↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫年代記  作者: @12
第二部 ~Ⅱ~ FENRIR ― 戦狼となった黒猫 ― Season 4 #067~
PR
143/189

Season 8「継ぐ者、見守る者」 #143

第143話「かつて繋がっていた場所」

 夜明け前、フェルガリア沖の海底観測網が送ってきた一枚の画像によって、前日まで別々に扱われていた二つの記録が初めて重なった。

 海底石造構造物の平たい石板から現れた刻みと、レイブンとルナが異界から帰還した直後に残したスケッチ。その双方には、一本の長い線から二本へ分かれ、少し離れた場所で再び一つへ戻る形が描かれていた。

 完全に同じではない。

 海底側は長い年月を経たことで摩耗しており、表面には生物の付着や亀裂もある。対するスケッチは、疲労と混乱の残るクロウ兄妹が記憶を頼りに描いたものだった。線の長さも角度も一致していない。それでも、偶然の類似として無視するには特徴が近すぎた。

 午前六時を少し過ぎた解析室で、レイブンは二つの画像を並べて見ていた。

「重ねないで」

 彼が言うと、Cipherの手が止まった。

「比較表示も?」

「並べるだけでいい。無理に一致させるな」

「了解」

 画像が左右へ分かれる。

 レイブンは椅子へ深く腰を下ろした。隣にはルナがいる。白い猫耳は画面へ向いているものの、彼女もすぐに意味を口にしようとはしなかった。

 昨夜から海底の魔力線は消えていない。

 空間的な隔たりの変化も完全には元へ戻らず、一定の状態を保っている。だが新たな門は形成されず、海底構造物そのものが移動した形跡もなかった。

 そして昨夜、二人が感じたものは「待っていて」だった。

 その言葉を信じたからではない。

 今は近づかないと決めたからこそ、レイブンたちは陸上にいた。

「これ、いつ描いたんだ?」

 Houndが古いスケッチを見る。

「帰還して間もない頃」

 レイブンが答えた。

「日付は?」

 Cipherが記録を確認する。

「帰還後十一日目です」

「十一日か……」

 レイブンは小さく呟いた。

 覚えていない。

 描いたこと自体を忘れているわけではなかったが、その日に何を話し、どの順番で記録を残したのかまでは記憶から抜け落ちている。

 ルナも同じらしい。

「私、この線を何だと思って描いたんだろう」

「記録に説明は?」

 Lynxが尋ねる。

「探しています」

 Cipherはスケッチに紐づけられた資料を開いた。

 帰還直後の兄妹には、何日にも分けて聞き取りが行われている。異界で見た土地、現地住民、食料、魔法体系、敵対存在、思念伝達、石造遺構。後にSmartARへ繋がる研究の原点となった情報も、その時期の証言に含まれていた。

