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私は観測者  作者: ラム肉
束の間の日常
13/19

11 空へ

あれから暫くして、翼全体をゆっくりと動かせるようになった。だが、思いのままに操ったり、飛ぶ事はまだ夢のまた夢だ。まだまだと張り切っていると、エルに声を掛けられた


「おーい。あ、やっと気づいた?さっきから何度か声をかけてるのに集中してて気づいてくれないんだもん。エルさん泣いちゃうぞ」


そう言われて辺りを見ると、既に日が沈みきりかけていた。


「ごめん、全く気づいていなかった。もうこんな時間になっていたなんて」


「あははっ。いいんじゃない?それだけ集中してたって事だ、偉いぞー」


そう言いながらエルは私の頭を撫でてきた。少し力が強く痛いが悪くはない。


「そしたらそろそろ小屋に戻って夜ご飯にしようじゃないか」


エルは小屋に指をさしながらそう言うと、踵を返して小屋へと向かった。私もその後を追い小屋へ向かった。


小屋へ着くと既に食事が机に並んでいた。どうやら私が集中していて気付いていない間に、エルが準備してくれていたらしい。私はエルに続いて手を洗い、席につき食事を始めた。

食べてる間は静かな時間が流れたが、食べ終わる頃には自然と会話が始まっていた。


「さて、どうだい?空は飛べそうになってきた?」


と、エルは子供のようにキラキラした目で聞いてきた。


「どうだろう、動かせるようにはなったけど私も正直分からない。まぁピクピクよりは進んだよ」


「もーそれは私が悪かったって、許してよー」


等と他愛も無い会話をしつつ夜の闇は深まり、私は眠りについた。


うぅーん眠い…もう朝だけど、やっぱりもう少しだけ…と二度寝しようとしているとエルが起こしに来た。


「おーい、もう朝だよ二度寝せずに起きなー」


何故バレた


「もうちょっと、もうちょっとだけぇ…」


「全く、仕方ないなぁ。もうちょっとってどれくらいだい?」


エルは呆れたようにそう言った


「日が沈むまでぇ…」


「起きなさい」


「はい」


私は強制的に起こされた。が、眠い反面頭と体はとてもスッキリとしていた。


「今日の目標は、昨日失敗した滑空が出来るようになるところまでにしようか」


「まだ翼も思うように動かせないし、出来るかな…」


「大丈夫滑空ならあまり翼を動かす必要も無いしきっとうまくいくよ」


飛び方を考えながら食事を済ませ外に出ると、エルは昨日私が修行していた場所の逆方向へと向かった。


「あれ?今日はこっちじゃないの?」


「ん?あぁごめんごめん。今日私は昼になるまで動物を狩りに行ってくるよ。食い扶持も増えたし、そろそろ肉が無くなりそうだからね」


そう言ってエルは冗談っぽく笑い、私達は別れた。

さて、エルが帰ってくるまで私は翼を安定して動かせるように練習しようと思う。今のままだと飛んでもバランスを崩して落ちるだけだろう。そう考え私は練習を始めた。だが思っていたよりも難しく、中々進展が無い。翼を動かせても思うように翼の位置や形を維持出来ないのだ。

自分の翼と暫く格闘していると、不意に声をかけられ、声の方向を見るとエルが立っていた。そしてエルに状況を説明すると助言をくれた。


「無理に同じ形で固定しなくてもいいんじゃないかい?落ちない程度に翼を動かしてバランスを保つ方が飛ぶ時役に立つんじゃないかな?」


目から鱗だった。確かに私の目標はあくまで滑空では無く、空を鳥のように飛ぶ事だ。滑空は空への道標の1つでしかない。


「ありがとう!それなら出来る気がするよ」


「なら良かったよ、私はもう少し狩りをするから頑張ってね」


そう言い残しエルはまた狩りへと戻って行き、私は修行を再開した。

昼になる頃には何とか翼を思うように動かせるようになってきた。思うようにと言ってもゆっくり動かせる程度だ。だが、滑空をするには十分だろう。そう思い私は昨日滑空に失敗した高台を見据え、空を眺めた。

その頃ようやくエルが戻ってきた。


「今日の昼はシンプルに狩ってきたばかりの肉と山菜炒めにしようか」


エルはニコッとしながらそう話し、準備を始めた。


「あ、私も手伝うよ」


そう言いながら修行を中断し近付くと


「それなら今日の昼は焚き火で作ろうと思うから、肉の準備をしている間にそこら辺の森で枝とかを集めてくれるかい?」


「分かった、集めてくるよ」


そう返事をし集めに行こうとしたところ


「あ、そうそう出来るだけ見た目に対して軽い物を集めてね。重いと水分を吸ってるって事だから火が付きにくいんだ」


と言い笑顔で手を振りながらエルは私を見送った。

少しの間枝を集め両手で持てなくなってきたので1度戻るとエルは肉を横に置き、座りながら何やらいつもと違う雰囲気で笑っていた。だが私に気付くといつものエルの笑顔に戻っていた。

肉が焼けるのを待つ間エルが


「どう?滑空はもうできそう?」


と聞いてきた


「まだ分からない、けどやってみたい!」


と答えるとエルは笑いながら


「いいね、その心意気私は好きだよ。そしたら食べ終わったら早速昨日と同じ高台に行って試してみようか」


私は正直まだまだ不安もあった。だが、エルのその言葉に決心し、エルの目を見て頷いた。


そして高台に来たが、やはり少し怖い。昨日の失敗のせいだろうか。あと一歩踏み出せば飛べるだろう。だが、そのあと一歩が出ない。決心が出来ず止まっていると。


「大丈夫、失敗したっていいんだよ。今日出来なければ明日挑戦すればいい、明日出来なかったら明後日挑戦すればいいんだ」


エルなりの励ましだろう。成功すると言って欲しかったところだが…

私は目を閉じて風を感じ…空を感じた。

そして一度深く深呼吸をして、一歩を踏み出した。

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