第二章:いたづらに 過ごした日々
希乃は幼い頃から、ただ純粋に「花」が好きな子どもだった。庭に咲く名もなき草花の色に、時間を忘れて見入るような静かな少女だった。
中学になる頃には周りよりも背が高くなり、その恵まれた体躯から何度も運動部に誘われた。けれど、どれも心の底から興味を持つことはできなかった。周囲が部活や趣味に熱中する姿をどこか冷めた目で眺めながら、自分自身は何一つ本気に打ち込むこともなく、ただ流されるように日々をやり過ごしていた。
そんな希乃が、高校に入って初めて、世界の色彩が変わるような恋をした。それまで恋愛にも全く興味がなかったのに、気づけば目で追ってしまう人がいた。しかし、その初めての恋は、儚くも実を結ぶことなく終わった。
ひどく傷ついた希乃は、その失恋をきっかけに、まるで自分の殻を破るように「美」に目覚めた。それまで無頓着だったメイクを研究し、ファッションに没頭した。自分を美しく装うことは、傷ついた心を自ら癒やし、世界と戦うための鎧を身にまとうようなものだった。
その努力は大学に入ってから大きな花を開く。洗練された彼女は、いつしか大学一の美女ともてはやされるようになっていた。かつて何にも夢中になれなかった少女は、自分を変えてくれた衣服やデザインの力に魅了され、華やかなファッション業界へと憧れて飛び込んだのだ。