 しかし、記録は整理された報告書だけではない。

 途中で止まった音声。

 質問への返答を書き留めただけの紙。

 ルナが余白へ描いた地形。

 レイブンが記憶を確かめながら書き直した図。

 帰還直後だったからこそ残せた情報がある一方、疲労や混乱のため意味づけされないまま保存されたものも多かった。

「見つけました」

 Cipherが音声記録を開く。

 古い録音が解析室へ流れた。

『この線は?』

 聞き取り担当者の声だった。

 しばらく紙を動かす音が続く。

 次に聞こえたのは、現在より僅かに若いルナの声だった。

『分からない』

『分からない?』

『エルネが描いてた』

 現在のルナの白い猫耳が動いた。

 レイブンも画面から目を離す。

 録音は続いている。

『どこで?』

『石のところ。兄様、覚えてる?』

 少し間がある。

 今度はレイブン自身の声。

『……ああ。枝分かれしてるやつか』

『うん』

『あれは道だって言ってた』

『通常の道路ですか?』

『違うと思う』

 そこで録音の中のレイブンが長く黙る。

『遠くへ行く道だ』

 現在の解析室には、機器の低い作動音だけが残った。

 Houndも何も言わない。

 Lynxが腕を組んだまま、古いスケッチへ目を向けている。

「エルネが描いた……」

 ルナが呟いた。

「ああ」

「私、忘れてた」

「俺もだ」

 レイブンは責めなかった。

 忘れたくて忘れたわけではない。

 異界で過ごした時間は長く、そこで経験したことのすべてを完全な形で保持することなどできなかった。まして帰還直後には、生存に直接関係する情報が優先されていた。何に使うかも分からない石の刻みが、記録の片隅へ追いやられていたとしても不思議ではない。

 Cipherが続きを再生する。

『その道はどこへ繋がっていると聞きましたか?』

『聞いた。でもエルネも知らなかった』

 録音の中で、ルナが答える。

『昔の人が使ったって。今は使えないって言ってた』

『なぜ使えないのですか?』

 再び沈黙。

 紙を擦る音。

 そしてレイブンの声が入る。

『道標がなくなったからだ』

 現在のレイブンの目が細くなった。

「止めて」

 録音が止まる。

「もう一度、最後だけ」

 再生される。

『道標がなくなったからだ』

「……道標」

 Hawkが低く繰り返した。

「昨日出てきた石板が?」

 Houndが尋ねる。

「まだ分からない」

 レイブンはすぐに答えた。

「線が似ているだけだ。石板そのものを道標と呼んでいた証拠はない」

「でもエルネがこの形を描いてたんだろ?」

「証言が正しければな」

 ルナが兄を見る。

「帰還直後の私たちが嘘をつく理由はないよ」

「嘘じゃない。記憶違いの可能性だ」

「そっか」

「今の俺たちにもある。昔の俺たちにもある」

 ルナは頷いた。

 そこでSageが解析室へ入ってきた。

「二人とも、朝の確認がまだなんだけど」

「今?」

 レイブンが振り返る。

「今」

「何ともない」

「それを確認するのが私」

 Sageは海底画像を見る。

「何か分かった?」

「エルネが昔、同じような形を描いてた可能性が出た」

 レイブンが答える。

「可能性?」

「帰還直後の音声に残ってる」

 Sageはそれ以上質問せず、先に二人の身体状態を確認した。

 血圧や神経反応に明確な異常はない。魔力反応にも急激な変化は見られず、二人が感じている思念らしき現象によって身体へ継続的な負荷が生じている兆候も、現時点では確認できなかった。

