏み出すと、178センチの逞しい骨太な両腕で、いづみの細い肩を強く、力いっぱい抱きしめたのだ。
「先輩……っ!?」
「……バカ者が……っ」
田中の低く掠れた声が、いづみの耳元で震えていた。
「一人で……そんな恐ろしい記憶を背負っていたのか……っ。俺を助けるために……一人でどれほど怖かったか……っ!」
「田中……先輩……っ」
「よく耐えた……よく頑張ったな、いづみ……っ!」
職場の「村瀬」ではなく、一人の愛おしい女性として呼ばれた自分の名前。
スリーピース越しに伝わる、生き生きとした彼の胸の温もりと心音。一回目で失い、二度と触れられないと絶望していたはずの彼の体温が、いま確かに自分を包み込んでいた。
「もう……一人じゃない。お前が背負ってきた闇も恐怖も、これからは全部俺が半分もらう。俺がお前を護る……絶対にだ!」
「先輩……! 私……私、ずっと……っ! 田中先輩が好きでした……っ! 誰よりも……愛していますッ!!」
いづみは溢れる涙とともに、ずっと隠してきた真実の恋心を叫んだ。
田中はいづみの顔を両手で包み込むと、まっすぐな瞳で見つめ返した。
「俺もだ、いづみ。……お前を愛している」
雨粒が二人の肩と髪を濡らす中、月光と街灯の光の下で、二人は吸い寄せられるように唇を重ね合わせた。
甘く、切なく、互いの存在を確かめ合うような【誓いの初キス】。
ザーッと、突然の激しい雨足が二人を強く叩き、柳の葉を狂おしく揺らし始めた。
冷たい雨粒が全身を激しく打ち据えるのも忘れ、田中は引き締まったいづみの肢体を力強く引き寄せ、その細い腰を抱きかかえるようにして固く抱きしめた。
いづみもまた、雨に濡れて素肌にピタリと張り付くブラウス越しに田中の逞しい胸板を感じながら、彼の首筋にしがみつき、爪が食い込むほど強くその背中を抱き返した。
一度離れかけた唇が、どちらからともなく再び求め合うように重なり合う。
雨を頬に伝わせながら、乞うように開かれた唇の奥へ、熱い舌先が滑り込んだ。
微かに震えながら相手の口中を探り当て、深く、甘く、繊細に絡み合っていく舌と舌。まるで相手の魂の奥深くまで触れようとするかのように熱く交わされる舌の蠢きと、触れ合うたびにこぼれる切ない水音。
唇が離れるたびに、甘い吐息と雨の滴が混ざり合い、銀色の糸を引くような情熱的な息づかいが相手の口内へとなだれ込んだ。
「ん……っ……あ……」
命の熱気を直接確かめ合うような濃密な舌の交わり。
一回目の冷たい死の記憶も、二回目で二人で背負い続けてきた途方もない孤独も、触れ合う舌先から直接注ぎ込まれる灼熱のような体温の中に溶けて消えていく。
雨の冷たさすら忘れてしまうほど熱く交わされる舌と吐息。激しく脈打つ鼓動と肌の熱が直接重ね合わさり、頭が真っ白になるほどの甘い疼きと色気が、ふたりの身体と魂をどこまでも痺れさせていった。
雨の音も、世界の全てすら消え去り、ただ互いの熱と口づけだけに溶けていく夜。
離れることを恐れるように幾度も深く重なり合う舌先と、肌を通じて伝わる狂おしいほどの愛おしさが、二人が越えてきた絶望の記憶を跡形もなく塗り替えていくのだった。
カチリ、と扉が閉まり、外の雨音が遠のく。
辿り着いたのは、倉敷署からほど近い田中のマンションの一室だった。無機質で整理整頓された静かな部屋。明かりが点された室内は、二人きりになった途端、濡れた衣服の重みと、互いの荒い吐息で密やかに満ちていった。
「濡れたな……これで拭け」
「あ……はい……っ」
