お局様とOL
今日の客は、うちの社長の社長仲間の紹介で、お局とOLの関係だ。
OLが配属されてからずっと同じ部署だそうだ。
今回の問題はお局が陰口を言っていたという噂が流れて、OLの方がキレたみたいだな。
まぁどこにでもある普通の話だな。陰口なんて誰でも言うだろ。逆になんでその陰口が本人に知られたかのほうが問題ありかもな。
俺はいつものように、体を鍛え、銭湯に行き、追加の具材を買っておく。
今日は公園に行く途中に、小学生に絡まれた。
「なぁべぇちゃん。今度僕の親も鍋で癒してくれない?」
そう言われた。
まったく面識がない。
「なぁボウズ。俺はお前の事が誰だか覚えてねぇんだ。たぶんボウズが小さい頃に会ったのかもしれないが、お前くらいの年齢ってすぐに見た目が変わるだろ。さっぱりわからないんだ。俺とボウズは知り合いか?」
と言った。
「僕もはじめて話すよ。みた事はあるけど、べぇさんは、縁を取り持つ鍋奉行だって有名だ」
と小学生は言った。
「まぁそれなら、ボウズか、ボウズの知り合いの大人に頼んで、両親をうちに連れてくるんだな」
と俺は言った。小学生はうなづいて、どっかに行った。
スーパーではあんぱんとコーヒー牛乳が安かったので、買う事にした。今日はあんぱんとコーヒー牛乳と中華そばだ。
19:58、客がうちのアパートの前に来る。窓をあけ、2階まで来るように窓から言う。
「べぇさんですか?」
俺がうなずくと、
「はじめまして、今日はお世話になります」
OLと、お局が挨拶する。
「おぅ。まぁ上がってくれ
えっと、悪いんだけどな。
俺は人の名前を覚えるのが苦手なんだ。
だから、OLとお局って呼ぶけどいいか?
失礼だと思うけど」
と俺は言った。
2人ともうなづいた。
「で……、具材はなんだ?」
と言うと、2人は俺に具材を手渡した。
肉:鶏むね肉、鮭切り身、豚小間切れ
野菜:白菜、しめじ、豆腐
なるほどなぁ……。
俺はしばし沈黙する。
「合わせにくいですか?」
とお局は言った。
「いや。めちゃ合うよ」
と俺は言った。
「よかった。別々の好みでと聞いていたので、合うか心配だったんですよ」
とお局は言った。
「一見合わなくても、ポイントをつかめば、上手く合うんだよ。
人間関係と同じだな」
と俺は言った。
二人とも妙にうなづいていた。
これもメモしておこうか……。
さて……今日はちゃんこ鍋風にしようか?
問題は味噌ベースか、塩ベースか……。
これを聞いたら、揉めそうだしな。
あみだくじで決めるか。
あみだくじはOLに決めさせて、横線を入れるのはお局、どのコースを選ぶかは俺が決める。
こうしたら、共同作業になるからな。
これで行こう。ただ線が2本だと、すぐにわかるから、線を6本にして、味噌か塩を交互にいれよう。
俺はあみだくじを作るように言った。
二人でてきぱきとくじを作っていく。
「できました」
とお局は言った。
「ありがとう。じゃあこれな」
と俺はあみだくじを選ぶ。
OLはあみだくじを進めていく。
「味噌ですね」
OLは言った。
「OK」
と俺は言い、鍋の準備をする。
鶏むね肉をぶつ切りにする。
鮭切り身からは骨を取る。
豚小間切れはそのまま。
白菜はぶつ切り
しめじは石づきを取る。
豆腐は人数分に切り分ける。
「合わせ味噌に、生姜、七味、水、粉末の出汁、酒あとは具材を入れて煮込もうか」
と俺が言うと、
2人共うなずいた。
まぁテーブルに座ってくれとちゃぶ台に案内する。
俺は鍋を準備しだした。テフロン製のホットプレート兼電気鍋。
中に材料を入れ煮込みはじめた。
さて酒でも飲もうか?
