Season 8「継ぐ者、見守る者」 #141
第141話「門ではない扉」
七度目の反応は、日付が変わっても消えなかった。
フェルガリア沖の海底石造構造物周辺では、これまで短時間だけ現れていた魔力変動が低い強度を保ったまま継続し、その範囲もゆっくりと広がっていた。海面に異常はなく、港を出入りする船舶にも影響は確認されていない。それでも複数の観測設備が同じ変化を捉え、さらに空間測定値まで通常範囲から外れ始めたことで、単なる局地的な魔力現象として扱い続けることは難しくなっていた。
ただし、異界門とも断定できなかった。
既知の門が形成される時に見られる急激な魔力集中がない。空間そのものが一か所へ引き寄せられるような変化もなく、周囲の魔力を大量に消費している様子もない。むしろ海底の広い範囲が、ごく僅かずつ別の状態へ移ろうとしているように見えた。
夜明け前の解析室で、レイブンはその記録を黙って見ていた。
「まだ続いてる?」
「はい。強度はほぼ一定です」
休息を取って戻ったCipherが答えた。昨日より顔色は良く、少なくとも二時間弱の睡眠だけで解析卓へ張りついていた時よりはまともに見える。
「拡大速度は?」
「遅くなっています。昨夜から急激な拡大はありません。ただし完全には止まっていません」
レイブンはSmartAR上に表示された推定範囲へ目を向けた。海底石造構造物を中心に、空間測定値の異常域が不均一に広がっている。綺麗な円形ではなく、海底地形に沿うように歪んでいるため、見た目だけなら魔力が水中へ拡散しているようにも見えた。
「既知の門形成記録との一致率は?」
「低いです」
「ヴァルグラント側は?」
「向こうも同じ見解です。少なくとも彼らが戦時中に人為形成した門とは異なる、と」
「自然発生型は?」
「資料不足です。似た記録はありますが、観測精度が違いすぎます」
レイブンは頷いた。
「なら、門とは呼ばない」
「了解」
Houndが少し離れた席から振り返った。
「じゃあ何て呼ぶんだ?」
「まだ海底空間異常でいいだろ」
「地味だな」
「名前を格好よくして何になる」
「現場の士気?」
「上がらない」
「即答かよ」
Houndが肩をすくめる横で、Lynxは昨夜から追加された観測情報を読み続けていた。
「NoX、無人観測の前進は予定通り?」
「条件を見てからだ」
「七度目が続いてるから?」
「それもある」
レイブンは海図へ表示を切り替えた。
「昨日までは、現象が一度消えてから観測機器を動かせた。今日は違う。異常が継続してる中へ機器を近づけることになる」
「無人でも?」
「失っていい機材と、壊していい観測環境は別だろ」
Lynxが小さく頷く。
観測装置そのものは交換できる。しかし、それを近づけたことで現象が変化すれば、今まで積み重ねてきた比較条件が崩れる。何より、未知の空間現象へ機械を送り込むこと自体が刺激になる可能性も否定できない。
「まず今の状態を記録する」
レイブンは言った。
「動かすのは、それからだ」
そこへルナが入ってきた。
今日は水上装備ではない。白い猫耳を露出させた通常勤務用のUAESを着用し、片手には自分の端末を持っている。
「おはよう、兄様」
「おはよう。寝た?」
「それ、兄様が聞く?」
「最近みんな同じこと言うな」
「みんな正しいんじゃない?」
Houndが即座に頷く。
「正しい」
「お前は黙れ」
ルナは小さく笑ったが、中央表示へ視線を移すと表情を引き締めた。
「まだ感じる?」
レイブンが尋ねる。
「ずっとじゃないよ。昨夜のあと一度消えた。でも朝起きてから、何回か」
「内容は?」
「昨日と似てる。帰る場所を探してる感じ」
「変化は?」
ルナは少し考えた。
「近くなってる気がする」
「実際の距離?」
