第三章:激流にさらわれる紅葉
しかし、私の根底にある「全力」の病が、二人の幸福を少しずつ侵食していく。大学の課題、実技、そして自主制作。描けば描くほど、私は自分の未熟さに絶望し、それ以上に創作の快感に取り憑かれていった。
彼と過ごす時間の中でさえ、頭の片隅では「彼をどう画面に定着させるか」「この光をどう表現するか」ばかりを考えていた。
私の情熱は、穏やかな恋を押し流すほどの激流だったのだ。激しく流れる川のように、私の創作への衝動は、彼との甘やかな時間を容赦なく巻き込み、削り取っていった。
ある夜、彼はどこか寂しそうに笑って、私の部屋を出て行った。私の言葉が彼の声を遮り、私の視線がキャンバスばかりを向いていたことに、彼はとっくに気づいていたのだ。去り際に彼が浮かべたあの眼差しが、自分がもう彼の目を見ていないのだという事実を、冷徹に突きつけていた。私は引き止めなかった。引き止める時間が惜しいほど、私はキャンバスに向き合いたかったのだ。追いかけることもせず、私はただ狂ったように絵筆を動かした。
そうして、私達の関係は音も立てずに自然消滅した。川の流れが、岸辺の紅葉を遠くへと連れ去ってしまうように、初めての恋は私の生活から消えていった。
大学を卒業した私は、フリーランスのデザイナーとして生計を立てながら、プロの画家としての活動を本格化させていった。