「異常なし。ただし、これは安全宣言じゃないから」

「分かってる」

「Nyxも」

「分かってます」

 Sageは二人を見比べる。

「似てきたわね」

「どこが?」

 兄妹の声が重なった。

 Houndが笑う。

「そこだよ」

 レイブンとルナは同時にHoundを見た。

「怖い怖い」

 短い笑いが生まれた後、解析は再開された。

 帰還直後の記録をさらに遡ると、「道標」という言葉は一度だけではなかった。

 別の日の記録にも残っていた。

 そこではルナが、エルネから聞いた話として説明している。

『昔は、遠くにいる人が帰ってくるために石を使ったらしい』

『転移装置ですか?』

『分からない。エルネは、場所を覚えさせるって言ってた』

『石に?』

『たぶん』

『その石があれば移動できる?』

『違うと思う。道がなかったら駄目だって』

 録音が終わる。

 レイブンは腕を組んだ。

「石だけじゃ駄目」

 Hawkが言う。

「道だけでも駄目かもしれない」

 Lynxが続ける。

「場所を覚えてるものが必要?」

 Houndが石板を見る。

 Cipherはそれぞれの言葉を記録したが、結論としてまとめなかった。

「ヴァルグラントの資料に似た概念は?」

 レイブンが尋ねる。

「照合します」

 午前中いっぱいを使い、ヴァルグラント側と記録を突き合わせた結果、一つの古語が見つかった。

 現代語へ直接置き換えることは難しい。

 意味としては「場所を示す石」に近いが、単なる標識とは異なり、「帰るべき位置を保持するもの」「離れた場所から参照される印」といった複数の意味を持つらしい。

 ゲルハルトが通信越しに説明した。

『我々の研究者は便宜上、“帰標石”と訳している』

「正式名称じゃない?」

『古語の発音自体が確定していない。だから研究上の仮称だ』

「機能は?」

『不明だ。現物も残っていないと考えられていた』

 レイブンは海底画像を見る。

「これが現物だとは?」

『言っていない』

「ならいい」

『お前は本当に疑い深くなったな』

「前より長生きしてるからな」

『それは理由になるのか?』

「たぶん」

 ゲルハルトが小さく笑った。

『ただし、一つ忠告する。もし帰標石という解釈が正しいなら、それは門を開く鍵ではない』

「場所を示すだけ?」

『古文書の意味をそのまま取ればな。道が存在するとき、その道がどこへ戻るべきかを示す』

 ルナが通信へ入る。

「じゃあ道がなかったら?」

『何も起きないはずだ』

「でも今は起きてる」

『だから我々も困っている』

 ゲルハルトの声から冗談が消えた。

『道が再形成されつつあるのか。それとも別の何かが古い仕組みを利用しているのか。我々にも分からん』

 レイブンは黙って考えた。

 海底の石造構造物。

 繋がった魔力線。

 縮まり始めた空間的隔たり。

 エルネが描いたという枝分かれした線。

 帰る場所を探しているという感覚。

 そして、昨夜届いた「待っていて」。

 すべてを一つへ繋げれば、説明は作れる。

 しかし説明が作れることと、それが正しいことは違う。

「今日も触らない」

 レイブンは決めた。

「能動信号も送らない。海底への接近もなし」

 ゲルハルトが頷く。

『妥当だ』

「ただ、観測は増やす」

『何を?』

「石板じゃない。周囲だ」

 レイブンは海底地形を表示した。

「もしあれが場所を示すものなら、見るべきなのは石だけじゃない。何に対して場所を示しているのかを確認する」

 Cipherが意図を理解した。

「異常域全体の時間変化を追います」

「ああ。海底だけじゃなく、既存の沿岸観測点と空間測定も全部。新しい機器は入れない」

「了解」

 昼を過ぎても大きな変化はなかった。

 魔力線は安定している。

 石板も動かない。

 海底から何かが現れることもない。

 レイブンはその間に一度解析室を離れ、通常任務へ戻った。

 WOLF PACKの訓練状況を確認し、Grizzlyから装備整備の報告を受け、Hawkが提出した観測手順の改善案へ目を通す。海底異常だけが世界のすべてではないことを、自分自身へ思い出させる意味もあった。

