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恒星間艦隊vs魔法王国 −2つの文明の相克−  作者: 林海


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第25話 王の叱責


 王の指示は続く。

「この先、民に負担を求めることもやむを得まい。

 この星の全王室とも調整の上、戦時税の検討を行なえ。

 ただ、これは事情が事情とはいえ、経済が滞っては戦は成り立たぬゆえ、最小としたい。

 そして、民に税の不公平感を持たせてはならぬ。そのためにこの星の地表に、税徴収から逃げられる場所を作ってはならぬ。そのような者が生じた場合、それはこの星の危機に我欲のために敵を利する者ぞ。ゼルンバス王として、これには死をもって償わせる覚悟がある。各国の王も、これについては倣って欲しいと伝えい」


「今の王命について、具申をお許しいただきたく……」

 これが財務省パトリスの返答である。

 パトリスの意見具申の伺いに対し、王の返答は短い。

「許す」


「それでは……。

 王命には反しまするが、あえて1か所から2か所、税徴収から逃がれられる自治区を残し……」

「みなまで言う必要はない。

 そのようにせよ。

 ただし、収支は、他国の王にも明快に公開せよ」

 王の許しに、パトリスは即座に一礼し、振り向いて書記に指示を出した。


 つまり、こういうことだ。

 タックスヘイブンを1か所から2か所作り、世に蔓延る不正な金をそこに集めるだけ集め、丸ごと接収してしまえとパトリスは考えている。

 本来なら課税できなかった裏経済の金を、課税どころかまるまる奪う徹底した考えに、王は即座に賛同したのだ。いわゆる「お目こぼし」をしてきたのも、これまでということだ。


 だが、そのタックスヘイブンの位置によっては、各王の中に不信が生まれる。その区域を持った国が、密かに総取りしてしまう疑いを抱かれるからだ。だからこその、付け足しの指示である。

 実行に際しては、さらに監査役の派遣申請も必要であろう。


 戦争には、直接の戦費以外の、大量の年金や補償も必要となるものだ。

 これを賄うのに各王とも真剣になろうというものだし、取れるところからは取るという安易な考えに流されれば、誰かが不当に良い思いをするような構造的欠陥も生まれがちとなる。

 そのガス抜きもでき、世を糾すこともできる、一石三鳥なのだ。

 


 王の指示はさらに続く。

「それから、外務省ラウルよ、アニバール制圧後、国家間の有事政軍指揮権協定と、魔素の利用及び魔素の吸集・反射炉の利用協定について命じておいたが、他国からの返答が来ているものはあるか?」

「北のセビエからは、有事政軍指揮権協定については前向きな返答が来ております。ただし、魔術師の協力はともかく、魔素の利用協定についてはネイベン壊滅のために一部の吸集・反射炉を失っており、恒久的自給体制を失ったことから一時保留したいと。

 また、コリタスは、モイーズ伯一行に直接返答したいとのこと。

 その他はまだ返答が来ておりませぬ。さすがに昨日の今日では……」

「ふむ……」

 王は、苛立たしげに顎の下に手をやる。

 ラウルの回答に満足していないのだ。


「海を挟んだ南の国、カリーズからも、なしの礫か?」

「夜明けと同時に、再度書類を……」

手緩(てぬる)い!」

「ははっ」

 王の厳しい声に、ラウルは平身低頭した。


 王の指示は厳しい。

「夜中でも構わぬ。

 ラウルよ、もう一度、カリーズに文書を送付せよ。

 この惑星の危機に協力せぬのなら、力を持って魔素の吸集・反射炉を接収すると伝えよ」

「そこまでの言、カリーズの王を怒らせ、不要な諍いが起きるやもしれず……」

「ラウル、お前はどこを見て仕事をしているのだ?

 今は平時ではない。

 繰り返す。

 即刻、カリーズの王に対し以下のように伝えよ。

『貴国は赤道直下の最も魔素の豊富な国として、この惑星の危機に際し結成された、ゼルンバスの連合に参加するのは聖なる責務である。この危機に際し協力せぬのなら、これは天からの敵を利するものとして、ゼルンバスの力をもって魔素の吸集・反射炉を接収する。

 連合に参加するのであれば、敵を撃退した後、我が国の予算でカリーズ領内に魔素の吸集・反射炉を作り移譲しよう。

 それでもなお返答に迷うようなら、アニバール王族から切り取りし耳の山を送りつけてやるから、念入りに眺めながら自らの行き着く先を考えるが良い』と」

「御意」

 ラウルの顔は蒼白になっている。


 外務省は、平時の外交を司るというイメージが強い。

 外務省の長のラウルも、その意識に引きずられている。なんせ、もう何十年もゼルンバスに戦争はなかったのだ。だが、本来ならば外務省は宣戦布告から始まって終戦協定に至るまで、矢面に立ち続けねばならぬ省なのだ。

 戦争は将軍府が行うからといって、高みの見物を決め込んでいて良いはずがない。本来であれば、戦術の将軍府に対し戦略の外務省として、大局眼をもって調整せねばならぬのだ。


「ラウルよ、外交プロトコルに縛られるな。

 はや、そのような場合ではないことがわからぬか?」

「ははっ」

 そう答えるラウルは、蒼白になった顔色に、さらに冷や汗を滴たらせている。


「惑星全土の魔術師と、魔素の吸集・反射炉を一元管理し、同時に100個の運用を可能ならしめて防壁と成す。

 これを数日中にできねば、この星は滅びる。

 その意味が、わかっておるのか?」

「ははっ、承知しております」

「なら、それを4つ目の大岩が飛来する前に可能としてみせよ。

 そのためなら、すべてのことに優先しての外交を許す。

 我が意、他国の王に余さず伝え、なんとしてもこの星の人間が生き残るようにするのだ」

「ははっ」

 この返事は、各省の長たちも声を揃えた。

 1人で吊るし上げられているように見える、ラウルの立場を救うためである。

 同時にこれは、王に対して追及の手を緩めるよう懇願する意味もあった。

王様があんまりに怒ると、家来は死んじゃいますからねぇ……。

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