「分からない。だから記録にはそう書いてない」
レイブンの口元が僅かに緩んだ。
「いい判断だ」
「誰の妹だと思ってるの」
「父さんの娘」
「兄様もでしょう」
そのやり取りを聞いていたHoundが吹き出した。
だがレイブンはすぐにルナへ視線を戻す。
「身体は?」
「異常なし。Sageにも診てもらった」
「ならいい」
「兄様は?」
「何も感じてない」
「海から離れてるからかな」
「それもまだ分からない」
ルナは頷いた。
昨夜の反応を受け、レイブンとルナが異界滞在中に経験した思念伝達の記録も再び解析対象となっていた。しかし、当時の現象は言葉や映像をそのまま送受信するものではなく、意図や警告、位置、単純な像を魔力信号として伝え、受け手側がそれを認識へ再構成する性質が強かった。現在のSmartARへ繋がった技術も、その原理をそのまま複製したのではなく、長い解析と安全化を経て情報共有技術として再構築されたものだった。
だからこそ、今の海底現象を既知の思念伝達と同一視することはできない。
午前七時を過ぎた頃、ヴァルグラント側との通信会議が始まった。
画面の向こうには技術担当者だけでなく、以前から共同調査の窓口となっていたゲルハルトの姿もあった。
『NoX』
「ゲルハルト」
『また妙なものを見つけたそうだな』
「見つけたというより、向こうから存在を主張し始めた感じだけどな」
『それを妙なものと言うんだ』
ゲルハルトの共通語は以前より滑らかになっている。思念伝達技術の研究から生まれた言語学習支援も利用しているが、彼自身が会話を重ねて覚えた部分も大きい。
「そっちの記録で、似た空間異常は?」
『技術班から聞いた。完全に一致するものはない』
「自然発生型にも?」
『ない。ただし、こちらが昔記録した現象には、観測そのものが不十分な例が多すぎる』
「だろうな」
『一つ、気になる記録はある』
ゲルハルトの横から古い資料が共有された。
ヴァルグラントが異界門技術を軍事利用する以前、山間部の地下遺構で局所的な空間異常が発生した事例だった。異常は数日続いたものの、完全な門として開くことはなく、最終的には自然消失している。
「何が気になる?」
『その遺構にも石造構造物があった』
解析室の空気が変わった。
レイブンは画面へ目を向ける。
「同じ構造?」
『分からない。写真がほとんど残っていない。戦時中の混乱で調査資料も失われている』
「魔力反応は?」
『反復していたらしい』
Cipherが記録を受け取り、すぐに現在の波形との比較を始める。
「門は開かなかったんだな?」
『少なくとも、我々の記録ではな』
ゲルハルトはそこで言葉を切った。
『ただ、当時の調査員は奇妙な表現を残している』
「何て?」
ゲルハルトが古い報告文を読み上げる。
『“向こう側が存在するのではなく、二つの場所が互いを探しているように感じた”』
レイブンは黙った。
ルナも同じだった。
昨日、彼女が口にした言葉が脳裏へ戻る。
帰る場所を探している。
「その調査員は思念伝達を使えた?」
『記録上は違う。普通の兵士だ』
「種族は?」
『人間種だ』
Sageが腕を組んだ。
「ならNoXとNyxだけが感じる現象とは限らない可能性が出るわね」
「ただし同じ現象なら、だろ」
レイブンが答える。
「ええ。そこは分けるべき」
ゲルハルトが画面越しに二人を見る。
『お前たちは何を感じた?』
レイブンは昨日までの経緯を説明した。
最初は何もなかった。
海上で距離を詰めた時に、自分とルナが「遠い」「暗い」「帰りたい」という印象を受けた。その後、ルナは陸上でも「帰る場所を探している」と感じた。
ただし、それが海底から送られた情報である証拠はない。
『相変わらず慎重だな』
ゲルハルトが言った。
「お前たちと戦ってた頃よりはな」
