12 初めの一歩
次の瞬間私は空を飛んでいた。
顔を伝う風が心地よく気持ちいい。心臓の鼓動もまだ飛び跳ねるように早い。周りの景色も速い…ん?
「あ、着地の事考えてなかった。」
次にある記憶では私はベッドに横になり、エルが心配そうに見ていた。
なんか前にもこんな事あったな
「ようやく起きたか、良かったよ。」
とホッとしたようにエルは私に話しかける。エルに話を聞くと、どうやら私はあの後どんどん加速していき、かなり速く木にぶつかり、そのまま地面に落ちたらしい。
そして私は日が沈んでも尚、目が覚めなかったらしい、今はもう朝に近い時間らしい。
「一応成功したけど…まさかあんなにスピードが出てしまうとは、ごめんよ。」
珍しくエルが笑わずにしょんぼりとしている
「いやいや、エルのせいじゃないよ。私も全く気付いてなかったし…やってみて失敗を知れたからいいじゃないか。」
「そうかい?」
「そうそう、それに失敗は成功の母だよ」
「まぁ、なんにせよ君が目覚めて良かったよ。明日…
いや、もう今日か。今日は修行はせずに大人しくしておいた方がいいよ。私も少し休むね」
そう言い残しエルは部屋を出て行った。
そして私は少し起き上がり少しだけ翼を動かしてみる。
「良かった、動かせた」
一通り翼を見てみていると何やら跡がある事に気づいた。怪我…ではなさそうだな、多分エルが何かしてくれたんだろう。私はその後一通り体の様子を見て再度眠りについた。
次に目が覚めたのは昼前だった。何かいい匂いがする、部屋から出てみると小屋の中にエルは居なかった。そして匂いも外から来ているようだ、外に出ると少し離れた昨日焚き火をしていた場所でエルが何やら箱を見ていた、箱からは煙が出ている。その時エルがこちらに気付いた
「おはよー、と言ってももう昼だけどね」
既に昨日しょんぼりしていたエルでは無く、いつもの笑顔のエルだった。
「おはようエル。それ、なんで箱から煙が出てるの?」
「あぁ、これかい?これはね昨日取ってきた肉を燻製してるんだ。干し肉にしてもいいけど私は燻製の方が好きでね。もう少ししたら出来るから待っててね」
私はエルの横に座り、エルと一緒に燻製している箱を眺めた。いい匂い、気持ちいい風、小鳥のさえずり。至福とはこの事か。気持ちがよくて少しボーッとしていると
「ふふ、気持ちいいだろう?私もたまに燻製している時近くで昼寝したりするんだ、気持ちいいよ」
「それは最高だろうね、昼寝したい所だけど今ここで寝ると1日中眠りそうだよ」
と話した後は二人で静かに燻製している箱を眺めた。静かに、ただ時が過ぎるのを待つように。
少しうとうとしてきた頃
「よし、そろそろ完成かな」
と言いながら、エルが箱を開けると一気にいい匂いが香ってきた。エルは燻製した肉を2つ取り
「ほら温かい内がいちばん美味しいから食べてみて、熱いから気を付けてね」
と肉を渡してきた。
確かに熱かったがそれ以上に美味しい。
「エル!燻製した肉美味しいね!」
と言うとエルは誇らしげに
「そうだろう、そうだろう」
とうん、うん、と頷きながら更に肉を渡してくれた。ありがとうエル、だけどこれは流石に多いよ…
その後お腹いっぱいになり少し休んでから少しずつ体を動かしてみた。
(昨日よりも体も翼も軽く感じる…もしかして今なら)
そう思ったのは何故だろうか、だが今の私は飛べるという自信があった。
「エル、私今なら飛べそう」
「え、あ、頭でも打ってたかい?…」
「いや、なんか今日は体が軽いんだ、今なら行ける気がする。お願い試させて!」
エルは少し悩んでいたが
「分かった、ただし無理はしないでね」
そして私とエルは翼を動かす練習をしていた少し開けた場所へ向かった。
「いいかい?何回も言うけど絶対無茶はしちゃダメだよ?」
とエルは向かう時私に何度も言ってきた。ここまで心配性になってしまったのは私のせいもあるんだろうか…
そして少しづつ翼を動かしてみる。うん、行けそうだ。私は少し離れた場所で見ているエルに
「やってみる」
と伝えた。エルは
「飛んだとしても、木の上辺りまでだよ?」
まだずっと心配をしている…
そんなエルを視界の傍らに入れつつ、私は少しづつ翼を羽ばたかせ始めた。するとしばらく羽ばたき続け、ようやく少しだがふわっと体が飛んだ。これは行ける!と思い更に羽ばたく力を強くしていった。
私は飛んだ。
まさかほんとに飛べるとは…まだ気を抜けばバランスを崩してしまいそうだが、エルの方を見ると笑顔でこちらを見て
「すごいすごい!あ、こっちを見なくていいから気を付けて!」
それからゆっくりと上へ上がって行った。そして木の上の高さまで来た、瞬間何か一瞬冷たい視線のようなものを感じた。一瞬そちらに気を取られたせいで私はバランスを崩し又落ちかけたが、今回はギリギリの所で何とか落ちずに耐えることができた。
地面に着地するとどっと疲れが出てきた。
「ごめんエル少し休むね。」
そうエルに告げ私は地面に横になり、少し眠る事にした。
「ようやく飛んだか…」
どこからかそんな声が聞こえた気がしたが…私は気にもとめずそのまま眠りについた




