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ナナキとライラ

「お兄ちゃん達大丈夫かな?」


 東のゲートについてからしばらくしてやっと目覚めたライラはぼんやり

と空を見上げながらそう呟いた。


「まぁどうにかなるさ。それより腹がすいたんじゃないか?」


 ナナキがそう問いかけるとライラはお腹に手を当てた。起きたばかりで何も食べていないので当然お腹がすいていた。


「ほらこれ食べな」


 差し出されたのはパンのようなものに何か青いものが包まれていて、ライラにとってはまるで見たことのない食べ物だった。


「初めて見るか?これは旅人の常用食とも言える料理で“モナパン”というんだ。騙されたと思って食べてみな」


 笑顔でをすすめるナナキからモナパンを受け取るとライラはしばらくそれを不思議そうに見つめたあと思い切ってひとくち口に含んでみる。そしてしばらく咀嚼したあと驚い多様な顔をした。


「これ美味しい!」


 そう言ったあとは美味しそうな顔でモナパンを食べ続けた。食べ終わるととても満足げな表情をナナキに向けた。


「ナナキお兄ちゃんにごちそうさま。すごい美味しかった」


「それは良かった」


 素直なライラの反応にナナキは微笑んで彼女の頭を撫でるとさらに嬉しそうな顔をした。どうやら撫でられるのが好きらしい。


 モナパンという食べ物はパンというと普通のようだが中に入っているものは一見すると得体がしれないもので、一回食べてしまえば何度でも食べたくなるが初めて見た人間は大抵食べるのを渋る。ライラは幼いからか素直な性格だからなのかはわからないが、あっさり口にしたのでナナキは少し驚いていた。村を追われたにしては警戒心が薄い。


「モナパンに“パン”ってあのパンだよね?でも中に入ってた青いのってなぁに?」


 食べて美味しいと思ったがそれが何であるかはわからなかったらしい。


「何だと思う?」

 

 ライラの質問に対し逆にナナキが問い返すと静かに考え出し、しばらくしてやっぱりわからないと首を振った。


「正解はキノコだよ。正式名称はアオモナダケで湿気のあるところに良くはえる。この地方は湿度が低いからあまり見かけないだろうけど。」


 そう告げると意外にも思い当たる節があったのかライラはまた驚いたような顔をする。


「お風呂に生えてた!」


「・・・まぁ、生えなくはないだろうけどよく育ったな。湿気とは言っても湯に浸かれば腐ると思うが」


「お風呂の窓に生えたの。院長先生がせっかく生えたんだし色もきれいだからそのままにしておこうって」


 どうやらライラたちがいた孤児院の院長は少しばかり変わり者のようだ。普通屋内にキノコが生えたらそのまま育てたりはしない。非常食としては十分に役立つかもしれないが、とナナキは考えたが鑑賞用に生やしておくという発想はなかなか無いだろう。


「あれ食べられたんだぁ」


 ライラにとっては鑑賞用だったものが実は食べられるもので、しかもとても美味しかったことが驚きだったようである。


「繁殖力が強い上、干せばかなり日持ちもするから旅する人間にとってはかなり重宝する。そのままでもそれなりに食べられるが大抵は自分で取ってその土地の調味料で味付けして持ち歩くんだよ。パンに至ってはどの土地でも手に入るし究極小麦と水さえあれば自分でも作れるから昔からある料理なんだ。ただ旅をしない人間からの知名度は低いけどな」


 ライラは初めて聞く旅の知識にだいぶ興味を持ったようでしきりにこくこくと頷いていた。


「これからちょっと長い旅になるからな。気にあることがあったらすぐ聞くといい。イヴも聞けば大抵答えてくれると思うから」


 会って昨日の今日ですでに癖になっているかのようにナナキはライラの頭を撫でるとライラの元気な返事が返ってきた。


 そしてその後はイヴたちが帰ってくるのを待ちながら、ライラにせがまれてナナキは旅についての豆知識を披露することになったのである。


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