『あの頃にそれを覚えていれば、互いに弾薬を節約できた』
「お互い様だろ」
『違いない』
敵だった二人の間に、僅かな笑いが生まれた。
会議が終わった後、Cipherが比較結果を出した。
「古い記録は粗すぎます。ただ、反復周期の一部に近い特徴があります」
「同一現象?」
「言えません」
「なら、それでいい」
レイブンは椅子へ座った。
「でも仮説は増えた」
Lynxが海図を見る。
「門を作ろうとしてるんじゃなくて、何かを探してる?」
「可能性の一つ」
「二つの場所が?」
Houndが尋ねる。
「それも仮説だ」
「分かってるよ」
Houndは珍しく真面目な顔で続けた。
「でも、もしそうならさ。俺たちが昨日送った基準信号って、向こうからすれば目印になったんじゃないか?」
レイブンの視線がHoundへ向いた。
誰もすぐには否定しなかった。
Cipherが前日の記録を呼び出す。
「時系列だけなら、基準信号送信後から反復波形の類似度が徐々に上がっています」
「原因とは言えない?」
「はい」
「でも可能性はある」
「あります」
レイブンはしばらく考えた。
「今日は送らない」
Houndが頷く。
「向こうが自分で何をするか見る?」
「ああ。こっちの信号を追ってるなら、追加で刺激しない方がいい」
「もし助けを求めてるなら?」
ルナが尋ねた。
レイブンは妹を見る。
「だから無視はしない」
「どうするの?」
「聞く方法を変える」
昼過ぎ、観測計画が修正された。
無人観測装置を石造構造物へ向けて大きく前進させる案は見送られ、代わりに既存の観測網の中から感度と時間同期の安定した機器を選び、受信に重点を置く。SmartARによる統合は継続するものの、元の観測値も同時に保存し、システム側の推定によって存在しない規則性を作っていないかを後から検証できるようにした。
そして、レイブンとルナは別々の場所に配置された。
レイブンはフェルガリアの沿岸観測所。
ルナは内陸側のFENRIR施設。
二人が同じ場所にいることで、互いの反応や言葉が無意識に影響する可能性を減らすためだった。
通信も常時接続しない。
同じ時刻に何を感じたかは、先に各自で記録し、その後で照合する。
「実験動物になった気分」
出発前、ルナが言った。
「嫌ならやめる」
「嫌とは言ってないよ」
「途中でも止めていい」
「兄様もね」
「ああ」
「本当に?」
「最近その確認、多くない?」
「必要だから」
ルナは笑って手を振った。
「じゃあ後で」
午後三時十四分。
海底の七度目の反応は、依然として継続していた。
レイブンは沿岸観測所の椅子に座り、海を見ていた。Smart-Visorは装着しているが、解析結果の自動提示は切ってある。視界端に表示されているのは時刻と最低限の安全情報だけだった。
彼は待った。
聞こえるのは風と波。
観測施設の機器音。
遠くを航行する船の低い機関音。
〔殺気看破〕には何も触れない。
敵意はない。
それでも、三時二十一分を過ぎた頃だった。
胸の奥に、昨日と同じ感覚が現れた。
レイブンは時計を見なかった。
まず自分の感覚へ集中する。
遠い。
それは昨日と同じ。
暗い。
それも同じ。
しかし「帰りたい」という切迫した印象は弱くなっていた。
代わりに別のものがある。
探している。
待っている。
そして――
レイブンは眉を寄せた。
それ以上を言葉にしようとすると、自分の記憶が混ざる。
エルネの顔が浮かぶ。
セイル。
アーシェ。
紫色の空。
石の冷たさ。
帰りたいと願った自分自身。
レイブンはそこで思考を止めた。
端末へ自分が確実に感じた範囲だけを入力する。
遠い。
暗い。
探索。
待機。
最後に「対象不明」と添えた。
感覚は四十秒ほどで消えた。
レイブンは通信を開かない。
ルナの報告が終わるまで待つ。
