プロローグ
祭りを終えた聖都はいつもとかわりない日常が戻っていた。大通りは人がひしめき合うことはないが、さすが大都市だけあってそれなりの人通りがあった。
そんな街の片隅でいつも通りに夕飯の買い物に出かけ、井戸端会議をする若い女たちがある噂で盛り上がっていた。
「そういえば、聞いた?神呼様の話」
「聞いた、聞いた。なんか祭りの時に王城に訪れた神呼様に襲いかかったやつがいたとかっていう話でしょう?」
「でもそれ、ただの噂でしょう?」
「そうじゃなかったら、今頃大騒ぎだわ!」
「でも、火のないところに煙は立たないって言うじゃない」
女たちが姦しく語り合う。それは今の聖都のそこかしこでされる噂の一つ。噂元はどこともしれない不確かな情報でも人々の話題に登るのは十分だった。
「でも、実際そんなやからがいたとしてもセント・カルディアーナの護衛兵にかなうわけないわ。それに神呼様自身は凡人にに殺されるなんてありえないもの」
その言葉に違いないと周りも頷く。その様子はただの世間話と同じである。
神呼は役目を終え無い限り死することはないというのが長い歴史の中で生まれた共通の認識だった。
何かしらあったとしてもそれによって神呼が害されるなどとほとんどの者が思っていないがゆえに女たちは楽しそうに語り合う。
真実はどこにあるのか。噂に語られる神呼が今どうしているのか。それを知っているのは当事者ばかり。
噂をする人々がその真実を知ることはない。




