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3/12

親友

今日の客は、同僚の親戚の紹介で、親友の関係だ。高校時代の同級生のようだ。

なにやら、隠し事が多くて困っているみたいだ。

なんだ?親友間での隠し事って、逆になんでも打ち明けるものなのか?

よくわからんな。


俺はいつものように、体を鍛え、銭湯に行き、追加の具材を買っておく。

ただ今日は公園に半グレみたいな若い男がいた。

睨んできたが、ほっておいた。上着を脱いで、懸垂とか始めたら、どっかにいった。いったい何をしたかったのか?


スーパーはタイムセールで混んでいた。

欲しい食材がタイムセールにない場合、あんなものはただの迷惑でしかない。

うちの冷蔵庫は小さい。

多量に買っても無駄になる。


今日は中華そばでも買っておこうか。


20:12、客がうちのアパートの前に来る。窓をあけ、2階まで来るように窓から言う。


「うっす。はじめまして、今日はお世話になります」

細い男と、がっちりした男が挨拶する。


「おぅ。まぁ上がってくれ

えっと、悪いんだけどな。

俺は人の名前を覚えるのが苦手なんだ。

だから、スマートとマッチョって呼ぶけどいいか?」


と俺は言った。


2人ともうなづいた。


「で……、具材はなんだ?」

と言うと、2人は俺に具材を手渡した。

肉:鶏のモモ肉、豚の細切れ

野菜:キャベツ、ニンジン


なるほどなぁ……。

俺はしばし沈黙する。


「ちょっと合わなかったですか?」

とスマートは言った。


「いや。大丈夫だ。キムチを入れるかどうかを考えてるんだ」

と俺は言った。


「まぁそこに座ってちょっと待て」

俺がそういうと、2人は座り落ち着きだした。


味噌ベースに、キムチをいれてかな。


今日は中華そばがあるから、ちょうどいいな。


俺は鍋を準備しだした。テフロン製のホットプレート兼電気鍋。


「えっとじゃあ材料を切っていこう」


鳥の鶏のモモ肉は一口大に。

豚の細切れはそのまま。

ニンジンは皮のまま、たわしで洗い、ヘタを落とし、皮をピーラーでむく。

そして包丁で薄切りにする。

皮は千切りにする。


「ニンジンの皮も入れるんですか?」

マッチョが聞いてきた。


「そうだな、野菜も魚も皮と皮の間に栄養素が詰まっているらしく、摂るほうが身体にいい。ただそのままいれると、見た目がきれいじゃないから、こうやって別の形でいれる。すると皮のままではなく、なんとなく、ちょっとしたごぼうのような、なんか別の野菜って雰囲気になるんだ」

と俺は言った。


「なるほど」

とマッチョは喜んでいた。


ついでキャベツは芯の部分を取り除き、葉っぱだけをざく切りにする。

そして、残った芯をみじん切りにして、水にしばらく晒す。


「そのキャベツの芯はなにをされているんですか?」

とスマートは言った。


「あっこれか。これは水に晒して、くさみを取っているんだ。俺はキャベツの芯が苦手なんだが、捨てるのはもったいない。だから芯を取り除き、みじん切りにする。このままだと、ここにキャベツの特有のニオイが強く残っているから、水にさ晒して取り除く」

と俺は言った。


「なるほど」

とスマートは言った。うれしそうだった。反応が似ているな。似たもの同士なんじゃないか?