数分後、Cipherから照合完了の通知が来た。
『双方の記録を共有します』
レイブンは表示を開いた。
ルナの記録。
時間帯はほぼ一致していた。
彼女が書いた内容を読んだ瞬間、レイブンの耳が僅かに動いた。
遠い。
暗い。
探している。
待っている。
そして最後に、ルナだけが一つ付け加えていた。
「道がない」
レイブンはしばらくその文字を見つめた。
「Cipher」
『はい』
「俺の記録をルナが見る前に保存した?」
『はい。Nyx側も同様です。相互閲覧は照合後です』
「時間は?」
『感覚発生の申告時刻は十一秒差です』
「海底の反応は?」
『同じ時間帯に変化しています』
「偶然の可能性は?」
『排除できません』
「それでいい」
レイブンは立ち上がり、窓の外を見る。
海は変わらない。
青灰色の水面が遠くまで続いている。
「ルナへ繋いで」
『兄様』
すぐに声が返る。
「記録見た」
『私も』
「道がない、って?」
『そう感じた』
「何の道?」
『分からない』
「門?」
『分からない』
「帰還経路?」
『分からない』
ルナは少し苛立ったように息を吐いた。
『でも、扉が閉まってるって感じじゃなかった。そもそも扉がない感じ』
レイブンは海を見る。
「扉がない……」
『うん』
「なのに、こっちを探してる」
『そう』
レイブンの頭に、ゲルハルトが共有した古い記録が浮かんだ。
二つの場所が互いを探している。
もし今回の現象が同種だとすれば、既存の異界門という考え方そのものが適切ではない可能性がある。
門が開いて二つの世界を繋ぐのではなく、互いに離れた場所同士が何らかの理由で接近しようとしている。
まだ仮説にすぎない。
「門じゃないのかもしれないな」
『私もそう思った』
「でも、まだそう決めない」
『うん』
「名前も変えない」
『Houndが残念がりそう』
「何で?」
『格好いい名前を付けたがってたんでしょう?』
「何で知ってる」
『本人から来た』
「何やってるんだ、あいつ」
ルナが笑った。
その笑い声が途切れた直後、観測所の警告音が鳴った。
レイブンの視線が即座に端末へ向く。
海底の空間測定値が変化している。
急激ではない。
しかし今までの拡大とは違う。
「Cipher」
『確認しています』
「何が起きた?」
『異常域の形が変わっています』
SmartAR上に海底地形が表示される。
それまで石造構造物を中心に不規則に広がっていた範囲が、ゆっくりと細長く変形し始めていた。
沖へではない。
海面へでもない。
横方向へ伸びている。
「方向は?」
『待ってください』
数秒。
『フェルガリアではありません』
「じゃあどこだ?」
Cipherが複数の観測値を重ねる。
『既知の地理座標として意味のある方向ではありません』
レイブンが眉を寄せた。
「どういう意味?」
『三次元上の方向として扱うと説明できないんです』
通信の向こうで操作音が続く。
『距離が伸びているのではなく、空間測定上の隔たりだけが減少しています』
レイブンは黙った。
ルナも言葉を失っている。
「門形成と同じ?」
『違います。少なくとも既知の門は、接続点へ空間歪曲が集中します。今回は接続点そのものが確認できません』
「扉がない……」
ルナが呟いた。
レイブンはその言葉を聞いた。
道がない。
扉もない。
それでも二つの場所が、互いを探している。
「全観測班へ」
レイブンは通信を切り替えた。
「現象への能動干渉を停止。観測だけ続ける。海上・海中への有人接近は認めない。無人機器も現在位置を維持。異常域に変化があっても追うな」
返答が順に届く。
最後にCipherが尋ねた。
『警戒段階は?』
レイブンは少し考えた。
「上げる。ただし市民避難を始める段階じゃない。港湾運用への影響も現時点ではなし。変化が加速したら即時再評価する」
