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石が綺麗ですね

「セイントアローっ!」


 何度も唱えて放ち慣れた聖矢が、デカめの石炭お化けに当たって弾ける。

 聖属性は基本的な威力は高くないが弱点の敵には大きめの倍率がかかるようで、石炭お化けにはとても有効だ。


「アイスボルト!」


 シオンの氷弾も絶好調だ。

 石炭お化けには火弾が有効打だが、石炭らしく炎上して攻撃力が激化するので一段落ちるアイスボルトにしている。



 そう、デカめの石炭お化けはこのダンジョンの最深部ボス。

 ウニコルの大きめの奴が出てきたので、皆で囲んでボコしているところだ。



「ぐぬぬ~、手持ち無沙汰っす~!」


 そんな中、格闘家のリコは暇そうにしている。

 幽霊だから攻撃がすり抜ける、という訳ではなく、石炭お化けは単純に素手パンチとは相性が悪く手が痛くなるそうだ。


 うゆの剣も相性が悪いので使っていないが、戦士であって剣士ではない。得物を樫の棍棒に切り替え、ガツガツ殴り抜けている。


「セイントアローっ! リコ、他に武器とかないん?」

「弓ならあるっす! でも効かないっすよ多分」

「だろうな」



 一応ボス戦ではあるが、そこまで強くないのでいくらかのほほんとした空気だ。

 被弾したうゆを時折回復しながら聖矢を放つぐらいで、ギガコケコ戦やザコオロギ戦のようなヒリついた戦いではない。


 しっかし、魔法でこんな簡単に矢が放てるなら、弓って実用性ってどうなんだろな。

 遠距離攻撃ができるというのが最大の利点だと思うが、魔法という競合がいて習熟に時間がかかるなら微妙な気がする。

 いや、弓を鍛えまくったらリアル弓道部でエース張れるまでになれるかもしれないけど。リアル魔法部はないのでそこは大きな利点か。



「とりあえず弓撃ってみたら?」

「突っ立ってるよりはいいっすかね、やってみるっす」


 格闘家であろうと他の武器は使える。弱そうな短弓を取り出し、矢を番える。ちなみにステータスが足りてれば魔法も使えるっぽい。


「おぉ、結構サマになってんじゃん」

「残念だけどここまでっす」


 手を離すとバイイインと間抜けな音を出し、矢は一応跳んで行ったものの、横に回転して前線を出張っていたうゆにあたった。


「ん?」

「ぎゃーっ! 大丈夫っすか!?」

「ん」


 不幸中の幸いか、撃ち方が下手っぴで矢尻ではなく棒……なんて言うのかしらんがシャフトの部分が当たったのでノーダメのようだ。


「これは封印しとこう」

「そっすね」


 それはそれとして、フレンドリーファイアは凹むんで、乱戦中には撃たないようにしとこう。あの時は俺もかなり凹んだし。



「先輩、なんか武器ないっすか?」

「うゆが使ってるのと同じ棍棒ならあるけど」

「なんでお揃いっすか」

「そうだ、ツルハシ使ってみれば? 石炭だし効くんじゃない?」

「んー、やってみるっす」


 採掘に使っていたツルハシを取り出し、デカ石炭おばけに叩きつけた。

 ポロっと石炭が剥がれ、中身のお化け成分が露わになる。


「あっ、効果あるかもっす!」

「じゃあそれで!」

「りょっす!」


 隣で見ていたうゆもツルハシに持ち替え、ガンガンと石炭お化けを採掘しだす。

 おばけ部分には物理が効かなくなるが聖矢がよりクリティカルなようで、急速にHPを減らしていった。


 ――

 ――――

 ――――――


「やったー! 倒したっすー!」

「おつかれー」

「ん!」

「お、お疲れさまでした……!」


「なんか先輩ら淡泊じゃないっすか?」


 まぁHPが高いだけで、消化試合みたいなもんだったからなぁ。

 思えば強くなったもんだ。


 ドロップは大量の石炭……これツルハシでガンガン砕いて落ちた分じゃね? 

 スキルカードもレアっぽいのも落ちず終了か……と思えば、帰還ゲートの付近に宝箱が出現した。それも4つも!



「ん! 宝箱だな!」

「おぉー、クリア報酬かな」


 銅の宝箱につられて小走りで向かうと、うゆも並走してきた。いや、俺より早い……先に取ろうとしてないかこいつ!?


「すげー、宝箱だ。初めてみた」

「ノクス、どれが良さそうなの入ってると思う?」

「わかんねーけど、これとか輝きが違うくない?」

「んーーー」


 どうなんだろ、もう中身は確定してるんかな。それとも開けた時点で決まるタイプなんかな。


「一人1個ということでしょうか……? リコさん、どれが良いとかありますか?」

「あー、別にいいっすよ、うゆうゆ先どーぞっす」

「ん。これにする」


 結局俺が選んだのとは別のを選んだ。何か他のと違ったのだろうか。折角なんで輝きが違うと思ったやつは俺が取ろう。


「これ、ドロップの精算に入れる?」

「いいんじゃないっすか? ドロップだけでいっすよ」

「ん、何が出ても恨みっこなしだな」


 宝箱で出たものは個人のもの、という訳で開ける手にも力が入る。


「良いものでろよ~、オープン!」


 開けると光り輝く玉がぽわ~んと浮かび上がる。思わず手に取ると光がどんどん収まっていき、宝箱もスーッと消えていった。


 ――――――――

 幻日晶石

 中で朧げな光景が揺らめくクリスタル。覗く人によって何が見えるかは異なる。

 ――――――――


 おぉ~。なんか良さげな宝石! ゆらゆらと見える色も綺麗だ。


「なぁなぁうゆ」

「ノクス……ん?」

「あ、いや、そっちから先で」


 おっと被ってしまった。何かあっただろうか?


「これ、綺麗だぞ」


 そう言って渡されたのは黄白色の原石。


 ――――――――

 ルナカイト

 月の魔力が封じられたと言われている原石。握りしめると不安が収まる気がする。

 ――――――――


 こっちもいい……。鉱石もそうだが、宝石も好きだ。石全般ってロマンがあるよな。

 しっかし説明があやふやだなぁ、プラシーボすぎるだろ。それにこの世界にも月ってあるのか。


「で、ノクスの用はなんだ?」

「あぁ、この石めっちゃ綺麗じゃない?」


 実は俺も全く同じ理由だった。

 俺が手渡した幻日晶石を覗き込み、おぉ……と感嘆の声を上げるうゆ。どうも石に関しては俺とうゆの感性は近いらしく、この感動を共有したかっただけである。




「それじゃ、取るもんとったんで帰るっすよ! ドロップいくらになるのか楽しみっすね!」

「結構拾えるだけ拾ったからな。ツルハシ代はペイできるといいけど」

「さすがにそれぐらいはラクショーっすよ!」


 ゴールドラッシュで一番稼いだのはツルハシ屋って言うからな……。いや、ジーパン屋だっけ?


 ともかく大量の戦利品を得て帰還ゲートに入るのだった。

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