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恒星間艦隊vs魔法王国 −2つの文明の相克−  作者: 林海


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第24話 種類より量


「そして2つ目だが、彼らはこちらに対して情報を集める力がある。

 そして、それは魔法に依らない」

「御意」

 王の言葉に、魔法省の長、フォスティーヌが同意した。

 魔法を使えば魔素の流れが変わる。だが、天の魔素の流れに異常が生じていないのは、彼女が一番良く知っている。


「3つ目だが、敵の将は優秀だ。

 情勢の変化に対し、即座に手を打ってきた。

 となると、重大な意味を持つのは、明後日のコリタスに落ちる3つ目の大岩だ。

 ここが騙し合いの最重要な分岐点となるであろう。

 そもそも敵に、大岩を落とす以外の手段がないとは思えぬ。星々の間を旅してきたからには、さまざまな手立てがあるはず。

 それを念頭に、これからの対応を考えねばならぬ。

 まずは、諸卿の思うところを話せ」

 自らの王都が壊滅の危機に瀕しても、王の物言いは冷静である。ただ、いくらかは命令の口調が強くなっただろうか。


 敵の圧倒的優勢の中、アニバールの王族を鏖殺してまで得た、この惑星の指揮権である。有効に使わねばならぬという自覚が王にはあるのだ。



 各省の長たちが、次から次へと口を開いた。

 各自が持っている懸念を共有するためだ。また、絶対王政だからこそ、集団知を汲み上げる仕組みがある。書記官が書き留めるのが追いつかないほどの発言の多さである。


「では、コリタスの街バーニアにおいても、ネイベンと同じく住人の避難だけはしておくのはいかがか?

 こちらの手を見せずに済む。ただ、その避難民のために掛かる費えを、今回はゼルンバスで負担はしきれぬが」

「いや、アニバールでの飛竜旅団のやり遂げしことを偵察しえた敵ぞ。

 ネイベンで住人がすべてに逃げおおせていたことなど、とうに掴んでおろうよ。こちらの手などお見通しで、それが今回の変更にもつながっていると思うが、如何?」

「バーニアで天の大岩を防ぎし場合、ここマルーラに対して確実に落ちるよう敵は対策してくるのではないか?

 やはり、ここはバーニアに犠牲になってもらわねばならぬ」

「いや、そもそもだが……。

 バーニアへの大岩の落下を、魔法によって防ぎうるかの確認をしておかねば、マルーラが本当に守れるかの判断すらできまい」

「今や我が王は、この惑星の王ぞ。

 コリタスへの天の大岩の落下を許した場合、ゼルンバスの王はこの惑星の守護者ではなく、他国を犠牲にしてゼルンバスを守る王だという誤解を招くぞ」

「こうなると5つ目の行き先も不安である。今日明日にもどこに落ちるか大雑把にでもわかるだろうが、それもここマルーラに落ちてくるかもしれぬぞ」

「どちらにせよ、攻撃にこのような手段を取り、一兵たりとも失わずに済まそういうのは、敵が強大かつ軟弱であることの証し」

 どの言葉も、無視できぬ重みがある。

 だが、どの言葉を採り、決断するかは王の責務である。いくら先を読もうが、限界はある。王とは、知略を尽くした上に、多分に運にも恵まれないと務まらぬ。なのに、その運にも責任が生じるものなのだ。



 王は聞くだけ聞いてから、口を開いた。

「魔法省フォスティーヌに問う。

 バーニアで天の大岩を防ぎし場合、敵がこちらに落とす岩に細工をすることも考えられる。

 前に、『ゼルンバス王国の王室のみ可能な術』と申していた術があったな。それをも、これからの日数の中で準備しておくことはできるか?」

「問題ありませぬ」

 フォスティーヌが一揖すると、濡髪の芳しい香りが周囲に漂った。

 各省の長たちは顔には出さないが、誘惑されている者もいるだろう。


「さらに、この場のみのこととして、我が王にお話できることがありまする。

 その『ゼルンバス王国の王室のみ可能な術』、実は2つございます」

 玉座の間でどよめきが起きた。


「他国でできる方法に加え、さらに2つとな」

 王が確認のために繰り返す。

「はい。

 なので、コリタスの都市バーニアへの天の大岩を防ぐことに問題はありませぬ。そして、ここマルーラの守りに対しては、別の手を取ることもできまする」

 魔法省フォスティーヌの言葉に、一時安堵の空気が流れた。


 だが、それに対して異を唱えたのは、王の横に立つ大臣である。

「ただ、2つあること自体は朗報でも、天よりの大岩がこのまま数十、数百にも及んだ場合、術を使い果たすことになるのでは……」


 それに対し答えのはフォスティーヌではなく、財務省のパトリスだった。

「そのご心配はもっともなれど、その先は術の種類ではなく、数の問題ともなりましょう。100の大岩が同時に天より降るとなりますと、術も種類はともかく同じ回数の術の発動が必要となりましょう。

 ですが、魔素を貯めるキャップの生産は、材料の金の確保が難しく、内務省と共に努力しておりますがなかなか思うようにいかず……。

 臣民に金の買い上げに応じるよう求めるとともに、国庫からの予算調整を行い、セビエに対しても使用済みのキャップの返還を求めております」


 そこへ王の声が割り込んだ。

「パトリスよ、そこは重要なことにて、傾いて良いとも言えぬが国庫の支出を惜しむな。王室の財産の切り崩しも覚悟している。

 また、このような常ならぬ場合である。

 内務省マリエットは、国内貴族に戦費出資の依頼を送れ。

 また、それとは別に、軍に対する寄付を募れ。

 まずは御用達商人たちに声を掛けよ。

 他の星との戦争に勝利せば、新たな産物になりうるものがいくらでも手に入る。その分配にありつきたくば、今投資せずしていつするのか、と。

 そして、どこに対してもだが、(かね)より(きん)での納付を進められるよう、格差をつけよ」

「は、早速に」

 マリエットの声がまずは響く。

 昼間であれば固く結い上げている栗色の髪を、今は背中に流している。理知的な紫色の瞳は、この星で最大人口を誇るゼルンバスでもなかなか見られないものだ。


「それに加え……」

 王の指示は続く。

魔法省フォスティーヌ、内務省マリエット、共に美人w

本当はマリエットは眼鏡美人にしたかったけど、近視は魔法で治せちゃうんですよね……

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