田中が自身の上着をハンガーにかけ、洗面所から持ってきてくれた大判のバスタオルを受け取る。いづみは雨をぐっしょりと含んだ重い黒ジャケットをそっと脱いでソファーの背へ掛けると、きつく結んでいたヘアゴムを指先で外した。解かれた湿り気のある黒髪が、しなやかに肩から背中へとこぼれ落ちる。
ジャケットを脱いだことで、雨をたっぷり吸って肌にぴったりと張り付いた薄いブラウスが、明るい光の下で隠すものなく露わになった。水分を含んでしっとりと透けた生地越しには、繊細なランジェリーのくっきりとした輪郭や透ける色彩、ウエストのくびれが艶やかに浮き彫りになっている。さらに、髪から伝い落ちる水滴が鎖骨から胸元へと滴り、薄地の布地をいっそう肌へと密着させていた。
いづみは自分でタオルを首元にかけ、湿った首筋や濡れた黒髪を丁寧に拭い始めたが、そのふとした隙のある色っぽい姿を、田中が明るい室内で底知れぬ愛おしさと情熱を宿した瞳でじっと見つめていることに気づき、ほんのりと頬を朱に染めた。
やがて田中はいづみに歩み寄ると、彼女の手からそっとタオルを受け取って傍らに置き、そのまま彼女の細い手首を優しく掴んで引き寄せた。
「あ……田中……先輩……っ」
「もう『先輩』じゃないだろう」
田中はいづみのウエストに腕を回し、ソファーに腰掛けた自分の膝の上へと彼女をそっと引き寄せた。
「あ……っ……」
互いの体温がダイレクトに伝わる至近距離。田中はワイシャツのボタンを少し緩め、熱い吐息をいづみの耳元へ吹きかけた。職場で見せる冷静な生真面目さとは違う、一人の男としての深い色気がその低い声から溢れ出している。
長くて骨太な指先が、濡れて肌に張り付いたブラウスのボタンへと添えられた。職場で誰よりも几帳面で生真面目な男の手が、今はいづみを傷つけないよう、壊れ物を扱うようにかすかに震えている。
ボタンがひとつ、またひとつと解かれ、濡れた生地が左右へと押し開かれる。雨をたっぷり含んで透けたブラウスの下から現れたのは、繊細な黒レースのブラジャーだった。
「今日まで……よく俺の隣で耐えてくれたな、いづみ」
「ん……っ……た、健人さん……っ」
初めて口にした彼の名前。照れと歓びで顔を真っ赤にするいづみの唇を、健人は逃がすことなく深く、濃厚に塞いだ。
何度重ねても足りないほどの熱い口づけの最中、健人の手が背中へと回り、ホックが外される。肩紐が滑り落ち、ブラウスと共にブラジャーが床へと投げ捨てられると、いづみの上半身が煌々と照らす明かりの下に、素肌のまま晒された。
「……っ」
健人はふっと息を呑み、キスを止めて少しだけ身を引いた。そして、瞬きすら忘れたような熱を帯びた瞳で、初めて露わになったいづみの胸の全貌をじっくりとなぞり始めた。
ウエストのくびれから続く、ふっくらとした双丘の滑らかな曲線。引き締まったしなやかな身体の中で、そこだけが圧倒的に柔らかく女性らしいボリュームを持ち、重力に逆らうように瑞々しい張りを見せている。
明るい光が、きめ細かく真っ白な素肌と、彼の口づけで上気してほんのりと朱に染まった胸元の艶やかさを、影ひとつなく浮き彫りにしていた。
そして健人の視線は、柔らかなふたつの膨らみの中央へと吸い寄せられていく。
抜けるように白い素肌の上にふわりと浮かんでいたのは、淡く透き通るような薄桃色の輪だった。まるで薄紅を刷いたように控えめで品のいいその輪の中心には、鮮やかで愛らしい桜色をした小さな頂が、ちょこんと顔を覗かせている。
これまで分厚い生地と真面目なスーツの奥に隠され、誰の目にも触れることのなかった未成熟な蕾。それが今、大好きな彼の熱烈な視線を直接浴び、外気に触れたことで、まるで彼に応えるかのようにゆっくりと熱を帯び、健人の目の前でみるみるキュッと硬く尖り始めていく。
