13
あれから数日。
毎日翼を動かしたり、空を飛んだりする修行を続けた。
翼を利き手のように動かせるようになり、ようやく安定して飛べるようになったある日。
「よし、そろそろ飛ぶ修行をやめて力を使う修行をしようか」
そう言いながらエルはいつの間にか用意していた的を持って来ていた。
「前も見たけど、君は力の威力はあるけど制御が出来てない感じだったからね。観測者個々の能力を使うにしても基本の力は重要だからね」
そう言うとエルは突然猟銃のような物をどこからか取り出した。
「エル、その銃どこから出したの?」
「あれ、まだ話した事無かったっけ。これが私の能力で、物を創り出す能力なんだ。凄そうに感じるけど、細部まで想像しないといけないから、私は狩りの時に使う銃くらいしか作れないんだけどね」
エルはそう言い、銃を構えた
「私は猟銃を使って力を使うのが1番得意だから使うけど、君は多分何も使わない方がいいと思うよ。さぁしっかり見といてね」
そう言うと銃から出た一閃の光のようなものが見えた次の瞬間、的には綺麗な丸い穴が開いていた。
エルは少し悔しそうな顔をして銃を下ろした
「真ん中より少し外してしまったね。まぁ目標は的に私と同じような穴を開けることにしようか。」
「流石に私はあそこまで綺麗な穴を開けるのは無理だと思うんだけど…」
「私は長い期間狩りとかで使ってるからね。あそこまで綺麗じゃなくてもいいから、ひとまず的を壊さず穴を開けることを目標にしよう。さ、物は試しだ」
そう言いながら私はエルに押され、的の正面に来た。
一度深呼吸をして右手を的に向け、狙いを定める…
次の瞬間、的の中心に綺麗な丸い穴が開いていた。
自分でも何故だか分からないが、前より格段に力の制御ができていた。
「エル!これ!」
とエルに話しかけるとエルは戸惑いながら
「あ、あぁ…」
と言葉に詰まっているような反応だった。
「そしたら、的を新しいのに変えようか。ついでに今度は的の数を増やしてみよう。」
「分かった、そしたら私は的を取ってくるね」
「あぁ、頼むよ」
と話した後的の置いてある場所へ行き、的を持ってエルの方を振り向いた瞬間、エルの近くの地面に赤い槍のようなものが刺さっていた。
「チッ…外したか…」
そんな声が空から聞こえてきた。
「逃げろ!こいつが初代だ!」
私が地面の槍が消えた事に気付くと同時に、エルは銃を使い初代に攻撃を仕掛けた。私も初代に向かい力を使い攻撃を仕掛けた。
だが赤い壁のような物が現れ防がれた…
「初代は自分の血を生み出し、操る。今の私達じゃ敵わない!君だけでも逃げろ!」
エルが今までに見た事がないくらい必死に叫びながら銃を打つ。笑顔も消えた。
「で、でも私が逃げたらエルが!」
そう言いエルに近付こうとした瞬間、初代が笑いながら
「間抜けな弟子を取ったようだなエルよ」
とエルに語りかけた。それに対し、エルは攻撃しつつも怒気を孕んだ声で
「たしかに弟子は取ったが間抜けな弟子を取った覚えは無い!」
と反論した、そして続けて
「時間が無いから一度しか言わない覚えてくれ!」
と今度は私に向かって話しかける
「こいつは自分の血を生み出し操る事が出来る、だから血が尽きる事もない。簡単に言えば最強の矛と盾となりうる、だがどちらかに勝る強さを得られればこいつに勝てる!」
そう言い終わろうとした時初代が合わせて
「最強の矛と盾、2つが同時に存在することは出来ない。だが矛と盾が一対の俺に勝るものはない!」
そう言い更にエルに攻撃を仕掛けるがそれをいなしつつエルは
「さぁ!私が時間を稼ぐから君は今のうちに逃げてくれ」
「で、でも…」
「早く!」
私はエルと初代に背を向け走り出す。助走をつけて飛ぼうとしたが飛べない。走って逃げるしかない。きっと今の私の顔は酷い事だろう。
森の中だからだろうか走っても走っても音が良く聞こえてくる。戦闘音、エルと初代の声。
エルとの思い出が…初代の狂ったような笑顔が頭から離れない。
「ははは、あんな奴一人逃がしたところで何になる!」
「さぁね!だが私の弟子はいずれ君に絶望を与えてやるよ!」
「そうかそうか。それは楽しみだなぁ!貴様でも成せなかったからなぁ!はっはっは」
戦闘音はどんどん大きくなる。
それに反してどんどんと声は聞こえなくなってくる。
私は振り返りエルの様子を見たいが、今は少しでも逃げなければいけない。それがエルの…私の唯一の希望なのだから。
空を飛ぼうと何度も試すが上手く飛べない。これが敗北か、これが悲しみか、これが絶望か…
少し経ち、何とか翼を動かせるようになってきた。そして戦闘音が段々と小さくなっていく。エルが心配だ。だが心配だからこそ少しでも私は逃げなければいけない…私がエルの希望なのだから。
すると急に戦闘音がパタリと聞こえなくなった…離れたからと言ってこんな急に音が聞こえなくなるわけは無い。私は既に近くに初代が迫っている可能性も考えすぐ攻撃を出来るようにして、走りながら振り返る。
だが見えた景色は私の予想に反するものであり…受け入れ難いものであった…




