話の途中で悪いがコオロギの群れが……群れが……
え……指、舐め……?
聞き間違いかと思ったが、恥ずかしそうに俯いて人差し指をおずおずと差し出すフェリシアを見れば、急に難聴になった訳じゃなさそうだ。
「ん、病原菌が入ったら危険だな。ノクス、早く消毒せねば」
せねば。じゃねーよ、えぇ?
っていうかさっきフェリシアが自分で舐めてただろ。
うゆなら止めてくれると思ったんだが、どうやら今回はフェリシアの味方らしい。
「や、やっぱりダメ……でしたか?」
「ダメじゃないぞ、何でもすると言ったからな」
「おい、うゆ……」
「おおっと、プチコオロギが来たな。ここは私に任せておけ!」
杖から鈍器に持ち替え、すたこら~と会話から離脱する黒いちび。くっそ、空気の読めないプチコめ。所詮ムシか。
「…………」
当の本人はあいも変わらず人差し指を突き出し、俺をじっと見つめている。
フェリシアは何を思って、指を舐めろだなんて言い出したんだ。指を詰めろなら筋は通ってるんだけどな、イヤすぎるけど。
もしかして、俺に気があるんじゃ……いやいや、少し女子と話したからって勘違いしちゃうのは男の悪い癖だという。
そう、きっとフェリシアなりの軽いスキンシップの一環だろう。指舐めが軽いかどうかは諸説あるが。女子の間で流行ってるのかもしらん、男子達には内緒だよっつって。
「ノクス、くん?」
ピクリとも動かない俺を怪訝な顔で覗き込んできた。
やべ、どうでも良いこと考えて現実逃避してる場合じゃない。
「あ、悪い……その、本当に舐めていいのか?」
「………………はい」
顔を赤らめて、こくんと頷く。
もうどうすりゃいいんだよ、コオロギの大群が現れてうやむやになったりしねぇかな、しねぇか! 空気読めないムシだもんな!
ああもう、なるようになるしかないか!
腹をくくれ!
ハラスメントフィルタとかに引っかかっても知らん!
フェリシアの方に数歩距離を詰め、俺の顔の高さまで持ち上げられた指に顔を近づける。
指は静止したままで、舐められるのを待っているようだ。
ここで向こうから指を突っ込んでくれば楽なのに……どうしても俺から行かせたいらしい。
ごくり……。
ちらりと横を見ると、うゆが棍棒を杖代わりにしてこちらをガン見している。見んな。雑魚散らしはどうしたんだよおい。
「それじゃあ……失礼して」
「ど、どうぞ……!」
舌を伸ばしてレロンとするのも絵面が気持ち悪い。フェリシアの細い指に唇を触れさせ、少しだけ舌を出してチロチロと舐める。
「ひゃぅっ」
くすぐったいのか漏れ出た嬌声が木々に吸収され消えていく。
ちろちろ……んうっ……。
なんだかとてもイケナイコトをしている気がしてきた。
舐められているフェリシアはより一層顔を赤くして俺をじっと見つめ、されど指を遠ざけようとはせず、出歯亀うゆは目を大きく開けてガン見している。何の辱めプレイだこれ。
「はい、終わりっ!」
指から唇を離し、終わりを宣言する。
10秒ぐらい舐めてたか? やけに長く感じたが、そんなに長くは齧ってないはずだ。
「あ、ありがとうございました……」
「どういたしまして?」
謎にお礼を述べられ、ようやっと指をしまって貰えた。
すごく精神に来る禊ぎだったな……決してイヤではないが、その。
「ん……大人ってすごい……」
こいつがジッと見てくるのがよぉ! このエロガキゃあ!




