第四章:あふれる想いを力に変えて
彼に会えない日々は、胸が引き裂かれるほど寂しかった。しかし、以前の陽来とは違っていた。ただ姉の後ろで泣いていた、あの頃の妹ではない。「次に彼に会った時は、成長した姿を見せたい」陽来は決意した。今の自信をくれたのは、彼との会話の日々だ。その自信を本物にしたかった。
それからの陽来は、猛烈に勉強と就職活動に力を入れ始めた。医療秘書の難解な資格勉強に打ち込み、放課後は居残りをして実技の練習を重ねた。就職活動が始まると、企業の合同説明会にも自ら進んで参加した。
周囲のクラスメイトや家族が、陽来の異変に気がつく。
「陽来、最近なんだか別人のように変わったね」
長い前髪をすっきりと整え、マスクを外して笑顔を見せるようになった陽来に、誰もが目を見張った。面接官の目を真っ直ぐ見て、自分の言葉で想いを伝えるその姿に、かつての影の薄さはどこにもない。
「私は、誰かのサポートを全力でできる医療秘書になりたいです」
かつて他人の意見に流されるだけだった陽来が、自分の「したいこと」を堂々と口にしていた。内に秘めた彼への恋心は、色を失うどころか、陽来の人生を鮮やかに染め上げる強い原動力となっていた。
あの春、ギャラリーの壁を埋め尽くしていた息をのむような赤。あの鮮烈な色彩に背中を押されるように、ひたむきに前を向く陽来の恋が、いつか巡り合う二人の新しい日常を、静かに、鮮やかに染めようとしていた。