『了解』
レイブンは窓から海を見た。
何も見えない。
空も海も、数分前と同じだった。
それでも観測装置の中では、世界と世界の間にあるはずの距離が少しずつ変化している。
門はない。
だから開くこともできない。
だが、向こう側に何かが存在するなら、そこからこちらを探している可能性は残っている。
夕方、レイブンは予定通り帰宅した。
家へ入ると、リリアの泣き声が聞こえ、その直後にルークまでつられるように声を上げた。
「ただいま」
「おかえり。ちょうどいいところに帰ってきたわ」
エリシアはリリアを抱いていた。
レイブンは上着を脱ぎ、手を洗うと、そのままルークのところへ向かった。
「今日は二人か」
「昼間は交互だったのに、あなたが帰ってきたら同時」
「歓迎されてる?」
「たぶんね」
レイブンは息子を抱き上げた。
ルークはすぐには泣き止まない。
エリシアも娘をあやしながら尋ねる。
「海は?」
「今日は行ってない」
「それは聞いた。ルナから連絡が来たもの」
「また?」
「妹と妻の連絡網を甘く見ないで」
「怖いな」
「それで?」
レイブンは今日分かったことを話した。
自分とルナが離れた場所で似た感覚を記録したこと。
海底の空間異常が変化したこと。
既知の異界門とは違い、接続点が形成されていないこと。
そして、空間的な隔たりだけが少しずつ縮んでいるように観測されていること。
エリシアは黙って聞いていた。
「向こうに誰かいると思う?」
「いるかもしれない」
「エルネたち?」
レイブンはルークの背へ手を添えたまま首を横に振る。
「分からない」
「会いたい?」
今度は答えるまで少し時間がかかった。
「ああ」
エリシアは微笑まなかった。
ただ静かに頷いた。
「なら、その気持ちも判断材料から外さないで」
「普通は感情を外せって言わない?」
「外したつもりで残ってる方が危ないでしょう」
レイブンは妻を見る。
「それ、父さんにも似たこと言われた」
「お義父様と意見が合ったのね」
「最近みんな俺への扱いが似てきてない?」
「あなたが分かりやすくなったのよ」
「そうかな」
「そうよ」
腕の中でルークの泣き声が弱くなる。
レイブンは息子の黒い猫耳へ目を落とした。
「もし向こうに誰かいるなら、こっちへ来る方法を探してるのかもしれない」
「あなたたちが昔そうだったみたいに?」
「だから余計に、そう見えてるだけかもしれない」
「それでもいいんじゃない?」
レイブンが顔を上げる。
「決めつけなければね」
エリシアはリリアを抱き直した。
「あなたが感じたことまで嘘にする必要はないでしょう。でも、それを事実だと決める必要もない。今までそうしてきたんでしょう?」
「ああ」
「なら明日も同じよ」
レイブンは頷いた。
その夜、双子が眠った後も海底の反応は続いていた。
レイブンは一度だけ端末を確認した。
空間的な隔たりの減少は止まっている。
悪化もしていない。
門も形成されていない。
新しい魔力反応もない。
今夜はそれで十分だった。
端末を閉じる。
寝室へ戻る。
家の中にはエリシアと二人の子供がいる。
帰る場所は、ここにある。
そのことを確かめるようにレイブンは扉を静かに閉めた。
同じ頃、フェルガリア沖の海底では、観測装置の光さえ届かない暗闇の中で、石造構造物の一部に微かな変化が生じていた。
崩れてはいない。
動いてもいない。
ただ、長い年月を海底で過ごしてきた石の表面に沿って、ごく弱い魔力が流れていた。
一本の線として始まったそれは、途中で途切れながら隣の石へ移り、さらにその先へ伸びていく。
完全な円にはならない。
門の輪郭にもならない。
それでも暗い海底で、離れていた石と石の間を結ぶように、淡い反応だけが静かに広がっていた。