自身のデリケートな部分が、形から色、そして艶めかしい変化に至るまで、明るい光の下でじっくりと観察される圧倒的な羞恥。
「……こんなに綺麗だったのか……」
健人の低い声が、感嘆の深い吐息とともにこぼれ落ちる。
「健人さん……っ、そんなにじっと見つめられたら、恥ずかしくて……っ」
いづみが真っ赤になって両手で胸元を覆い隠そうとした瞬間、健人はその細い手首を優しく掴んで引き剥がし、再び露わになった柔らかな膨らみごと、己の骨太な掌で愛おしそうに包み込んだ。
「隠すな。……全部、俺に見せろ」
生地を隔てないダイレクトな体温と、指の腹で微かな刺激を与えながら焦らすように転がされる感覚に、いづみは背筋を甘く痺れさせて身体を弓なりにしならせた。
「っ……ふぁ……っ! け…あ……っ」
上半身の至る所へ吸い付くようなキスを落とされ、じっくりと胸元を愛で尽くされる。いづみの身体が熱く溶けきった頃、健人の手が彼女の腰元へと滑り降りた。
濡れて重くなった黒パンツスーツのホックに指がかけられ、ゆっくりとファスナーが下ろされる。
開かれたファスナーの隙間から、骨太な手をそっと内側へと滑り込ませた。
「あっ……んっ……健人、さん……っ」
健人の手がスラックスの下へと忍び込み、下着のクロッチ部分へとゆっくり懸命に這い上がる。そして、冷たく湿ったレース越しに、密やかな熱の膨らみを優しく撫でさすった。直接肌には触れず、薄い布一枚を隔てて秘所を的確になぞる指使いに、いづみは背筋を甘く痺れさせて身をよじる。
「ああっ……ん、そこ……っ」
雨の水分とは明らかに違う、とろりとした温かく粘り気のある蜜。それが自身の最も過敏な場所からとめどなく溢れ出し、下着の繊維をさらに滑らかに、ぐじゅりと満たしているのを、健人は手探りで確かに感じ取った。
「……雨に濡れてるだけじゃないな」
「っ!」
「ここだけ、すごく熱くて……」
「ああっ、言わないで……っ! 恥ずかしい……っ」
布越しに自身の淫らな状態を的確に暴かれ、いづみは羞恥で顔から火が出そうになる。
そんな彼女の反応を楽しむかのように短く喉を鳴らすと、健人は雨を吸った重いスラックスに手をかけ、いづみの滑らかな長い素脚を伝わせて静かに床へと脱ぎ捨てた。
スラックスの下から露わになったのは、ブラとお揃いの繊細な黒レースのショーツだった。
雨に濡れた生地が、引き締まった下腹部から太ももの付け根にかけて、艶かしく肌にぴったりと張り付いている。そして先ほど健人が触れた通り、クロッチの部分だけが溢れ出した蜜によってひときわ濃い色に沈んでいた。
全身が冷たい雨に濡れているはずなのに、完全に熟れきったその柔らかな中心からだけは、仄かな湯気が立ち上りそうなほどの熱と甘い匂いが放たれている。
普段の職場で着ている堅苦しいスーツからは想像もつかないその淫らな姿に、健人は熱を帯びた瞳で見惚れ、その全貌へ視線を這わせた。
やがて健人の骨太な指が、蜜で濃く沈んだレースの表面を、その奥の柔らかなふくらみを確かめるようにゆっくりとなぞる。
「………熱く濡れたお前のここが、綺麗で」
「あっ……ん……っ、健人さん……見ないで……っ」
いやらしいほど濡れそぼった下着姿を明るい光の下で隅々まで晒され、いづみは羞恥と快感に耐えきれず、健人の広い肩にしがみついて切ない甘声を漏らした。
これ以上は自分も理性が持たないと悟ったのか。ふいに健人は愛撫の手を止めると、ひょいと軽々しい動作でいづみの身体を抱き上げた。逞しい腕にすっぽりと包み込まれ、いづみは小さく「あっ」と声を漏らす。
