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芸能人とマネージャー

今日の客は、ブラジル人の紹介で、芸能人とマネージャーの関係だ。


芸能事務所の新人オーディションからの付きあいだそうだ。



今回の問題は芸能人がSNSで独断行動、マネージャーは事後処理に奔走しているみたいだな。


まぁなんだか……面倒そうな話だな。


俺はいつものように、体を鍛え、銭湯に行き、追加の具材を買っておく。

今日は公園に行く途中に、アパートのイタリア人に出会った。


「おぉティアーモ」

と俺が言うと、


「なんでやねん」

とイタリア人がツッコミを入れる。


彼は日本のお笑い文化が好きで、日本に移住し、今はイタリア料理店で働いている。


「今日は休み?」

と俺が聞くと、

彼はうなづいた。


「じゃあまたな」

と俺らはわかれた。


スーパーで、レンジで作るタイプのご飯が安かったので、買う事にした。


20:35、客がうちのアパートの前に来る。窓をあけ、2階まで来るように窓から言う。



「べぇさん?」


俺がうなずくと、


「はじめまして、本日はお世話になります」

マネージャーらしき男と、芸能人らしき女の子が挨拶する。


「おぅ。まぁ上がってくれ

えっと、悪いんだけどな。

俺は人の名前を覚えるのが苦手なんだ。

だから、芸能人とマネージャーって呼ぶけどいいか?

お嬢さんはカワイイからプライドもあると思うけど、おじさんは芸能人とかの名前もほとんど知らないんだ」


と俺は言った。


2人ともうなづいた。


「で……、具材はなんだ?」

と言うと、2人は俺に具材を手渡した。

肉:鴨ロース、ラム肉、豚バラ

野菜:セリ、大根、えのき


なるほどなぁ……。

俺はしばし沈黙する。

いや……正直絶句した。

全く自信がない。


「難易度高めだったですか?」

とマネージャーが言った。


「いや。どういうのかな?鍋奉行魂に火をつけるような組み合わせだな」

と俺は言った。


「やった!褒められた」

と芸能人は言った。

……いや、褒めてはない……


ちょっと待っててくれ。

と俺はイタリア人の所に顔を出す。

イタリア人から、トマト缶をもらうためだ。

この前もらった、たこ焼きのキーホルダーがあったから、それをあげる事にする。

あいつは大阪に憧れてるからな、喜んでくれるはずだ。


「おぉたこ焼きです。これかっけーです」

と喜ぶイタリア人。


案の定めちゃくちゃ気に入ってくれた。

俺は無事トマト缶を3つ貰った。


そして、アパートのインド人の所に行き、ラムとトマトに合うカレースープの調味料を調合してもらう。


「お世話になってるあるから、大丈夫でござるよ」


こいつは前に仕事を紹介したから、これくらいなら、なんなくやってくれる。


しかし、このインド人の言葉はいつも謎だ。かなり良い大学出ているはずだから、あのしゃべりはネタだろう。

毎回いろんなバージョンでくるからな。



「待たせたな」

と俺は部屋に入る。

2人はスマホに向かってなにかしていた。


「だから……炎上はダメだって」

とマネージャーは言った。


芸能人はあっかんべーをしている。

ひさしぶりにあっかんべーをしている奴を見た。

俺は思わずふきだした。


「やった受けた」

芸能人は喜んだ。


なんか……、

カワイイ奴だな。


「じゃあ鍋の準備するぞ」

と俺は、


鴨ロースを5〜7mmのそぎ切りにする。


ラム肉は一口角切りに、豚バラは3〜5cm幅で切って軽く丸めた。


大根は5mm厚のいちょう切りに、セリは5〜6cmにザク切りにして、それぞれ10分ほど水にさらす。


「これなんで水にさらすんですか?」

マネージャーが聞いてきた。

「大根もセリもニオイがキツイだろ。混じったら、どんなニオイになるかわからない。だから、一度水にさらして、ニオイを薄めるんだ」

と俺は言った。


「そんなんナチュラルじゃないじゃん」

芸能人はそう言った。


そうか……、

こいつはナチュラルが一番だと思ってるのか。


俺はとりあえずスルーして、

作業に進む。


えのきは石突きを取って3等分に分ける、


これを鍋に入れ、トマト缶とスパイス類と、コンソメを入れる。


そして、スイッチを入れ、煮込み始める。


まぁテーブルに座ってくれとちゃぶ台に案内する。



さて酒でも飲もうか?


