夢現の狭間
「あ……ウニコルが来ました……! 倒してきます……!」
「サンキュ、頼んだ」
この洞窟では石炭が意思を持って自律し始めたウニコル、ヘルメットとスコップを装備した好戦的なもぐらのトンネルモール、最初に戦ったコウモリのケイブバットの3種類が出てくる。
石炭お化けのウニコルは、コウモリやもぐらとは違い物理が効きにくいので、魔法使いの独擅場だ。
実際お化け扱いなのか俺のセイントアローも効果テキメンなので、シオンと交互に倒している。
「しっかし、ほんとに石ばっかだな」
「そっすね、採掘ダンジョンっすから」
掘ってはピッケルを叩きつける音に誘われた敵を倒してまた掘って。それ自体は苦ではないが、凱旋一触といった感じで苦戦とは程遠く、その事がやや退屈でもある。
別に戦闘狂という訳では無いはずなんだけど、折角訓練したのにあまり活かせてないもんなぁ。
「まぁこんな日があってもいいか」
「ん? なんだ?」
「いや、刺激的な毎日より、今日みたいに平和な日があったほうがメリハリあるかなって」
ギガコケコやザコオロギみたいな、格上のボスと戦うのもひりついて楽しいけど、雑魚狩りも悪くはない。
……うーん雑魚狩りって外聞が悪い、けど他に言葉が思い浮かばない。
「あたしは今日みたいな日でも刺激的っすよ? なんてったって先輩と遊ぶの久し振りっすからね!」
「この前のは遊んだに入んねーの?」
「剣の訓練は遊びじゃないっすよー」
「それもそっか」
クラブ活動で一緒になったのが六年生の頃だから、ちょうど一年ぶりか。
リコとはそれと登下校ぐらいしか顔合わせることなかったし。
「そういえば、リコとノクスは剣の訓練で出会ったのだったな」
「そうっす。びっくりしたっすよー、しょーご先輩にそっくりな人がいると思ったら本人とは思わなかったっす!」
「あ、あれ? 待ち合わせしてた、とかではなく、ですか……?」
「ないない、まだリア友とはやる気ないから」
まさかこんな広い広い夢の世界で知り合いに会うなんて、世間は狭いよなぁ。
「ノクス」
いつの間にか側まで来ていたうゆが、目を細めて問うてきた。
「その姿はリアルと一緒なのか? 知り合いが見てわかるぐらいには」
あー……まぁ、そうなるかぁ。リコはやっちゃったという顔をしている。
まぁ別に隠したりはしてないからバレてもいいんだけど。
「そうなる、かな。ちょっとだけ背は伸ばしたけど」
「ん、そうか」
「本当はもっと格好良くしたかったんだけど、センスなくって」
「安心してくれ、今でも十分かっこいいぞ」
リアルでそんな事を言われたことない俺が、うゆにまっすぐ目を見て褒められて照れない訳がない。お世辞でも気恥ずかしさを感じてしまう。
「ちなみに私もそのままだぞ」
「なぜにカミングアウトしたし」
「いけなかったか?」
「別にいいけど……それが本当なら、うゆはアイドル顔負けの美少女ってことになるぞ」
美少女か、と嬉しそうににへらと笑ううゆ。その反応からして本当っぽいなぁ。
ただ、ここは夢の世界。リアルが判明したからといって、何が変わるわけでもない。
一人で見る夢より友達と見る夢を。
夢の水先案内人が言っていた言葉だ。
2人のリアルに一切の興味がない訳ではないが、どんな性別や容姿であっても等しく夢は見れる。
うゆやシオンと一緒の夢をいつまでも見ていたいというこの思いは、紛れもない本心なのだろう。




