プロローグ
物心ついた時から、私たちは一緒だった。
同じ日、同じ夜に修道院の前に置かれていたらしい。
私と、あの子。
見た目も違う、性格も違う。
好きなものも違えば、能力も違う。
あの子がぽかぽかなお日様なら、私はお月様。
本来なら仲良くなることもない、相容れない二人だったかもしれない。
それでも私たちは姉妹で、家族だった。
町へ物乞いに行く時。
散歩に行く時。
ピクニックに行く時。
二人の手はずっと繋がっていた。
いつも、あの子の方から手を繋いできた気がする。
あの子の前では、私の調子は崩れる。
大人の前であるべき私の仮面が、剥がれてしまう。
それでも、よかったの。
いつも。
いつまでもあの子がいれば。
私は笑えた。
戦時中の修道院はいつもお金がなかった。
ご飯が出ない日もある。
そんな日でも彼女はお腹を一番大きく鳴らせるのだと笑っていた。
私はこんな生活も好きだった。
でも、みんなで幸せになりたかった。
シスターも、あの子も、他の子たちも、私自身も。
みんなで幸せになるために、私は頑張った。
祝詞から言葉を覚えた。
聖書から文字を覚えた。
尖った石を拾って土に数字を書いた。
私の努力に降参した神父が、信徒の教師を度々呼んでくれた。
でも、すごかったのはあの子だった。
あの子の好奇心は本物だった。
どんなことも、私では思いつかないような着眼点から答えを導く。
本当の天才だった。
私も負けたくなかった。
努力をして、ようやくあの子と一緒だった。
でも、一人でみんなを引っ張るのではなく、二人でみんなのために頑張れるのなら――。
こんなに嬉しいことはなかった。
花集めをした春も。
水遊びをした夏も。
冬備えをした秋も。
寒さに耐えた冬も。
あの子と二人でならいれた。
だから神様――二人を、離さないで。




