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神戸南京町 祓い屋探偵と憑かれた助手  作者: 水縞しま
第二章 不幸が続く家
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不幸の連鎖

 背筋がヒヤリと冷たくなる。灼は我慢できず、二人に訊ねた。


「し、死んでいく……? 不幸が訪れるっていうのは、一体どういうことなんですか」


 宿の主人が深く息を吐いた。それから、ゆっくりと語り始めた。


「……確か、的形という名前やったな。昔からあの村の長やった一族で、山の麓にも分家がようさんあったんや。集落にある大きな屋敷には代々、的形の当主が暮らしとった。でも、いつの頃からか、的形の当主は長生きできんようになってなぁ」


 民宿があるこの近辺や、さらに川を下った場所にも何軒か的形の家があったらしい。


「たいていが病で亡くなったと聞いとるけど。事故やったり、自分で首をくくったりという話もあった。それで、とうとう本家だけでは維持できんようになって。分家の人間が継いだりもしたんやけど、やっぱりあかんかった。皆、次々と死んでしまうんや」


 分家が的形を継ぐ。継いでは亡くなる。その繰り返しだったらしい。そして、少しずつ的形の分家はその数を減らしていったという。


「集落の人も怖がってしもてねぇ。当初は、疫病ちゃうかという噂があったみたいやけど。的形さんのところにだけ死人が出るもんやから。あれは疫病やなくて、呪いなんやろうって。それで、あのお城みたいな壁をつくったんよ」


 小さな集落には不釣り合いだった。まるで城壁のようだと、灼もあのとき思った。


「……村民からの、要望だったということですか? 屋敷の中に、呪いを閉じ込めるための?」


「ずいぶん昔の話やし、噂で聞いただけやけどね。なんや呪(まじな)い師だか巫女さんだかを村に呼んで、あの壁をこしらえたそうやわ。ちょっと、胡散臭い気もするけどね」


 そう言って、女将が苦笑いする。


「でも、次々と的形の人間が死んでいったのは事実やからね。呪いやと噂されるのも仕方ないと思うわ。……もし、ほんまに呪いなんやったとしたら、的形さんはきっと、ずいぶんひどいことをしたんやろね」 



✤



 話を聞き終え、灼は夜一と一緒に部屋へ向かった。


「不幸が続く家、か。……どう思う?」


「的形の人たちが、次々と亡くなったのは事実やし。実際にあの家には幽霊がおった。噂話は、だいたい合ってるんちゃうかな」


 夜一の言葉に、灼はうなずく。


「ただ、呪い師とか巫女とかのくだりは嘘っぽくねぇか?」


 いにしえの時代から、インチキな野郎がのさばっていたのだなと、灼は呆れた。


「なんで、嘘やと思うん?」


 夜一の疑問に答えるべく、灼は部屋の扉を開けた。


「証拠」


「え?」


「部屋の隅に、いる」


 少女の幽霊は正座したまま、同じ場所にいた。


「呪いの元凶が、屋敷から出ちまってるじゃねぇかよ」


 壁の役割を果たせていない。封じ込めるはずが、やすやすと突破されてしまっている。


「それは、たぶん灼くんのせいやと思うで」


「はぁ?」


 自分のせいにされ、灼は眉を寄せた。心外にもほどがある。


「なんで俺のせいなんだよ」


「灼くんはな、特異体質やねん。寧々ちゃんに憑かれたせいで変異したんやと思うけど。とにかく、幽霊に好かれやすいねん。波長が合うっていうんかな。だから、本来は出られへんかった壁をすり抜けることができた。灼くんに憑くことでな」


 一ミリもうれしくない。というか、それって。


「もしかして、あの子は俺に憑いてるのか……?」


「そうやで」


 何を今さら、という顔で夜一が灼を見る。


「首には寧々ちゃんが抱き着いたままやのに、また新しい子が憑くなんてなぁ。灼くんはすごいで! 幼女にモテモテやん!」


 誤解を招く言い方はやめて欲しい。


「じゃあ、この子は久しぶりに屋敷の外に出たってのか?」


 灼は、ちらりと少女のほうを見た。


「おれは、そう思うよ。だからずっと、じいっとしてるんちゃうかな。着物姿なんやろ? おまけに手毬を持ってる。時代を感じるもん。亡くなってから、相当な年月が経ってるはずや。世界が一変してると思う。この時代が未知の世界すぎて、気軽に動き回られへんのちゃうかなぁ」


 なるほど、と言いかけたところで、夜一のスマートフォンが震えた。画面には『的形良治』と表示されていた。

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