いったい何を喧嘩しているんだ。


それでは調理開始だ。


まずはテフロン製の鍋に材料を全部入れる。


鶏のモモ肉、豚の細切れ、キャベツ、ニンジン、

うちからは豆腐を提供しよう。


そして日本酒と砂糖、味噌とコンソメ、キムチと水を入れる。

そして、コトコト煮ていく。


「あとは待つだけですか?」

とスマートは言った。


「そうだな」

と俺は答える。


「シンプルですね」

とマッチョは言った。


「そうだな。相性がいい素材だから、シンプルにできる。相性が悪いと複雑になる」

と俺は言った。


「そうなんですね」

とマッチョは言った。


「まぁ人間関係と似ているかもしれんな」

と俺は言った。


ちょっと待てと、俺はちゃぶ台を離れる。


スマホにさっきのセリフを書き留める。

「相性がいい素材だから、シンプルにできる。相性が悪いと複雑になる。人間関係と同じさ」

これメチャクチャカッコいいじゃないか。

俺はこうして、自らの名言を書き溜めている。

ただ見返すことはあまりない。

たんなる癖だ。将来俺のことを物語にする変わった作家でも現れたら、提供してやろうと思う。

まぁ俺のことが物語になることはないだろうがな。


「あぁすまねぇ」

俺が戻ると、二人はスマホをしていた。


「何してるんだ」

と俺は聞く。


「俺はゲームです」

とスマートは言った。


「俺はたんぱく質の計算していました」

とマッチョは言った。


「たんぱく質の計算?マッチョは体重辺り何グラム取ってるんだ」

と俺は質問した。


とたんにマッチョの目が輝く。

「俺は体重辺り2gです。今日はこれだと足りなさそうなので、あとでサラダチキンを買おうかなと思ってます」

と言った。


「そうか。いい身体してるもんな。マッチョは筋肉の付き方からして、ナチュラルだろ。何をやってるの?」

と俺は聞いた。


「そうです。ナチュラルです。メニューはビッグ3がメインです。べぇさんもいい身体ですよね。メニューは?プロテインは何取ってます?」

とマッチョは言った。


「俺のはあんまり参考にならないと思うわ。俺は公園で自重トレなんだけど、懸垂チンニングとディップス、あとは腕立て伏せ、スクワット、Vシット、背筋くらいかな。プロテインは取ってない」

と俺は言った。


「えっ。プロテイン取らずに、その身体っすか。たんぱく質はどれくらいですか?」

とマッチョは聞いてきた。


「正確にはわからないな。朝はコーヒー牛乳だけ、昼はアンパン二つ、夜は鍋だからな。そんなに多くはないんじゃないか?」

と俺は言った。


「まじっすか。それカロリー足りてなくないですか?お酒もカロリー計算入らないし」

とマッチョは言った。


「どうなんだろうな。まぁ色々なんかもらったりするからな。それでカロリー調整してるんじゃないか?」

と俺は言った。


そろそろ鍋が食べられる頃あいだ。


俺は鍋の蓋を取る。鍋から水蒸気と共にうまそうなニオイが立ち昇る。

これはもう食えるな。


「じゃあ食おう」

俺は箸と茶碗とグラスを渡す。


スマートは酎ハイ。

マッチョはジンバックだった。


「じゃあ乾杯」

3人で乾杯をし、鍋をつついていく。


「うわ。これ美味い。めちゃいい味」

とスマート


「これ、全部具材が美味すぎる。これ胸肉でもこの味再現できますか?」

とマッチョは言った。


「胸肉ではちょっと難しいだろうな。たまには鶏もももいいもんだぞ」

と俺は言った。


「そうだ。お前は筋肉のことばかり考えすぎだ。時には緩めろ」

とスマートは言った。


「お前こそ、ゲームばかりじゃないか」

とマッチョは言った。


「まぁちょっと待てよ。あのな。筋トレもゲームも常習性が強いんだ。脳内麻薬みたいなのがでるからな。そういう事をお互いに知っとけ」

と俺は言った。


俺は気が付いた。そうか、こいつらお互いの趣味とかを知ろうとしなくて、それを少し否定的に見てたりするから、分かり合えないのじゃないか?


「えっと、お前らな。お互いの趣味に対してあんまり興味ないだろ」

と俺は言った。


二人ともうなずいている。


「だったら、お前ら1か月だけでいいから、お互いの趣味に付き合え」

と俺は言った。


「なぜ。そんな事をするのですか?」

とマッチョは聞いてきた。


「お前らは親友だけど、趣味の接点が少ない。それがすれ違いの原因だ。お互いの趣味を理解していると、その良さがわかってくる。1か月やって、くだらないなと思うかもしれない。でも面白いなと思うかもしれない。それは負けじゃなくて、人生に楽しみが増えたという点で勝ちだ」


と俺が言うと、二人ともうなづいた。


「さっきな、俺とマッチョがたんぱく質の話をしていて、スマートはつまらなさそうな顔をしていた。あれな、スマートも興味あれば、話に乗っかかれるんだぞ」

と俺は言った。


スマートは納得している。


「あの……俺がスマートに全部言わないのも、実は理解されないだろうってのがあって、前にバカにされた気がしたから」

とマッチョは言った。


「そうか……」

とスマートは落ち込んだ。


「まぁそういう事だ。二人で趣味交換1か月しろ」

と俺は言った。


それから2人は握手をしあい、のんびり酒と美味い鍋をつつきながら、一時を過ごした。


後日、2人は鬼ころしとサラダチキンを持参して、うちにやってきた。


二人ともお互いの趣味にはまって二人の時間が増えたそうだ。


二人はペアリングをつけていた。


「もしかして、あれから二人は付き合ったとか?」

と俺が聞くと、二人は嬉しそうに笑った。


どうも、二人で趣味の時間を共有するようになって、自然とそういう雰囲気になったみたいだ。


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