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恒星間艦隊vs魔法王国 −2つの文明の相克−  作者: 林海


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第26話 金(レアメタル)と魔素の調達


 王は1つ息を吐き、さらに言を続ける。

「大将軍フィリベールに確認する。

 敵が放ち、飛竜旅団の偵察をした空を飛ぶからくりは、その後どうなった?」

「飛竜旅団がアニバールを飛び立ちしのち、ことごとく自ら海中に没しました」

「召喚術で回収できるか?」

「魔法省の力を借り、召喚できるのであれば。

 ただ、天眼の術のアベル殿も将軍府に詰めたきりで、もう何日も寝ておりませぬ。治癒魔法(ヒーリング)の重ね掛けにも限界がありまするし、その効力が切れた瞬間に、頓死するやもしれず……」

 治癒魔法(ヒーリング)は、無から有を生じさせているのではない。その人間の本来あるべき姿を取り戻させているに過ぎない。なので、自ずから限界があった。

 もちろん老衰には効かないし、そもそも治癒魔法(ヒーリング)を掛けておけば、1年も2年もぶっ続けで働けるような都合の良いものであるはずがない。



 王もそれは十分にわかっている。

「アベルを失わないための、惑星全土の魔術師の一元管理ぞ。

 外務省ラウル、魔法省フォスティーヌに命じる。

 セビエは惑星全土の魔術師と、魔素の吸集・反射炉の一元管理の利用協定に前向きである。早速に、セビエの天眼通の魔術師に協力を求めよ。

 見返りとして、海中から引き上げた空を飛ぶからくりの1つを与えよう。

 このからくりの存在自体、他国はまだ知らぬはず」

「ははっ」

 2人の返事が重なった。



「飛竜旅団の偵察をした空を飛ぶからくり、10個という数があるからな。この餌は他国との取引材料になろう。1つはゼルンバスで確保するにしても、9か国と協力関係を結ぶ(よすが)となろう。

 敵の武力の一端を、連合に属する各国の魔法省で分析し、その結果を共有するのだ。これは敵の技を知ることができる契機になるとともに、莫大な富を生むきっかけともなろう。

 そしてもう1つ。

 この協定により、天眼通の魔術師を各国ごとに継走させることで、どの国でも使い潰さぬようにできると伝えい」

「御意」

 ラウルとフォスティーヌが応える。


「とにかく、可及的速やかにこの構想を実現し、アベルを休ませることだ。

 次に、内務省マリエット。

 このことにつき、魔法省の解明は当たり前のこととして、それとは別に都のからくり師に当たりをつけ、回収せし空を飛ぶからくりについて意見を求めよ。

 わかりしことは、すぐに将軍府に伝えい」

「御意」

 再び、2人の長の返事が重なった。



「これは必ず、次の大岩の落下、さらには敵の別の攻撃手段の解明に役立つはず。

 さらにもう1つ、これは、できたらでよい。

 アニバールの王族は根絶やしにしたが、王宮にいなかった魔術師と、魔素の吸集・反射炉については手つかずである。これをゼルンバスの魔法省の管理の下に置きたい。

 これも方法は問わぬ。

 急げ」

 フォスティーヌは、一揖して答える。


「これについては、将軍府より、幾許(いくばく)かの兵をお借りしたく……」

「大将軍フィリベール」

 王の言葉がけに、フィリベールは応じる。


「フォスティーヌ殿。

 使いたき兵種をお教えください。

 飛竜兵団も帰着している今なら、どのような者でも」

「今のゼルンバスは、深刻な魔素不足の状態にあります。

 アニバールの魔術師たちの抵抗に、直接魔法で対抗しようとすれば、死者も出かねませぬ。

 また、アニバールにあるキャップを無傷で接収できれば、かなりの救いになるのは必定。魔素の吸集・反射炉の管理も考えると、自発的に協力するような誘導が必要となりますゆえ、至らぬ私見ではありますが、宣撫の隊をお借りできればよき手になるかと思い……」

 宣撫とは、被占領地住民への援助や広報で、敵対行動から協力的行動にまでその態度を変えさせることを専門とした工作を言う。

 大抵の場合、侵略する方が数が少ないのだから、このような工作は必須なのだ。


「わかりもうした。

 宣撫および潜入の隊をお貸しいたしましょう。

 ただし、宣撫の者たちは、作戦対象たる魔素のキャップ、吸集・反射炉をよくは知りませぬ。

 敵に知識不足から騙されぬよう、それらに詳しい魔術師の派遣を願いたてまつる。そして、潜入を得意とする者たちは、その魔術師を守る者たちとなりもうそう」

 と大将軍フィリベールは魔法省フォスティーヌに答え、さらに王座に向き直った。


「我が王よ。

 飛竜旅団が、すでにアニバールに対し工作を仕込んでおります。それゆえ、アニバールの内政は大きく揺れておりましょう。

 なので、そこに一石を投じるようなゼルンバス王からの宣言をいただきたい」

「言うてみよ」

 フィリベールは一揖して話しだした。


「ゼルンバスが王宣にて、王族以外のアニバールの民への安全と財産の保障、あえてのアニバールが独立国家であることの保証、ゼルンバスの庇護に入る権利を有することでございます。

 加えてアニバールの王族の勝手なる保身について、この星の全人類に敵となっていたという証をなにかさらに提示できれば、と」

「大将軍フィリベール。

 それだけでは飴が弱かろう。それに加え、魔素の吸集・反射炉の新設を約束しよう」

「そこまでなさいますか?」

 フィリベールの確認に、王は頷いた。


「アニバールの王族の勝手なる保身について、どう証拠を出そうとも、それをどう手に入れたかの一点で、必ず揉めようことは予想できる。

 それを黙らせるには、飴を余計にくれてやるしかあるまい」

「ですが、すでにゼルンバスの国内にそれだけの余裕は……」

 と、これは財務省のパトリスである。


「パトリスよ、まぁ、待て。

 マリエット、すでに我が国では魔素を貯めるキャップのため、金は枯渇していると考えて良いな?」

「御意」

 マリエットの返事は短い。


「では、フィリベールよ。

 宣撫、潜入する者たちに、もう1つ仕事を頼みたい。

 アニバール王室の持つ金の接収、さらにアニバールの民衆の持つ金を手に入れたい。それとの引き換えに、なんらかの利益の供与をせねばなるまいが、今はなにをおいても魔素を扱うための金が必要じゃ」

「御意」

 とは答えたものの、フィリベールの顔は難しいままだ。

 あまりの難題である。さすがにその供与できる利益を、即座に思いつかなかったのだ。

もう一話、魔法側があって、そののちまた宇宙側になります。

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