健人は彼女を胸に抱いたまま静かな寝室へと歩みを進め、ふわりとベッドのシーツの上へといづみを下ろした。
カーテン越しに差し込む淡い月光と街灯りだけが照らす、薄暗い寝室。
いづみを包み込むようにベッドへ覆い被さった健人は、そのまま残された最後の障害物である濡れたショーツに手をかけ、滑り落とすように引き抜いてシーツの端へと投げ捨てた。
全裸となったいづみの白く無垢な素肌。健人の熱を帯びた視線は、真っ直ぐに彼女の最も秘めやかな場所へと注がれた。
「……っ、あ……見ないで……っ」
いづみが羞恥に耐えかねて太ももを閉じようとするが、健人の骨太な手がそれを許さず、ゆっくりと左右に押し開く。
薄明かりの中でもはっきりと分かるほど、そこは恥じらいと熱情でほんのりと赤く色づいていた。先ほど布越しに感じていた通り、いや、それ以上に――彼女の奥からは透明で熱い蜜がとろとろと溢れ出し、柔らかな花びらを艶やかに濡らして光を反射している。
「こんなに……欲しかったのか」
「ああっ……ちが、ちがうの……っ、そんなに見られ、たら……っ」
健人の長い指が、蜜に濡れた柔らかなひだをそっと押し広げ、最も過敏な中心を優しく、けれどねっとりと撫で上げた。指先が絡みつくたびに微かな水音が寝室に響き、いづみの身体が快感でビクンと跳ねる。
自身を強く求め、完全に自分へと絆されて熱く熟れきっている彼女の姿。その圧倒的な事実が、健人の中から「普段の生真面目な先輩」という理性を完全に吹き飛ばした。
「いづみ……お前は、俺だけのものだ」
抑えきれない独占欲を剥き出しにした低い声とともに、健人は覆い被さるようにいづみを抱きすくめ、首筋から鎖骨の窪みへと熱い唇を這わせた。
「あっ……んっ……健人、さんっ、ああっ……」
少し痛みを感じるほど強く吸い付いては、甘噛みして赤い痕を刻み込んでいく。
真っ白なキャンバスを自らの色で染め上げるように、胸の谷間やお腹、さらには太ももの内側にまで。明日になれば赤黒いあざとなって確実に残るであろう強烈な「所有の印」が、次々と容赦なく肌へ焼き付けられていく。いづみはそのたびに痛みに身を捩りながらも、彼に全身を支配される圧倒的な歓喜に打ち震え、切ない甘声を上げ続けた。
やがて、骨太な指先が再び、完全に濡れそぼった密やかな熱の境界線へと滑り込む。
「健人さん……っ! もう、私……っ」
「……痛かったら言え」
低い掠れ声とともに、健人の圧倒的な熱量が、いづみの最も柔らかな奥深くへとゆっくりと、だが力強く押し入ってくる。
(あっ……う……っ)
健人を初めて受け入れる極度の緊張と、彼の規格外の質量。まるで彼だけを待ちわびていたかのように固く蕾んでいた場所が、奥の奥まで容赦なく押し広げられていく。内壁がひりつくような強烈な違和感と甘い痛みが、いづみの脳髄を鋭く突き抜けた。
あまりの大きさと充満感にいづみが呼吸を止めてシーツを握りしめると、健人は彼女の額に滲んだ汗にキスを落とし、いづみが痛みに慣れるまで優しくじっと待ってくれた。
その慈しむような体温に触れた瞬間、「大好きな彼と完全に一つになった」という圧倒的な充足感が、すべての痛みを極上の快感へと塗り替えていく。
「ああっ……ん……っっ……奥、すごい……っ」
「……っ、いづみ……っ!」
彼女の緊張が解けたのを悟った瞬間、健人はタガが外れたように、その熱い奥底へと激しく打ち込み始めた。
打ち付けられるたびに身体の芯を貫くような質量と、痺れるような快感が、いづみの理性を白く焼き尽くしていく。
「ああっ、健人さんっ、くるっ、ああっ……!」