「隊長」

 Grizzlyが報告書を受け取りながら言った。

「何?」

「今日は海へ行かないのか」

「行かない」

「そうか」

「何だよ」

「いや」

 銀灰色の猫耳が僅かに動く。

「成長したと思っただけだ」

「お前まで言うの?」

「何の話だ」

「……何でもない」

 Grizzlyは本当に知らないらしい。

 それが余計に腹立たしかった。

 午後三時過ぎ。

 変化は突然現れた。

 警報ではなかった。

 観測値の急上昇でもない。

 Cipherから呼び戻されたレイブンが解析室へ入ると、中央表示には海底ではなく広域空間測定図が映されていた。

「何があった?」

「異常域の外に反応が出ました」

「場所は?」

「場所、と言っていいのか分かりません」

 昨日と同じ言葉だった。

 レイブンは画面を見る。

 フェルガリア沖の異常域とは物理的に離れた位置には何もない。

 だが空間測定上では、もう一つの反応が検出されていた。

「二つ目?」

「発生源が二つあるとは断定できません」

「距離は?」

「通常の距離として算出できません」

「海底構造物との関係は?」

「変動周期が同期しています」

 レイブンの黒い猫耳が前を向いた。

 ルナも通信で参加する。

『兄様、こっちでも見えてる』

「感じる?」

『まだ何も』

「俺もだ」

 Cipherが二つの反応を並べる。

 一方はフェルガリア沖。

 もう一方は、地図上へ置くことのできない反応。

 それでも二つは同じ周期で僅かに揺れている。

 片方が強くなると、もう片方も遅れて変化する。

「昨日の古い記録」

 Lynxが言った。

「二つの場所が互いを探してるってやつ」

 レイブンは画面から目を離さない。

「似てるな」

「珍しく認めるのね」

「似てることまで否定する必要はない」

 Houndが腕を組む。

「じゃあ向こう側が見つかった?」

「それはまだ分からない」

 数分間、同期は続いた。

 そして、海底石板の魔力反応が僅かに強くなる。

 同時に、地図上に存在しない反応も上昇した。

「NoX」

 Cipherの声が低くなる。

「空間隔たり、減少を再開」

「速度は?」

「昨日より遅いです」

「加速傾向?」

「ありません」

「接続点?」

「なし」

「門形成?」

「確認できません」

 レイブンは息を吐いた。

「そのまま観測」

 誰も動かない。

 能動信号も送らない。

 石板へ触れない。

 ただ待つ。

 やがて、レイブンの胸の奥へ微かな感覚が触れた。

 同時に通信の向こうでルナが息を呑む。

「先に記録」

『うん』

 レイブンは目を閉じた。

 暗い。

 遠い。

 しかし以前より輪郭がある。

 誰かの顔は見えない。

 声も聞こえない。

 ただ、これまでになかった感覚が一つ混じっている。

 場所。

 具体的な座標ではない。

 山や川でもない。

 そこへ戻ればいいと分かるような、方向を持たない位置の感覚。

 レイブンはそれを無理に言葉へ変えなかった。

 端末へ記録する。

 遠隔感。

 暗所印象。

 位置を示される感覚。

 発信主体不明。

 敵意なし。

 数十秒後、ルナの記録が共有された。

 内容は近い。

 だが彼女は最後にこう書いていた。

 「ここを覚えている」

 レイブンはその一文を見つめた。

「兄様」

 ルナの声が届く。

「ああ」

『私たちのことじゃないと思う』

「何で?」

『分からない。でも、人を見つけた感じじゃない』

「場所?」

『うん』

 ルナは静かに続けた。

『帰る場所を見つけた感じ』

 その瞬間、海底石板を走っていた魔力の線が一度だけ強く輝いた。

 光学映像にも映るほどだった。

 暗い海底で、枝分かれした刻みが淡く浮かび上がる。

 そして、その周囲に広がっていた魔力線が石造構造物全体へ伝わった。

「変化!」

 Cipherが叫ぶ。

「空間測定値上昇!」

「接続点は?」

「まだありません!」

「海面?」

「異常なし!」

「港湾側?」

「影響なし!」

 レイブンは画面を見る。

 何かが起きている。

 だが危険が迫っている証拠はない。

 だから動かない。

「全員、現在配置維持。勝手に近づくな」

 Houndが頷く。

「了解」

 ルナも通信越しに応じる。

『舟艇隊も待機継続』

「任せる」

『了解』

 数秒後。

