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恒星間艦隊vs魔法王国 −2つの文明の相克−  作者: 林海


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第23話 深夜の御前会議


 モイーズ伯は蜂蜜酒の盃をテーブルに置くと、再び話し出した。

「コリタスの3日後は、アニバールに落下の予定だったな。

 あの国も立て続けの災難だの。だが、アニバールへの落下を防げれば、我が王はアニバールの民の守護者と大手を振って名乗れような」

「たしかに、これは災い転じて、でございます。

 アニバールに大岩が落ちるは5日後。

 まだまだ余裕がござい……」

 そう言いながら、ふと天を仰いだクロヴィスの顔が、蒼白になった。

 モイーズ伯はそんなクロヴィスを見、天眼の魔術においても二度見というものがあるのかと、新たな発見をしたような気になった。


「……可怪しい!

 昨日と進路が異なる!」

 立ち上がったクロヴィスの全身は、あまりの衝撃に震えていた。

 冗談1つ言えない、堅物のクロヴィスである。悪ふざけであろうはずもない。

 その場の全員の顔色が変わった。


 そんな中でも、モイーズ伯は真っ先に言葉を絞り出した。

「落ち着け!

 うろたえるな!

 クロヴィス殿、どういうことか説明を」

「4弾目の大岩、ゼルンバスの王都に向かっております!」

「アニバールの征服を見て、作戦を変えたということだな。

 王都にはアベル殿がいるとはいえ、念の為だ。至急、知らせを。また、我らに下された、コリタスに対する命令の変更はありやなしや、それも確認を!」


 モイーズ伯の素早い指示に、レティシアが即座に荷物梱から紙の束を取り出し、ペンを走らせだす。

 用件自体は重大でも、書かねばならぬこと自体は少ない。レティシアがペンを置くまでに、そう時間はかからなかった。


 簡易魔素炉を広げ、右手を挙げて呪文の詠唱を始めたクロヴィスを、レティシアが止めた。

「ことの大きさ、これからのことを考えれば、クロヴィス殿の体内の魔素は残しておいた方が賢明。

 このレティシアが送りましょう」

 そう言われて、クロヴィスは右手を下ろした。


 旅に出てからほとんど喋らず、暗い表情になってしまっていたレティシアが、初めて自ら意志を表したのだ。

 クロヴィスは、それを受け入れねばならぬと感じていた。



 − − − − − − − − − − − − − − − −


 玉座の間にも、緊張が走っていた。

 そもそも、王の支度は寝着のままである。

 

 天からの大岩、4つ目が急遽進路を変えてここ、ゼルンバス首都マルーラに落ちてくる。

 1つ目は、ゼルンバス王国の第二の都市ニウア。

 2つ目は、北の隣国セビエの第二の都市ネイベン。

 3つ目は、西の最果ての国コリタスの第二の都市バーニア。

 4つ目は、おそらくは東の隣国のアニバールの第二の都市カスコ。

 5つ目は、不明。

 これが敵の選択のはずだった。

 なのに、繰り返すが、その4つ目はカスコではなくここマルーラに落ちてくるのだ。


 各岩は、3日ごとに落ちてきていた。昨日ネイベンに落ち、明々後日、バーニアに落ちるはず。つまり、なにもしなければ7日後、ここは50万人の王国民とともに蒸発する。

 天眼の魔術師アベルは、今は常時天を仰いでいた。そして、4つ目の進路変更を確認し、即座に大将軍フィリベールに報告した。

 その報告している最中に、魔術師アベルの弟子のクロヴィスが同道している辺境伯モイーズから手紙が届いた。そこに記されていたのは、アベルの報告とまったく同じこと。


 即座に大将軍フィリベールは各省の長を叩き起こす使者を送り、同時に王をも起こした。

 そして、全員が王宮の玉座の間に集まっていたが、王以外では財務省のパトリスも寝着のままである。魔法省フォスティーヌの髪はまだ濡れたままだ。おそらくは、行水の最中にローブを被ってそのまま出てきたのであろう。

 それぞれの長の後ろに控えた書記たちも、似たようなもので、昼間と同じ隙のない服装をした者はいない有様だ。


 玉座の間は魔素により煌々と明かりが灯され、わずかに残っていたであろう参集者の眠気を吹き飛ばしている。寝ぼけまなこの儀官が眠気覚ましの飲料(コーヴァ)を配るが、その香りを楽しんでいる余裕はない。


 大将軍フィリベールがまずは口を開いた。

「参集理由は使者の口上のとおり。

 想像するに、天の『敵』はアニバール王族の鏖殺の一部始終を見ていた。見るためのからくりについては、天眼の術のアベルが見つけ、飛竜旅団を追ったのを確認している。さらに、飛竜旅団の兵士には見えねども、眼の良い翼竜(ワイバーン)には見えていたらしい。

 今回のここゼルンバス首都マルーラに攻撃が変更されたのは、アニバールを滅ぼしたゼルンバス王をこの惑星の統治者と認め、それに応じて手を打ってきたと考えられよう」

 そう語ったフィリベールだけが、昼間と同じくきちんと髭も剃り、服装を整えていた。

 というより、戦時ということで、フィリベールはそもそも寝ていないのだ。おそらくは、終戦までベッドに入ることもない。


「王の使者としてセビエからコリタスに向かっているモイーズ伯一行からも、同じ報告が上がってきている。

 さらに彼らは、コリタスに落ちる3つ目の大岩への対処について、こちらに計画変更の有無を確認してきている」

 そう続くフィリベールの言葉に、各省の長たちは頷く。

 モイーズ伯一行に、天眼の魔術師アベルの弟子が同行しているのは、説明されるまでもなく皆が知っている。王が各国に手を打っている中で、最大の駒がモイーズ伯一行なのだから。


「まず1つ目だが……」

 王の言葉に、皆が黙って耳を(そばだ)てる。

「今回の大岩の落下が、天然自然の現象ではないことが完全に証明された。

 つまり、敵は確実にいる。

 これは(いくさ)だ。そして、戦である以上、勝たねばならぬ」

「御意」

 フィリベールがそう相槌を打つ。


 同じ惑星の王国同士ですら、戦に負けた時の処置は過酷なものを覚悟しなければならぬ。ましてや、天から飛来した敵からどのような扱いをされるかは、考えるだに恐ろしい。


「2つ目だが……」

 王の言葉は続く。


戦争は勝ってこそ……

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