ロールチェンジに伴う痛みとその代償
今日は自宅で色々と作業をしていたらソムニアにログインするのが遅くなった。作業っつっても、模様替えぐらいで大したことはしていないが。
遊び心で『ハズレ』と書いた紙をベッドの下に忍び込ませてみた。もし勝手に人の部屋を漁る不届き者がいたら、盛大に悔しがって貰おう。
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「に、似合ってますか……?」
「わー! かわいいです!」
「強そうだな!」
なんだ、寝具屋前で撮影会でもしてるのか?
いつもの三人娘が和気藹々とかしましくしている。
「わり、遅くなった」
「ノクスくん。えへへ、今日は来ないんじゃないかと思いました」
「そん時は連絡するって。それより、その服……」
「ふふん、悪くないだろう?」
フェリシア……じゃない、シオンは僧侶姿とはうってかわって魔法使いの恰好をしており、元持ち主が初期の服で胸を張っている。
うゆの服を流用しているから、うゆより背丈の高いシオンじゃつんつるてんになるんじゃ……と思ったが、サイズは自動でフィットするシステムらしく、おさがり感はない。
あ、つばの広い帽子にちょこんと黒い羽が乗ってるな。黒に黒だから気付かなかった。
「うゆの場合は魔女っ子って感じだったけど、今回は魔法使いって感じがするな」
「そ、それってどう違うんですか……?」
「子供かそうでないか」
おっと、子供から抗議の頭突きが飛んできた。思えばうゆのそのままの頭を見るのも数日ぶりな気がする。
「そうだノクス。戦士の服を貸してくれ」
「あぁ、うゆは次やんの戦士か。ちょっと待ってろ」
装備を開いて最初の服に着替え……今着ていた服を……ん?
「いや待て、俺の脱いだばっかの服着るの!?」
「そうだが?」
「だが? じゃなくて! せめて一回洗ってから……」
「汚れや匂いを気にしてるのなら問題はいらないぞ。インベントリにしまった時点である程度きれいになるようだ」
「それなら……いや、気分的にだな」
「いいから早く脱げ。着替えるのが苦手なら私が手伝ってやるが?」
ひえっ……脱がし魔が両手をワキワキして近づいてくる……!
シオンも空気を読んで手伝う気満々だ!
「わーったわーった! でもノークレームで頼むぜ!?」
「ん、もとよりそのつもりだ」
仕方なく、本当に不本意だが仕方なーく服を着替え、うゆに手渡した。うぅ、抵抗感がすごい……。
「……すんすん」
「あっ、おい! いま匂い嗅いだろ!」
「大丈夫だ、嫌な匂いはしない」
くっ……ならいいのか?
生きてきた14年で培ってきた常識が夢の世界では通用しない。普通、脱いだ服を女子に手渡したら「うわー、やばっ」とか言われるはずだろ……!
「んっ。どうだ、戦士っぽいか?」
「か、かわいいです……!」
「戦士っていうよりレンジャーっぽいですね」
人知れず葛藤している間にも、うゆは元俺の服に着替えてはいポーズ。サイズ補正によりフィットしたへそ出しルックは、フィールドワーカー感が増し増しで、なんというか……。
「なぁうゆ、やっぱその服やめない?」
「ん? 似合ってないか?」
「いや、じゃなくてさ……露出が多すぎないか?」
正直に言おう、うゆのへそ出しが刺激的すぎる。
だって普通、女子のおヘソなんて見る機会ないじゃん。
そんでさ、そこそこ仲の良い女子のさ、おヘソをさ。ダメだって。
「急にどうしたんだ、父親みたいな事を言い出して。もしかして露出の多い恰好が嫌いなのか?」
「ぎゃ、逆だと思います……ね、ノクスくん?」
「逆? ……ノクスはへそフェチなのか?」
やべっ、ちらちら見てるのがバレた。ここで否定してもムッツリの烙印を押されるだけだ。自分に正直にいこう
「自覚はなかったけど、多分……。さっきから目が離せない」
「ほぉ〜〜〜〜ん」
なんだ、その勝ち誇ったようなドヤ顔は。くっそぉ、思春期男子は簡単に性癖ねじ曲がるぞぉ。
なんて、顔を歪ませながらおヘソをちらちら見ていたら、フェリ……シオンが初期服の上着をうゆの腰に巻きつけて袖を結ぶ。
「お、おヘソが気になるなら、こういうのはどう、ですか……?」
「おっ、これは案外オシャレなんじゃないか? どう思う、ノクス」
身体を捻ったり伸びをして動きの邪魔にならないか確認している。
ぐっ……たしかにおヘソは見えなくなったけど、動くとちらりと見える時があってより興奮するというか……逆効果かも!
あぁ〜、性癖の歪む音!!!
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人が無自覚な小悪魔に悶々とさせられていると、シオンがおずおずと布地を手渡してきた。
「の、ノクスくん、どうぞ……」
「へ? ありがと……なにこれ?」
広げてみると……これは服? なんだか少し暖かくて、甘い匂いがするような……。
「ん、さっきフェリシアが着てた服だな」
「うおうああ!!」
は!? シオンの脱ぎたての服!?
おまっ、お前っ……! どんだけ性癖を捻じ曲げれば気が済むんだよ!!
っつーかゲームなのに温もりとか残り香とかそういうのも実装してんの!?
「あの……イヤでしたか?」
「おえ、あ、うぃあ……」
「ノクスがバグった」
ケラケラと笑い転げるうゆも大概だが、そんなことは瑣末事だ。
よく見ればたしかに僧侶の服……そっかそっか、シオンが魔法使いでうゆが戦士なら、当然俺は僧侶だよな。
僧侶の服を着るのも当然……当然かぁ?
でもここで着なかったら、シオンのお下がりは嫌って思われるかもだし……。
ええい! これは夢! 夢の恥はかき捨て!
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「…………」
着替えてみたがどうだろう、僧侶らしく露出の少ない衣装なのは救いだった。だが……。
「このスリット、要る?」
太ももの付け根まで大きく入ったスリットが否応にも存在感をアピールしてくる。
幸いリアルが毛深い訳じゃないんで、それをモデルにしたアバターも至って普通ではあるが、男の太ももなんて見て誰が喜ぶんだよ。
「わぁ……ごくっ……」
居たわ。ご丁寧に生唾を飲む音まで聞こえてきた。え、なにが琴線に触れた?
「フェリシアさんってああいうのが好きなんですか?」
「あっ、いえ、そういう訳じゃ……!」
見ろよ、シオンに友好的な看板娘にさえジト目を向けられてるじゃん。案外むっつりなのな。
「安心しろ、ノクス。意外と似合ってるぞ」
「それ安心できる要素ある?」
この3人には既に見られたので諦めもつくが。寝具屋の親父にでも見られたらことだ。
一刻も早く脱いで隠滅しなくては――
「先輩の話だとこっち曲がって枕屋さんが…………しょーご先輩、なにやってるんすか?」
えーと。ここから入れる保険はありませんか?