 石造構造物の中心付近で、水が僅かに揺らいだ。

 泡ではない。

 熱でもない。

 水そのものの向こうにある景色が、一瞬だけずれたように見えた。

 解析室の誰も言葉を発しなかった。

 揺らぎはすぐに消えた。

「今のは?」

 Houndが低く尋ねる。

「映像異常の可能性を確認します」

 Cipherが複数の観測点を照合する。

 一基だけではない。

 二基。

 三基。

 異なる角度から同時に記録されている。

「実際の現象です」

 Cipherが答えた。

「ただし門形成とは一致しません」

「何が見えた?」

 レイブンが尋ねる。

「解析中です」

 映像が一枚ずつ分解される。

 揺らぎがもっとも大きかった一瞬。

 その向こう側には海底の石が見えている。

 だが、色が違った。

 海中の青黒い色ではない。

 僅かに紫がかっている。

 ルナが通信の向こうで黙った。

 レイブンも言葉を失った。

 紫色の空。

 あの世界を思い出すには、それだけで十分だった。

「色だけで決めるな」

 レイブンは自分自身へ言うように口にした。

「映像処理、光源、魔力干渉、全部確認」

「了解」

 Cipherが応じる。

 ルナが静かに言った。

『兄様』

「何?」

『行かないよね』

 レイブンは画面を見た。

 行きたい。

 その気持ちは否定しなかった。

 エルネたちが向こうにいるかもしれない。

 あの紫色が本当に同じ世界なら、長い間答えのなかった場所が目の前へ戻ってきたことになる。

 それでも。

「行かない」

 レイブンは答えた。

『うん』

「まだ道じゃない」

『うん』

「向こう側も確認できてない」

『分かってる』

「だから待つ」

 ルナの声が少し柔らかくなる。

『了解、NoX』

「了解、Nyx」

 揺らぎは再び現れなかった。

 夕方まで解析を続けても、紫色が本当に異界の景色だったのかは確認できなかった。映像処理による着色ではない可能性は高まったものの、それが別世界の光景であるという証拠にはならない。

 レイブンは日没前に帰宅した。

 家へ入る。

「ただいま」

「おかえり」

 エリシアの声。

 そして少し遅れて、リリアの小さな声が聞こえる。

 レイブンは手を洗い、居間へ入った。

「今日は何があった?」

 エリシアは夫の顔を見ただけで尋ねた。

「分かる?」

「あなた、隠すの下手になったわね」

「昔は上手かった?」

「昔は隠してること自体を認めなかった」

「それは改善なのか」

「かなり」

 レイブンは隣へ座った。

「紫色が見えた」

 エリシアの表情が変わる。

「向こうの世界?」

「分からない」

「でも、あなたはそう思った」

「ああ」

「ルナも?」

「ああ」

 エリシアは少し黙り、それから尋ねた。

「行かなかったのね」

「行かなかった」

「行きたかった?」

「……ああ」

 エリシアはその答えを聞いて、夫の手へ自分の手を重ねた。

「それでいいと思う」

「何が?」

「行きたいと思うことと、行くことは別だから」

 レイブンは彼女を見る。

「みんな同じようなこと言うな」

「みんな、あなたのことを知ってるのよ」

「それ昨日も聞いた」

「なら覚えて」

 レイブンは小さく笑った。

 その腕へ、エリシアからリリアが渡される。

 娘を抱く。

 リリアの小さな耳が動き、父の胸へ頬を寄せる。

「向こうに誰かいたら?」

 エリシアが尋ねた。

「迎えに行く」

 答えは早かった。

「でも、帰ってくる」

 今度の言葉も迷わなかった。

 エリシアは静かに頷いた。

 夜。

 フェルガリア沖の観測網は、海底石造構造物を監視し続けていた。

 紫色の揺らぎは再び現れない。

 魔力線も安定している。

 空間的な隔たりも一定のままだった。

 だが、日付が変わる少し前。

 石板の刻みとは別の場所で、新たな魔力反応が現れた。

 今度は線ではない。

 石の表面に、小さな点が一つだけ灯る。

 少し離れて、二つ目。

 さらに三つ目。

 それらは不規則に見えたが、観測記録を重ねると、一つの方向へ並んでいた。

 海底石造構造物の内側から、昨日一瞬だけ紫色の揺らぎが現れた場所へ。

 道を示すように。

 ただし、その先にはまだ何もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。