フレンド登録を重く捉えがち
「入っていいぞ、面白いものは何もないがね」
「お互いさっき始めたばっかりだしな」
家主に招かれたので敷居をまたごうとするが、見えない壁にぶつかる。こんなにリアルなのにゲーム的表現があるなんて変な気分だ。
「どうしよう、入れないんだけど」
「ん? 遠慮しなくていいぞ。女子の部屋らしくないから緊張しないだろう」
「じゃなくて、なんか壁みたいなのがあって」
「……あぁそういうことか」
少し考えて心当たりがあったのか、何もない空間をタップしてメニュー画面を操作しているようだ。
ようだ、というのは他人が開いているメニュー画面は見れないらしく、中空の光る板を叩いているように見える。
操作に戸惑ったのか少し思案した後、何度かタップすると、ピコンとメッセージを受信した音が鳴る。
操作していたメニューから目を離し俺を見てきたので、自分のメニューを開くと新着メッセージが1件。
『烏有うゆ からフレンド申請が届きました。
登録しますか?
はい いいえ 』
「知らんやつが入らんように、他人の家はフレンドでないと訪問できないそうだ。これで入れるか?」
おぉ、これがフレンド登録か!
何分初めてのオンラインゲームでの初めてのフレンドだ、もう少し感慨を噛み締めたい所だが、申請してきた本人が早くしろとでも言いたげなジト目で催促してくるもんだからささっと受理して部屋に入る。
今度は弾かれることなくすんなり入室でき、家主もほっと胸をなで下ろしているようだ。
部屋は当然のように初期配置で、特に変わったところはない。強いて言うなら本棚に取説が仕舞われてることとか、ベッドの枕はうゆが抱えていることぐらいだろうか。
「女子の部屋に入るのは初めてか? あんまりジロジロ見るもんじゃないぞ」
「たしかに経験はないけどさ、女子の部屋って感じでもないだろこれ」
「わかるか? 私も自分の部屋という実感が全くないんだ」
そりゃあな。模様替えでもすれば多少は愛着が湧くのだろうか。
「じゃ、座ってくれ。今後の話もあるだろうからな」
そう言って椅子に腰掛ける家主。今後の話……ソムニウム・セフィアの事だろうか。
倣って俺も座るか……ってどこに?
「いや椅子1個しかないけど?」
「ベッドに腰掛ければいいだろう」
「ふつー逆じゃない?」
「私は椅子が好きなんだ。なに、次くる時までには用意しとくさ」
それに、ベッドはほとんど使っていないんだから気にするな、と足をぶらぶらさせながらけらけら笑う。
家主が言うならまぁとベッドに失礼して腰を落ち着ける。
「お、いまので実績解除したみたいだな。これまた至れり尽くせりだ」
「実績? 本当だ、なんか通知来てる」
☆―――――――――――――――☆
初めてのフレンド登録 +100DP
他人のホーム訪問 +100DP
☆―――――――――――――――☆
実績、アチーブメントって結構好きなんだよな。もうクリアしたゲームでも、実績埋めの為にだらだらやったりするし。
目標があるというだけでモチベーションってだいぶ違うよな。
「フレンド登録とホーム訪問かぁー。このDPってなんだろうな」
「ホーム訪問? そっちの実績もあるのか。こっちは友人を招いたという実績だよ。200DPだ」
「へぇー、訪問より100ポイント多いな。じゃあ今度はうちに招待するか」
「ふふっ、お呼ばれしよう。変なものは隠しておくんだぞ」
「変なもんなんてねーよ」
いや、R18コンテンツもあるとか言ってたな。もしかしてあるのか? 万が一入手したら隠し場所は考えないとな。
「そういえばDPが何か、だったな。
DP、ドリームポイントは言わば夢を叶える対価。家具や服を買うための夢幻世界の法定通貨さ」
なるほど、このドリームポイントは買い物に使えるんだな。というか……。
「詳しいな。もしかして、取説に一通り目を通したとか?」
「いや、起きてる時に調べたんだ。安心しろ、ウム・セフィのネタバレはしないから」
「ソムニウム・セフィアのことなら、ソムニアな」
じゃあウム・セフィのネタバレするか、とおどけたクソガキを懲らしめるべく、机の周りで鬼ごっこを始めるのだった。