部下はカシスオレンジ
上司は梅酒ソーダ割りだった。
俺はコップを渡し、それぞれ酒をつぐ。
「じゃあ乾杯」
3人は乾杯する。
3口ほど飲んだところで、少し緊張が解けたようだ。
俺は話を切り出した。
「で……どういう状況だったんだい?」
俺がそう言うと、
「この人が私の悪口を陰で言ってたんです」
とOLは言った。
「それで、そのOLに『お局は悪口を言っていた』
って言ったのは誰なんだい?」
と俺は言った。
「それは……」
とOLは躊躇する。
「まぁ本人の前では言いにくいわな。じゃあこっそり俺に教えてくれ」
と俺は言った。
OLは俺に耳打ちする。
「ほう。それでそいつはどういう立場の奴なんだい?」
と俺は質問した。
ほうほうほう。なるほどな。
これは少し厄介かもしれないな。
「お局は、いったいなんて言ったんだい。こっそり俺に教えてくれ」
と俺は言った。
「えっそうなの?」
と俺は驚いた。
「OLはどんな悪口を言われたか、知ってるのか?」
と俺は言った。
ふたたびOLが耳打ちする。
「えっとな。その教えた奴が、ちょいグレーなイメージだな」
と俺は言った。
二人とも驚いた顔をしている。
「あのな。これはその人がって話じゃないよ。あくまでこれまでの経験だ。こういう他の人経由でだれだれが悪口言っていたってケースは、だいたい、そいつが話を盛ってるケースが多いんだ」
と俺は言った。
二人とも身を乗り出して聞いている。
「いままでのケースだと、どちらかに恨みを持っていて、孤立させたいケース。
ひどいものになると、企業スパイが、内部崩壊を画策するパターンもある」
俺はそう言った。
OLは心当たりがありそうな顔をしている。
「たしかにその人……ことある事に、この人を孤立させようとしていたかもしれません」
とOLは言った。
「じゃあ臭いな」
と俺は言った。
「お局は誰かに恨みをかった可能性は感じないか?」
と俺はお局に質問した。
「実は経理の数字が合わない事を、ある方に指摘したことがあります。そうしたら滅茶苦茶キレられて……」
とお局は言った。
「そいつの名前を教えてくれ」
と俺は言った。
お局は俺に耳打ちする。
「ビンゴ」
と俺は言った。
二人とも目を合わせる。
「決めつけちゃダメなんだが、ちょっと不正のニオイがするな。
ちょっくら、俺、社長に電話してくるわ。監査かけろって」
と俺は言った。
二人とも動揺している。
5分後、俺は部屋に戻った。
ちょうど鍋が出来上がったころだ。
そろそろ鍋が食べられる頃あいだ。
俺は鍋の蓋を取る。鍋から水蒸気と共にうまそうなニオイが立ち昇る。
これはもう食えるな。
「じゃあ食おう」
俺は箸と茶碗を渡す。
「ちょっと待って」
二人同時に俺を止める。
あらあら気があったことで。
「どうなったんですか?」
とOLは俺に聞いてきた。
「一応な社長に状況を説明して、調べたほうが良いんじゃないかって言っといた。
そしたら『じゃあ。探偵使ってその社員の状況を調べ、かつ外部の監査チームを入れて精査するわ』って言ってた」
と俺は言った。
「めちゃ大事なっているじゃないですか?」
とお局が言うので、
「会社レベルで言うと、たいして大事でもないぞ」
と俺が言ったら、なんとなく安心していた。
3人で鍋をつついていく。
「これ美味しい」
とOL
「さすが鍋奉行ですね」
とお局は言った。
それから鍋の具は少なくなり、中華そばを投入した。
これまた絶品だった。
「でな……。
お局が言ったのは『あの子すごいできるのに、マニュアルを守らないのがダメなのよ』という事なんだ」
と俺は言った。
「……それ悪口じゃないのでは?」
とOLは言った。
「だよなぁ。たしかにマニュアルを守らないのがダメなのよって所だけ切り取ったら、悪口だけどな。これはどっちかというと、めちゃ期待の星やでってホメ言葉だな」
と俺は言った。
「……ごめんなさい」
とOLは言った。
お局はOLの手をぎゅっと握った。
後日、社長とお局、OLが某スポーツブランドの最新モデルのジャージを持参して、うちにやってきた。
当日着ていたジャージの膝に穴が開いていたから、プレゼントということだった。
サイズもピッタリで、俺によく似合っていた。
調査をしたところ、その悪口を言っていた社員の不正が明らかになった。
仮想通貨の取引で数百万単位の借金を抱え、その埋め合わせに横領を行っていたそうだ。
お局とOLはその事件がきっかけで、仲良くなり、たまにプライベートで遊びにいったりしているそうだ。
よかったなと俺は思った。




