困った時はギルドにお任せ!
宝石研磨について調べよう、と言った所で頼るべきは冒険者ギルドだろうか。
あいにく講習ができる所は冒険者ギルドぐらいしか知らない。せっせこ竹細工を作る皆と別れ単独行動する俺は、何度目かの冒険者ギルドの門戸を叩いたのだった。
「ここは冒険者ギルドだぞ? お前、製造のことなら職工ギルドだろうが!」
威勢よく断られた。
そっかー、職工ギルドってのがあるんかー。しかしこの情報を得られたのはでかい。
しかしこの人、どこかで見たことあるんだよなー。どこだったか。
「すんません、職工ギルド行ってみます」
「ん? お前……あー、こんまえ剣の修行しにこなかったか?」
「あー! あの……なんでしたっけ」
剣の講師をやっているなんとかって人だ。残念ながらうゆと違って、俺は人の名前を覚えるのが苦手だ。
「ゼンカンだ! ま、俺も忘れたからお互い様よ!」
「数ある生徒のうちの一人だからなぁ……白夜ノクスです」
「おぅ、ノクスか! でだ、職工ギルド行くのは良いんだが、金はあるのか?」
懐の話になると急に声を潜めて問いかけてきた。そういう所の気遣いはできるらしい。
「一応、1万ぐらいは」
「あぁん? 宝石研磨の初級は2万からだぞ? 全然足んねぇな!」
受講だけで2万!? なんつー……初心者が気軽に手を出していい技術じゃないっぽいな。
うゆとシオンに金貸してくれってのもな……多分二人は貸すどころかポンとくれるだろうが、それは憚られる。いや、案外金関係には厳しかったりするかも?
だが、ハードルが高くてまだ入門できないと言ってくれたのなら諦めもつく。
もう少しお金を貯めてから職工ギルドに行ってみよう。なんならお金を貯める目標ができて良かったぐら……
「そういやノクスよ! あんときの彼女はどうした?」
「わっ!? なん……彼女?」
「あのカマトトぶってた……ごほん、なんでもない! ……はぁん? さてはプレゼントか? わかるぞ、きちんと磨かれた宝石はたけぇしな!」
なんか勝手に盛り上がってるし……リコはただの後輩なんだけどな。
「いや、んなんじゃなくて……」
「良い良い、皆まで言うな! わぁーった、全部俺に任せな!」
「え? 受講料肩代わりしてくれ……」
「ばっきゃろう! んな金なんてねぇよ! こちとらカミさんに管理されてて自由に使える金なんてねぇっつーの!」
おお、悲しきかな住人のおサイフ事情。しかしゼンカン氏は結婚してるのか。ギルド職員っていう安定した職についてるし、技術持ってるから食いっぱぐれないしで案外悪くない物件なのかもな。
いや、今はそんなのどうでもいいか。
「じゃあ何してくれんだ?」
「そらもう、俺が教えてやんよ!」
「えぇ……でも」
「安心しろ! ピークは過ぎて剣の講習来るヤツは時々しかいねぇからな! 暇してるのよ!」
前言撤回、あんまり安定した職じゃないかも。
――
――――
――――――
そんで移動した先はいつか見た家庭科室。なんだ、また野菜切らされるんか?
「野菜は切らねぇから安心しろ! 空いてる部屋がココぐらいしかなかったんだよ!」
切らなかった。実はあれから野菜切るの結構好きだったりする。
ご飯の準備手伝うよ、とか言いつつ野菜切ったりなんかして。
家にあった包丁は切れ味悪かったから今度一緒に砥石を買いに行く予定。
「というか、教えてくれるのはありがたいんだけどさ。タダでって言うとなんか裏がありそうで怖いんだけど」
「あ? 裏ってなんだよ」
「教えてやったんだからこの依頼受けろとか、このアイテム取ってこいとか……」
「んなん新人にさせてもたかが知れてるだろ! ただの道楽だよ、道楽!」
道楽か。なんか隠してって雰囲気でもなさそうだし、本当に伊達や酔狂で教える気らしい。大人には特に意味もなく後進に伝えたいみたいみたいな日があったりするんかな。
世の中にはアドバイス罪なる罪科を創設して、勝手に助言した奴を拒絶する人も居ると聞く。実際、望んでないときの助言ってなんか嫌だなって時もある。
そう考えれば、教えたい欲の捌け口としては丁度いい機会なのかもな。ゼンカン氏は毎日新人に教えてるはずだが。単純に教えるのが好きな人なのかも。
「それじゃあ、勉強させて貰います。でも対価なしは気分が悪いんで、後でなんか出しますよ。そうだ、ポヨゼラ食べます?」
「食わねえよ!」
取り出したポヨゼラチンをそっとインベントリに戻す。おお不人気なりポヨゼラ。後でうゆに押し付けてやろう。