限界を告げる甲高い悲鳴のような甘声とともに、いづみの身体は激しく弓なりに跳ねた。脳髄が弾け飛ぶほどの強烈な絶頂。最も過敏な奥の奥が歓喜に震え、彼をぎゅっと締め付ける。それと同時に、健人もまた低く荒々しい唸り声を上げ、いづみの最深部へと、熱く濃密な己のすべてを深く、深く打ち込んだ。
「はあっ……ああっ……んっ……」
激しい絶頂の余韻のなか、いづみはシーツへと崩れ落ちた。
頭の先から足の指までが甘く痺れ、もう指一本動かす気力すらない。熱く火照った身体は、波打つように微かな痙攣を繰り返している。
そんな彼女を労わるように、健人はゆっくりと熱い繋がりを解き、己の重さを横へと逃がした。
その瞬間、最も奥深くに注ぎ込まれていた彼の圧倒的な熱量が、受け止めきれなかった濃密な証となって、柔らかな隙間からとろりと熱を帯びて零れ落ちていく。
(あ……健人さんこんなに……っ)
自身の最深部から溢れ出す生々しい感覚が、「彼と完全に一つになったのだ」という事実を、これ以上ないほど強烈に実感させる。放心した瞳からは、圧倒的な幸福感による涙が一筋、ツーッと頬を伝い落ちた。
健人は決してその温もりを離すことなく、腕の中にいづみをすっぽりと抱き込んだ。
「泣いてるのか……痛かったか?」
先ほどまでの獣のような激情が嘘のように、耳元に落ちる声は甘く、どこまでも優しい。健人の大きな手が、汗ばんだいづみの黒髪をそっと梳き、目尻に浮かんだ涙を愛おしそうに唇で吸い取っていく。
「違うの……痛いんじゃなくて……幸せすぎて……っ」
いづみは健人の逞しい胸にすり寄ると、その力強い鼓動にそっと頬を寄せた。
(健人さんの匂い、大きな手、私を包み込む優しい温もり……全部、全部本物なんだ……)
一人で胸を焦がし、妄想の中でしか触れられなかった彼が、今はこうして自分を世界で一番大切なもののように抱きしめてくれている。
満たされた身体の奥で脈打つ彼の熱量も、全身に刻み込まれて微かにヒリつく「所有の印」も、すべてが健人と結ばれた揺るぎない証だった。心細かった片想いの時間が報われ、自分が完全に彼のものになれたという圧倒的な充足感が、いづみの心をぽかぽかと温めていく。
「俺もだ。……もうお前を手放せる気がしない」
健人の骨太な腕がいづみの背中を包み込み、安心させるように一定のリズムでトントンと優しく叩き始める。その心地よい振動と、彼から伝わる雄々しくも優しい体温に包まれながら、いづみの意識は深い微睡みへと誘われていく。
窓の外の雨音は、いつしか静かな子守唄のように優しく響いていた。
(明日も、明後日も……ずっとこの人の腕の中で目を覚ますんだ……)
絶対に消えることのない愛の証を全身に刻み込まれた幸福感の中、いづみは健人の胸に顔を埋めたまま、深く、安らかな眠りへと落ちていった。
第9話をお読みいただき、本当にありがとうございました! 鳥居の自決と隠蔽による失意の中、夜風の丘でついに明かされた「タイムループの全真実」と「真実の愛」!
職場でのバディとしての適正な立ち振る舞いから、夜雨の訪れとともに自然に導かれた田中の部屋での甘く濃密な誓いの夜――。 二人の魂が完全に結ばれる情熱と色気を感じていただけましたら幸いです。
次回第10話は、いよいよ第1部(時をかける誓い編)の完結編**『【2周目:二人跳躍】阿智神社での誓いと、3周目の朝へ』**をお届けいたします! 愛の完全覚醒を受けた賢者猫ソクラテスが提示する「50%の二人時空跳躍」。 ふたりが手を取り合って飛び込む3周目の物語を、どうぞお楽しみにお待ちください!
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