マネージャーはノンアルコールビール

芸能人はレモンサワーだった。


グラスを渡し、乾杯をする。

「映画捨て猫超特急の成功を願って乾杯」

と俺は言った。


「べぇさん。映画の事知ってくれてたんだ」

と芸能人は言った。


「たまたまな、原作の小説家と鍋した事があってな」

と俺は言った。


そして3人とも酒を飲みだす。


3口ほど飲んだところで、

俺は話を切り出した。


「で……どういう状況なんだい?」

俺がそう言うと、


「自分の人生、好きにやりたい」

と芸能人は言った。


「まぁそうだな」

と俺は同意する。


「好きにしていいけど、信頼は積み上げるもの」

とマネージャーは言った。


俺は話を整理する。

「なんだ。マネージャーは好きにする事は同意してるのか?」

そう言うと、マネージャーはうなづいた。


「じゃあなにが問題なんだ?」

と俺は芸能人の顔を見る。


「投稿に文句を言うんだよ」

と芸能人は言った。


「限度があるんだよ」

とマネージャーは言った。


俺はその問題の投稿を見せてもらう。

あぁこれは……


「あのさ。これ誰の投稿を真似してる?」

と俺が言うと、驚いた顔をした。


この投稿の形式からすると、真似したのは、炎上系のインフルエンサーだろうな。


投稿に入ってるコメントしたユーザーのプロフィールや投稿内容を見る。

やっぱり案の定煽りユーザーだ。


こいつらは、いろんな炎上系インフルエンサーに張りついて、炎上を煽る。それに加担して、気持ちよくなる連中だ。


「あんな。このコメントしている奴のプロフィールとか投稿内容見たことあるか?」

と俺は聞いた。


「そんなの見たことないわよ」

と芸能人は言った。


俺は、コメントの内容やプロフィールを見せる。

芸能人の顔は青ざめている。

俺は、他のユーザーのコメントの内容やプロフィールも見せる。


「なぁ、これお前のファンか?」

と俺は聞く。


芸能人は首を振る。


俺はマネージャーの顔を見る。

マネージャーは手を合わせていた。


どうやら、懲りたらしい。


そろそろ鍋が食べれる頃あいだ。


俺は鍋の蓋を取る。鍋から水蒸気と共にうまそうなニオイが立ち昇る。

これはもう食えるな。


「じゃあ食おう」

俺は箸と茶碗を渡す。


3人で鍋をつついていく。


「うわ。これイケる」

とマネージャー


「美味いですね」

と芸能人は言った。


ちょっと元気がなくなっているが、浄化されたようにも見える。


それから鍋の具は少なくなり、電子レンジ作るごはんを投入してリゾットにした。


たまたま冷蔵庫にとろけるチーズがあったので、これも入れた、これまた絶品だった。


帰り際、マネージャーは何度も何度も頭を下げた。


よっぽど良い対応だった見たいだ。


後日、2人は映画の試写会のチケットと写真集を持参して、うちにやってきた。


写真集には際どいカットもあったので、本人の目の前で見るのは、少々恥ずかしかった。


恥ずかしがる俺を見て、芸能人はニヤニヤしてた。


あれから、マネージャーがフォロワーをチェックし、一定の兆候がある、いわゆる煽り系ユーザーはブロック対応しだした。


それから芸能人のメンタルも少しずつ安定しだし、より質の良いファンが増えだした。


帰り際、

「がんばれよ●●」

と芸能人の名前を呼ぶと、

満面の笑みで、俺に近づき、

ハグをして、

ホッペにチュッとした。


俺は玄関でしばらく固まった。


ホッペにチュッってされるなんて、いつぐらいぶりだ?

5年前、

牧場かなにかで、

アルパカにチュッってされたきりだと思う。


人間にしかも、

芸能人にチュッってされるなんて……。


俺は実はモテるのか?

そんな事を思ってしまった。


いや……

でも、それはないか。

バレンタインはチョコ貰うけど、

「鍋のお礼だから」

って言われるからな。



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