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公爵様は見る目がない!  作者: 猫森まりも
第二部 夫婦、初心者から始めます
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義母と義妹①

更新が安定しなくてすみません

いろいろとあったあの夜会の日から三日が経った。眠れるわけがないと思っていた当日の夜は疲れもあってか意外にもあっさりと眠れた。旦那様とも今まで通りに接することができているし、あちらも特に変化はない。こじれなくて良かったと思うべきなのに、そうならずに済んで喜ぶべきなのに、少し寂しくも思う。


でもそのお陰と言うべきか、言葉通り、自分の気持ちを見つめ直すこともできたと思う。旦那様を好意的に思っていることには変わりはない。けれど、私こそ、熱が足りないのではと思ってしまった。


私はただ、家族のように親しくして良い優しい人に懐いただけなのではないかと。


鳥の雛のすりこみのようなものではないか、と。



でも、何度思考に耽ってみても、それ以上、それから先に進まない。



ふぅと溜息を吐いて、手元に目を向ける。いつもの日常が戻り、今日は商会から届いた書類の処理をしていたところだったと思い出す。仕事中に関係ないことを考え耽るなんて、と自嘲し、書類を整える。


丁度良くノック音がして入室を促すと、テリアが山盛りの手紙を持って現れた。




「…あらまあ。分かってはいたけど、そんなに来たの」


「社交界では今、奥様の噂で持ちきりのようですから」




当然ですわ、と言いながらテリアは執務机の空きスペースに手紙の山を作る。手紙の山の正体は分かっている。貴族のご婦人達からの、お茶会の招待状だ。私個人宛だけでこれだけあるのだから、旦那様に届く夜会の招待状はもっと多いだろう。


この国には公爵家が四つあるが、その中でもローゼンベルクは別格であるというのは執事長アジルの言。社交に関しては受け身で十分、王家以外からの招待は適当で構わないとまで言われた。少しばかり大袈裟な言い方だが、要は媚びずに威厳を保つべきであるということだ。




「…この手紙の山は後で確認するわ。送り主の目当てがローゼンベルク公爵夫人なのか、マクワイア伯爵なのかを確かめないといけないものね」




一体何通あるんだろうと思うとまた溜息が零れてから間もなく、またノック音がする。今度は何だと思いながらまた入室を促すと、執事長がよく磨かれた銀のトレーに一通の手紙を乗せて現れた。




「それは?」


「はい。王太子殿下からでございます」




先日の夜会の招待状と同じ、王家の紋章の封蝋。夜会の翌日に旦那様にお願いした伝言の返事だろうか。トレーから手紙を受け取り、内容を確認する。


伝言の内容は夜会で捕えられたデボラとアデラに面会できないかという要望で、手紙の内容は挨拶から始まり、夜会での茶番劇が愉快だったということ、面会は条件付きだが可能であること、そしてその日時と場所。面会は王宮の地下で、その日までまだ数日ある。登城する為のドレスは新調するべきか。




「…テリア、明日マダム・アンシェールのお店に行くわ。お礼も兼ねて手紙を書くからよろしくね」


「はい、かしこまりました。既製品をお買いになられるのですか?」


「ええ。今から仕立てたら間に合わないもの、今回は仕方ないわ」




机の引き出しから便箋を取り出し、話しながら先日の夜会のドレスについての礼も兼ねた伺いの手紙を認めていく。以前からのお得意様とは言え、少々無理を言って短い期間で新しいドレスを作ってもらったのだから、礼状といくらかのお気持ちもあって然るべきだ。





そして翌日。旦那様のお見送りを終えて細々とした用事を済ませると程々の時間になったので、予定通りマダム・アンシェールの店へと向かう。先日の夜会を除くと初めての外出である。今日はお供としてシュリーがついてきてくれた。


馬車が店へ着き入店すると、マダムと数名の店員が勢揃いして出迎えた。




「お待ちしておりましたわ、ローゼンベルク公爵夫人。先日のドレスはお気に召しましたでしょうか?」


「お出迎えありがとう、マダム。とても素晴らしいドレスでしたわ。今日はあのドレスのお礼も含めて、お買い物に来たの。既製品で構わないから、全身コーディネートで数セット買わせて頂きたいの。よろしくね」




にこりと微笑んで告げると、途端にマダムの表情がぱぁっと笑顔に変わって、それを見て少しばかり冷や汗が出そうになった。


だが実際、その後は冷や汗などかいている暇はなかった。マダムが中心となってああでもないこうでもないとカタログを囲んで数名が話し込み、その間私はというと店員二人がかりで細かく採寸され、それが終わると休む間もなく着せ替え人形と化した。


助けを求めようと視線を彷徨わせてシュリーを探すと、着せ替えする側に嬉々として混ざっており、目が合うととても嬉しそうに笑顔を見せたので、全てを諦めて心を無にした。


次に気が付いた時には既に馬車の中で、満足げな顔のシュリーが正面にいて、結局十セットもドレスを買ったのだと言う。もともと沢山購入してマダムの店の売上げと商品宣伝に貢献しようと思っていたのだから構わないのだけれど。今まで自分の買い物、というものをあまりしたことがなかったので、モヤモヤするようなムズムズするような、不思議な感覚だった。とりあえず、スカスカのドレスルームがいくらか賑やかになるのだろうなと思った。








それからさらに数日後。デボラとアデラの二人との面会の日。


王太子殿下から頂いた手紙の返事は旦那様にお願いした。手紙を書いてお渡し頂くように頼んだ時は、見たこともない程の渋い顔をされて思わず目が点になったのは言うまでもない。


そして満を持して今日、先日マダムの店で購入したドレス一式、シックなデザインで落ち着いたネイビーのドレス。因みに今日のお供はテリアである。


王宮の大きな扉の前で門兵である準騎士に扉を開けてもらった先に王太子殿下の侍従がおり、ご案内しますと言って先導の為に歩き出す。目的地が地下牢と言えど、凶悪犯というわけではないので経路は複雑ではなく、そう長く歩くこともなく到着する。


そして着いた先では王太子殿下が待ち構えていた。




「やあ、エリーナ嬢。先日の夜会ぶりだね」




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