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第三章:わが身世にふる ながめせしまに
けれど、気づけば年齢を重ね、情熱だけで走る体力もなくなっていた。仕事に追われ、自分のために装うことも忘れ、すべてを後回しにしてきた。世間の荒波に揉まれているうちに、あの失恋の夜に必死で手に入れたはずの美しさも、若さも、桜のようにあっという間に色褪せてしまったような気がしてならなかった。
彼女はぼんやりと、雨に打たれる桜の木を見つめた。自分がこうして、正解のない仕事の悩みに沈み、ただ時間をやり過ごしている間に、世界はどんどん進んでいく。
ピコン、とスマートフォンの通知音が鳴った。学生時代からの親友である咲良からのメッセージだった。画面には、プロジェクトの一段落を労う言葉と、久しぶりにお茶をしよう、そのときに会わせたい人がいるんだ、という短いメッセージが綴られていた。




