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最新装備で初心者エリア歩くのが趣味

 目を開けると、見知らぬ部屋の中でベッドに横たわっていた。少なくとも自分の部屋ではない。

 今のは夢?

 ふと気になって何もない空間を2回素早く叩くとメニューが出てくる。うん、流石に現実ではこんな機能はないから、まだ夢の中なのだろう。


 いや、ここからが夢の本番なのか。

 夢幻の世界、ソムニウム・セフィア……!


 ベッドからのそのそと這い出し、部屋の中を見渡してみる。

 外につながるであろうドアと、小さな机と椅子、何も入っていない本棚にベッド。それだけで8畳ほどしか無い部屋は窮屈に思えた。

 恐らく自分に割り当てられたマイホームなのだろう。

 机の上にはよくある質問と書かれた冊子が置いてあった。


 先程まで十把一絡げに初心者が集められた空間に居たせいか、自分一人の部屋はひどく静かに感じられた。まるで夢だったかのようだ。いや、今も夢の中なのか。

 テレビやコンポが欲しい所だな。どうしても静かな部屋は落ち着かなくて、適当な雑音を流したくなる。


 何はともあれ、外に出ないと何も始まらない。外に繋がる唯一のドアに手をかけて、ドアノブを捻る。特に抵抗も無くスッと開くと小さな通りに出たようで、同じような建物が所狭しと並んでいる。


 街を観察していると突然曲がり角から緑色のゴツい人型が現れ、自然と体が強張る。


「マジか……!?」


 ここで敵!?

 マイホームに戻り扉を閉め、武器になるようなものを探してみるが部屋の中には机、椅子、本棚、ベッド。

 この中ではせいぜい椅子ぐらいしか武器になりそうも……往年のカンフースターじゃあるまいしさすがに無理か。


 ただ無手よりマシということで椅子を引きずりつつ、恐る恐る扉を開ける。あの推定オークが出待ちしてませんように……!


 ちらりと覗いてみれば、あの緑の推定オークはマイホームを通り越してのんびり歩いており、他のプレイヤーも一瞬ぎょっとしながらも隣を素通りしていた。

 お、おぉ? あのオーク、プレイヤーかぁ? それとも異種族とも仲の良い世界設定だったりするのだろうか。

 確かにアバターを作る時には肌の色も自由に選べたけど、緑や紫は選ぶ勇気なかったなぁ。


 流石にモンスター出現エリアのど真ん中にマイホームがあるなんて斬新な設定ではなかったらしい。町中だろうしセーフゾーンじゃなかったら困る。

 緑色のオーク以外は誰も似たような格好――つまり初心者特有の初期装備――をしており、察するにここは始めたての人が集う路地裏なのだろう。

 空は夜とは言え薄紫色をしており、月が光源になっているのか視界は良好でアングラなイメージは感じない。


 あのオークも、知り合いが今日ソムニアを始めると聞いてこの辺りをうろついているのだろう。

 わざわざ初心者が集うエリアに顔出してビビらせを楽しんでいる訳ではあるまい、多分。


 ドアから頭だけ出して街の観察をしていると、不意に隣の家の扉が開かれ小さい人影が出てくる。お隣さんだし同じ初心者だろうか。


 不安そうに枕を抱きしめながら、扉から顔だけちょこんと出し周囲を伺っている。ははぁ~ん、さてはオークの罠にかかったな?

 それにしたって枕は武器としては役に立たないだろう。

 っていうか、こいつって確か……。



「烏有……うゆ?」


 急に名前を呼ばれて体を跳ねさせ、こちらをまじまじと覗き見る少女。


「誰かと思えばノクスか。ふふっ、存外早い再会だったな」

「名前を覚えてるうちで良かったよ」


 正直な所、他人の名前を覚えるのはそれほど得意じゃあない。

 クラスメイトの名前も微妙な所だし、新年度のクラス替えで覚え直しが発生して憂鬱になっていた所だ。アニメやゲームのキャラ名なら覚えられるのにな。


「そうか、なら忘れないように何度も名前を呼ぶように」

「さいですか」


「ま、立ち話っていうのもなんだ。とりあえず入るか?」

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