露店出店すってんてん
ちまちまちまちま……
「ノクスくん、ここはこう、です」
「おっと、サンキュ」
俺達は露店に出品すべく、寝具屋の一画を借りて竹の抱き枕を作っている。
シオンは細工師、俺達はそのままのジョブでちまちま。
ちなみにこれら全部露店行きではなく、いくつかは寝具屋に置いてもらって住人向けにも販売してもらうつもりだ。一画を貸してもらうお礼になればいいが。
露店で全然売れなかったら追加で売ってもらおう。冒険者向けでもなんでもないしな。
ちなみに細工師にジョブを変えなくとも、細工関連のことを行えば細工師に経験値が溜まる。なので俺とうゆの作業が全くの無駄になる訳では無い。
「ん! フェリシア、どうだ?」
「ばっちりだと思います!」
「んふー!」
の割には、シオンと俺達の作った完成品を見比べれば、差があるなぁと感じてしまう。経験や技術の差だろうか。
ちなみに竹抱き枕の制作にはシステムサポートが入っており、次はこっち、こうすればいいよ、という指示が入るので、未経験者でもすんなり作れている。
戦闘だとなーんにもサポートしてくれないのに、製造は至れり尽くせりなのな。
ただシオンはちょいちょい指示を無視したり独自のやり方をしているので、慣れたらサポートを切った方がオリジナリティが出せたりするのだろう。
そんなシオンは竹抱き枕だけではなく、竹枕や竹のゴミ箱、小物入れなど竹で作れそうな編み物を次々と作っている。
そりゃあ抱き枕だけたくさんあっても困るが、それにしたって多芸過ぎないか?
「もはや民芸品店だな」
「つ、作りすぎでしょうか……?」
「いやいや、品数が多い分には良いでしょ」
こんなの買う物好きはいるんかよ、と思うかもしれないが、DP――夢幻世界で使える専用のポイント――を払えば、マイホームに持っていけるらしい。
あっちの家具屋で普通に買うより、こっちで作ったりしたものを持っていったほうがDPが割引されるっぽいので、マイホームガチ勢には受けがいいとか。
むしろマイホームを充実させる為にソムニアを遊んでいる勢がいるとかなんとか。ま、目的は人それぞれだよな。
ちなみに看板娘は小さい竹籠を気に入って、早速お買い上げなすった。部屋を借りてるんだから無料でいいよとシオンが強弁したものの、つぎ気に入ったものが買いにくくなるのでお金を払います、とのこと。
気持ちはわかる。
「やっぱシオンはこういう竹細工好きなの?」
「す、好き……というか、これができるので……ノクスくんとうゆちゃんは、何かやりたいことはないんですか?」
んー、やりたいことか。色々あるが、いま一番やりたいことと言えば……。
「宝石研磨がしてみたいかな」
「宝石、ですか?」
「ほら、昨日宝石拾ってきたじゃん。折角だからあれ磨いてみたいなって」
宝箱から拾った幻日晶石は原石。あくまで自然のままの石だ。磨くことでさらに魅力を引き出すことができる、はずだ。
中には磨いた石は不自然、そのままの原石のほうが自然で良いという人もいるようだが、俺はどっちもどっちの良さがあると思っている。
「ノクス、経験あるのか?」
「いや? まったく」
磨きたい欲求はあっても、方法などは一切知らない。随分とおこがましい夢だ。
「いいんじゃないか? もし綺麗に磨けたら、露店のラインナップが増えるな」
「そうじゃん。本腰入れて磨きかた探してみるかな」
「ん、ならノクス、これ」
そういって渡してきたのは、昨日ドロップしたルナカイト。やや歪な形の乳白色の原石だ。
「え、これ……」
「これも磨いて、ノクスの好きな形にしてくれ」
「いいのか? ちゃんと磨ける約束はできないけど」
「いい。言っとくが、露店には並べないぞ?」
「それはわかってる。うーん……」
思いがけず重責がのしかかってきた。自分のものならともかく、他人のものとなると責任重大だな。
「あの、なら……」
「シオンも?」
「お、お願いできますか……?」
本当に難易度もわからない状況なので安請け合いしていいものか。いや、難しいであろうことは想像つくが、その想像を遥かに超えた難易度の可能性も十分にある。
「ノクスくん」
「え、えと……」
「やりましょう……!」
そう言うなり俺の手を握って、発破をかけるシオン。握る力は柔らかいが、俺を見つめる両目はなによりも力強さを感じさせた。
……ま、何も始める前から怖気づいてちゃ世話ないか。
シオンの何でもやってみましょう精神が今はとても心強い。
「……うん、やってみよう。ダメならもっかい採掘ダンジョン付き合ってくれ」
「ん、何回でも付き合うぞ」
「はい……!」
当たって砕けろ、ダメで元々、案ずるより産むが易し。
古今東西、うだうだ言ってねぇでとりあえずやってみろ的な格言は枚挙にいとまがない。
当たって砕けろって『Go for broke』の日本語訳らしいよ?
さーってと、当たって砕けない為にも、色々と調べてみますかね。




